*唐突にボツネタ(ほとんど設定のみですが…)





軍の年間行事の一つに、射撃大会がある。

年に一度のこの大会は、佐官以下の軍人は内勤以外原則参加とされている。

銃は軍人にとっては常に携帯している最も馴染みのある武器であり、その腕前は日々向上していくものでなければならない。

つまり、大会という公の場で自らの腕を披露しなければならないとなると、否が応でも腕磨きに励むだろうとの意図から始まったこの大会は、軍関係者だけでなく一般国民にも観覧が許されている。

また、大会での成績は、上官からの査定にも参考にされたりするため、参加者からすれば気の抜けないイベントであった。


大会種目は【ラント】・【ヒンメル】・【フルーグ】の3種で構成され、各部門と総合成績で表彰される。

【ラント】
地上で動き回る標的を狙い撃つ。
ただ動くだけではない。
草陰に隠れていたり、急に己に襲いかかって来たり、逃げ回ったりする的を確実に仕留めていく。

【ヒンメル】
空中に散開する標的を狙い撃つ。
一度に複数の的を、的が滞空している間にすべて沈めていく。
難易度が上がると、それぞれの的がバラバラの動きをしたり、迫って来たりする。

【フルーグ】
己からどれだけ離れた標的を狙えるか、単純に距離を競う。

的は急所に当たらないと落ちない。
どの種目も、的が落ちた数・時間・精度で採点され、上位10位の入賞者には細やかだが民間企業スポンサーの賞品も設けられていたりする。




——今年は、特にギャラリーの多い大会となった。


間近で見物出来る特等観覧席(席料は一般席の5倍)には予約が殺到したため抽選となった。
その抽選券を得るための行列は3日前から始まり、抽選券すら得られなかった者達は優良観覧席(席料は一般席の3倍)の予約にスライドするなど、大会前から軍部は軍人・国民で溢れかえった。

元々規模の大きさから人気の高い大会ではあるのだが、最大の理由は他ならない———今年は軍部一の美貌と才能と人気を誇るクオン=ヒズリ大佐が参加するからである。

ヒズリ大佐は昨年、一昨年と地方への遠征で中央を離れていたため今回参加するのは実に2年ぶりだ。
大佐の参加を女性陣はもちろんのこと、大佐の信者に近い男性陣も狂喜乱舞した。

大佐はこういった軍行事の参加率があまり高くない。
色々と極秘任務を抱えていて多忙であることもあるが、日頃より付き合いが良い方でもなく、強制参加でないとほぼ参加しない。
なのでこういった場は大佐の勇姿を堂々と眺め写真・映像に収められる貴重な機会でもあるのだった。
日頃すれ違うことすらあまりない一般国民からすれば尚更だ。


ところが唯一人。


ヒズリ大佐の参加にがっくりと肩を落とした人物がいた。

大佐の副官のキョーコ=モガミ中尉である。

副官ながら大会当日になって大佐の参加を知った中尉は、大佐の執務室で悲痛な声を上げた。


「た、大佐も参加なさるのですか?!だってここ2年ほど…!」

「佐官以下は強制参加だろうが。そもそも俺が参加しようがしまいが君には関係ない」

「あります!賞品は10位入賞までなのに大佐が出られたら枠が減ります!!」

「どれを狙ってる?」

「う…一応…、帝国ホテルのスパ・エステ・ディナー付スウィート宿泊券…です」

それは一位の賞品である。

「そうか、残念だったな」

「まだ分かりません!」

「少なくとも一位は無理だろう。俺が出るのだからな」

「っ…!」

言い返せないところが辛い。

「まあ俺は宿泊券にまったく興味はないし、譲ってやろうか?」

「えっ?本当ですか?」

思ってもみない申し出に中尉は眼を輝かし…た自分を一瞬で罵りたくなる。

(しまった!このパターンは…)

「副官を辞めるのならな」

(やっぱり…!)

「…自力で頑張ります」

「頑張るだけ無駄だから言ってやったんだろうが」

「くっ…大佐こそ油断してると足を掬われますからね!」

「掬える奴が現れてから言え」

(何その自信過剰!!)

「銃には自信がある」

「ぐっ…」



ヒズリ大佐の自信はもはや事実だった。

大佐はどの部門においてもノーミス、最短ですべての的を仕留め、文句無しの満点で華々しく優勝した。

一方モガミ中尉はというと、12位と尉官の中ではトップの成績だったのだが、入賞を逃した彼女にはそんなことは関係なくひたすらに悔しがった。


(私も銃は得意なのに…10位にも入れないなんて…!)


きっとあの時のあのミスショットが…と己の振り返りに耽る中尉を、ヒズリ大佐が遠目から見やる。


(本当に銃が得意だったのか)


サミットの時だったか、SRが得意だと言っていたのを思い出した。

女は男より体力が劣る。
それ故力技より銃という武器の方が使えるという程度の意味かと思っていたのだが。
中尉の銃の腕前はそこらの佐官より優れていた。


(なるほど、あんな小柄で戦闘職に属していられるわけだ)


ま、俺の足元にも及ばんが、と大佐は先ほど受け取った賞品をぞんざいにポケットに突っ込むと、賑やかな会場を後にした。




モガミ中尉が熱心に狙っていた1位の賞品は、その後しばらくヒズリ大佐の執務室のデスクの左角上に定位置として鎮座することとなる。


「・・・・・・」


中尉のデスクは大佐から見て左手にある。

つまりその輝かしい賞品は絶えず中尉の視界に入るということであり、中尉はそれを見てしまうたび悔しさと羨望で煩悶とした日々を送るハメになるのだった。






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射撃大会編のつもりで考えたものの、大佐が中尉をいびるポイントがあまり浮かばずボツ。

というか…
最近読みたい妄想はあれど書きたい妄想が浮かばないです(´・ω・`)