約束は交わさない。


彼女が辛い時も、
悲しい時も、
孤独を抱える時も、

俺は傍にいてやれないから。
気付くことすらできないかもしれないから。


その上で彼女を縛り続けるなんて誰ができる?



片時も離したくなかった。

離すことはないと、思っていた。
彼女だけは。

傍にいて欲しかったのは自分だ。

実際離したくなくて、どれほど彼女を強引に連れて行く算段をしたかわからない。

けれど今、俺は恋人を置き去りにして、己の夢を優先しようとしている。

夢に迷いはなかった。

夢を思う時、そこに彼女は含まれていないことに気付いてしまった。


愛しているのに。



——都合が良すぎる。

離れる以上の最低な男にはなりたくなかった。

そのくせ完全に離すこともできない弱さが抵抗して、彼女に爪痕を残したがる。



愛している。

これ以上苦しませたくない。
悪夢に魘されることのないように。


「だから、他に縋りつきたくなったら…それでもいいよ」


君と約束はできない。
約束が、俺の知らないところで君を苦しめる枷になって欲しくないから。

でも俺が勝手に誓う言葉は、ある。


「俺が戻る時、もしキョーコの隣に別の男がいるなら…」


想像するだけで腸が煮えくり返りそうになるが、それを止める権利は今はない。

だから先に、君に爪痕を。
それは枷よりも内に入り込む。


「必ずそいつから君を奪い返す」



憶えておいて。

その時君がどんなに幸せで、邪魔されたくないと願ったとしても。

どんなに最低だと罵られようとも。


必ず、奪う。



傍にいない時に、苦しめたくはない。
傍にいれば、抱きしめられる。


誓いの言葉に、彼女は少し驚いて。
やがて涙を拭いながら艶やかに微笑んだ。


「勝手、ですね」

「分かってる」

「待ってて、と言ってくれるだけでいいんですよ?」

「それこそ身勝手だよ」

「じゃあ私は……これを」


彼女の涙に濡れた指とともに俺の手首に這い、指が離れてもそこに留まったのは———鈍く光るブレスレット。


「気持ちがなくなったら外して下さい」


なら死ぬまで外せそうにないなと思ったが、今彼女が求めている答えはそんな想いではないはずだ。


「分かった」


目に見えて解る図式が欲しかったのだろう。
彼女は俺の言葉に満足すると膝に乗り上がってきて、首に腕を回し甘えるように擦り寄る。
近づく唇が合わさる寸前、彼女からの「愛してる」が確かに聞こえ、それが合図となった。


もうこれ以上の言葉は要らない。
言葉ではどうしようもない。


ただ2人で溺れて、もどかしいくらい伝えきれない愛を肌に注ぎ合うしか、この最後の夜を越えられそうになかったから。






キョーコが最後まで期待していた言葉。




"待っていて"




判っていながらそれだけは言えず、日本を離れた。








彼女といた国が徐々に小さくなっていくのを窓から見つめながら、思う。




新しい年が明けてしまった。


今年はきっと、———に苦しめられる。







—————
実は、5,6回最初から書き直したんです…(書き直してこれかは置いといて)

私は完全に降臨型なので(ネタだけでなく文章すべて)、一度降りてきた文章に逆らって考え直すという作業が苦痛すぎた…(ー ー;)
だって降りてきたのはバッドエンドだったんですものー!

違和感満載でまったく伝わってないと思いますが、この話はもうこれで終わらせて下さい…
書きたかったのは、遠距離にありがちな「待ってて。メールも電話も毎日する」的な話じゃないもの、だったんですが、なんかもう…(遠い目)

私には考えて書く、という基本行動がまったく備わってなかったようです。
どこに売ってますかそのスキル…!