前回、渦の話しをしましたが、それを実際の車に当てはめて考えてみますとね。
色々と問題が出てくるわけですよ。
まず、渦が出来やすい突起物をつけないといっても、限界があるわけです。
少なくとも、ミラーはつけないといけないし、タイヤとか、車体とはまた別に動くものもつけないといけない。
さらには、高速走行時の安定性が確保出きなくなるとリアウィングとか、フィンとか、車体から出っ張ったものを付けるようになる。
と、こんな感じで突起物だけでも結構あるんですね。
それに車にはエンジンとか、ギアボックスとか、人の居住空間とか、絶対に積まないといけない大きな部品もあり、何よりも、4箇所のタイヤで支えるという基本構造上、四角く(直方体に近い形に)ならざるを得ないわけですよ。
抵抗の少ないマグロ体型からはどんどん遠ざかる。
つまり、車、特に市販車っていうのは、そのメカニズムや用途のおかげで、最初から空気の渦が出来やすい形になってしまってるわけです。
だから、もしも完全に空気の流れだけを重視して考えるなら、多分、3輪の車がベストだろうと僕は思います。
前が2輪で後ろが1輪、そして、フロントから運転席辺りまで少し太くなり、そこからリアにかけて、滑らかに車幅を絞った形が良いのではないかと思うんですよね。
上から見ると見事なマグロ体型な車。
でも、そんな車、はっきり言ってダメです。
理由は簡単。
カーブを曲がるとき、倒れやすくなるから。
小さい頃、3輪車って乗って遊んだことありませんか?
あれでかなりコケませんでしたか?
そう、3輪というのはこけやすいんですよ。
椅子や机の足、3本あれば問題ないのに、4本のものが圧倒的に多いのもそういう理由。
力学上、3本の足があれば、物は倒れないんですが、その3本の足を結んだ3角形の各辺と、重心の距離が近くなるために、大きく傾くような力がかかった場合には、コケるんですね。
大きく傾くような力、というのは車で言うと、コーナーを曲がったときの遠心力です。
つまり速くコーナーを曲がる車ほど、遠心力が大きくなりますから、3輪車というのは、不利になるわけです。
これが、4本足(4輪車)の場合、こちらもそれぞれを結んだ4角形を作るんですが、その各辺と、重心との距離が、それなりにあるために、傾くような力(車の場合のコーナーでの遠心力)に対して、3本のときよりも強くなるわけです。
だから、車のほとんどが4輪なんですね。
昔、F1に出ていた、ティレルP34
とか、
スーパーカーのCovini C6W
なんていう、6輪車なんかもありますけれども、重心という意味では、4輪車とあまり変わらない配置なんですよ。これが6角形にタイヤが配置してあるとか、そういうのでしたら、また違うんですけれどもね。
と、なんだか話がそれましたが、とにかく、車というのは、現状、基本的に直方体を基準に作られていると考えてよいわけです。
で、直方体を空気中で動かす場合、確実に渦が出来ます。
特にスーパーカーみたいに、フロントがとがった感じで、リアが比較的四角に近い形状ですと、リアに渦が出来やすいのです。
つまり、リア部分で、後ろに引っ張る力が働いてしまうというわけですね。
マグロの話を前にしましたが、理想はリアに向かって細くなるあれですから。
それなのに、フロントよりも断面積が広くなる上に四角に近いリアの形状というのは、空気のことを考えると圧倒的に不利だというのは、なんとなくわかっていただけるんじゃないかと思います。
でも、車の場合、リアをマグロみたいにするわけにはいかないのです。
それは、リアタイヤが少なくとも左右に、1つずつ必要ですし、スーパーカーはリアが駆動輪になっている車が圧倒的に多いですから、リアタイヤはできるだけ大きく(太く)したいし、駆動用のメカニズムもリアタイヤ周辺に作らないといけない。
となると、そのための空間を大きく取らざるを得ないわけです。
さらに、テールランプなどの指示器やナンバープレートをつけるというのもリア部分の重要な役目です。
さらに、リアがあまりにも絞られたスーパーカーってカッコイイと思いますか?
そういうスタイリングという意味でも、リアはそれなりに大きくないといけないわけです。
でも、それは空力的には不利になる。
スーパーカーは”市販する”とか、”コーナーでコケない”とか、”カッコよくないと!”とか、そういういろいろな要求を満たさないといけないですから、空力の理想形から外れざるを得ないということ、わかっていただけたでしょうか?
空力も大事なんですけれども、それだけで車を作るわけには行かないというのが、スーパーカー設計の辛いところなんだろうなぁと、僕は思います。
ということで、今回はここまで。
ちょっと難しかったですかね?
でも、次回は、もうちょっと突っ込んでマグロ型の車の話をしようと思います。