久々のBook seriesです。前回からもっとたくさん読んでるけど、なかなか感想を書く暇がなく。YOKOさんに勧めていただいた、有吉佐和子さんの非色とか、良い本には出会っているのですが、本が良ければ良いほど、ちゃんとしあ感想を書きたくなってしまって結局かけずじまいになりがち。

 

というわけで今回の本、忘備録的に。原田マハさんの作品です。

 

 

というか原田マハさん、凄いペースで長編小説書かれますね?!なんか毎年1本以上出ているような。。すご。 楽園のカンヴァスの感想でも書いたのですが、私の中で彼女の作品は、選ぶ題材が超好みだし、サクサク読めるから古本とかだと特に考えもせずに買っちゃうけど、いつも読み終わった後、もう読み返さなくて良いかなっていう小説なんですよね。。文体とか、描写は全然好みじゃないのですが、彼女が選ぶ題材が毎回「読みたい」と思わせてくる。だいたいが古本ペーパーバックとはいえ、買ってアメリカに持って帰るぐらいには読みたくなるわけだから、ある意味すごい笑 ちなみに今まで読んだ作品は、楽園のカンヴァス、サロメ、本日はお日柄も良く、かな? 読みたいなと思っているのはゲルニカのやつと、たゆたえども沈まずと、リボルバー。結構読む気満々じゃん笑笑

 

というめちゃ失礼な感じから入りましたが、この作品は上野にある国立西洋美術館のオリジンストーリーです。実は大学2年生の夏、コールドメールをしてインターンシップを取り付けてもらってひと夏お世話になったのがこの西洋美術館です。大学2年生の私は役立たずで、保存科学研究員の方の後ろをちょろちょろしたり、X線写真を撮るお手伝いするぐらいしか出来なかったのですが、仕事の合間に修復の方の話を聴いたり、学芸員さんとお喋りしたり楽しかったのは覚えています。とはいえ、一周回って同じ業界に携われるようになった今、次の帰国でその時お世話になった研究員さんと会えるのも楽しみです。そんな超個人的にゆかりのある美術館の題材というからには、読まなくてはと。

 

感想をいうと、もちろんフィクションもたくさんだし、ヨーロッパの憧憬に溢れた目線なのはちょっと面白味がないのですが、当時の日本からヨーロッパに来るという事がどれだけ大事だったか、西洋美術館の為にどんな人が尽力したのか、そして細かい所でいうと松方さんの時代にモネや藤田嗣治が生きていたという時代背景が重なる瞬間があったりで、とても興味深かったです。そして何より、美術館に行きたいと思わせてくれる!これが一番の狙いだったんじゃないかな? 美術館って、人によっては全然縁がない場所だし、実際私も、大学でNYに来るまで美術よりも断然舞台芸術が好きだったから、あんまり美術館の楽しみ方を知らないでいました。でも、本物の絵や彫刻を目にしないと分からない事って結構あるんですよね。サイズ感とか、筆のフィニッシュとか、質感、詳細な色使いとか。特に彫刻は、同じ空間にいて初めて成立するアートだと思います。

 

そして、松方のように絵についてはド素人であっても、感じるものを感じさせる、それが本物のもつパワーだと思います。それが世間一般に「傑作」とされる作品であろうと、名もなきアーティストが作った作品であろうと、作家が何かを表現しようと身を削って作り上げた作品には、熱量が宿るし、その熱量を感じるのに美術史を知っている必要はないと思います(もちろん、時代背景や技法に理解があれば、その熱量の伝わり方がより精緻なものになるとは思います)。それこそ、どんな種類の熱量が届きやすいかは人によって違うし、もっというと同じ人でもその作品に出会ったタイミングによって違うわけで。初めて見た時はピンとこなかったけど、どうも気になって何度も見たくなる作品ってありますからね。名作と言われる多くの作品は何度も何度も見たい、時を超えて、国境をわざわざ超えて、またもう一度見たいと思わせる何かがある作品だと私は考えています。その瞬間だけの芸術である舞台芸術(そこが最高なんだけど)と比べて、絵や彫刻は自分がそこにいけばいつもいてくれる、という意味で自分と一緒に年老いてくれるという楽しみがありますね。

 

そんなわけで、小説自体は、その松方コレクションがどうやって形成されていったか、第2次世界大戦の間どうなったのかなどをフィクションも絡めて書いている作品です。この話なら、私はもっと史実に近い専門書でも十分エンタメ性高くて楽しそうだなぁという印象。むしろそっちに興味がわいたかも。何はともあれ、美術館に行きたくなる作品なので、皆さんもご贔屓の美術館でも、新しい美術館でも、ぜひ行ってみてくださいね♪