6月のDCの学会、7月のスイスの学会と、保存科学分野に路線変更して(というか戻ってきて?)一年弱なのですが、結構大型な学会二つに出れる事になってました!
ごめん、DCの写真全然霞むので今回はスイスの写真オンリーで!
6月のは前回の記事でも書いた通り、サイドプロジェクトが思いのほかすんなり成果が出たのでそれをシェアする為に、20分の口頭発表で行きました。この分野は専門性は高いけれど、その分、それぞれの科学のバックグラウンドはまちまちで(有機化学、材料系、機械学習系、光学系、いろいろ)、今まで超高速分子力学というニッチ中のニッチの人だけにトークしていた私には、結構説明とかも多めにいれて、あんまり置いていかないように、でも質疑応答で詰められない程度には情報を盛り込んでという塩梅が難しかったかも。そもそもサイドプロジェクトだったので、あんまり本腰入れて勉強してなかったので終始ヒヤヒヤでしたね。
ただ、トークはわりと好評で、色んな人にすごく分かりやすかったよ、興味深いトークだったよと感想を頂きました!やった♪ いつもプレゼン作る時思うけど、頭で理解してる事と、分かりやすく伝える形にするってすごく乖離していて、一週間あれば作れるだろうなーっていうスライドは、最終的に2-3週間ぐらいかかるw でもその甲斐あって、色んな人に名前と顔を覚えてもらえていたみたい(と、7月の学会に行って気付いた)です。
6月の学会の収穫は大きく分けて二つ。
1)この業界はとにかくアジアのアート、コンテンポラリーアート、アジア人研究者が少ない!
2)この業界で行われている研究の多くは以下のカテゴリーに収まる。
(a) 材料特定・解析するのが目的の研究
(b) 解析技術(解像度や感度など)を上げるツール開発の研究
(c) 改良した分析技術で材料特定して、新たな美術的情報を引き出す(アーティストの手法などについて)
(d) 改良した分析技術を使って劣化過程のメカニズムを解明・追跡する
(1)に関しては知っていた事とはいえ、100人弱のスピーカーがいるうち、アジア人研究者は私を含めて3名、アジアのアート(アジア人アーティスト、美術館、アジアに由来する美術品)を取り扱ったトークは4件、ととにかく少なかった!そして(2)に関してもかなりばらつきがあり、今回の学会で報告されていた研究のほとんどがaタイプ。正直、私にとってこれはとーーーってもつまらない。私が話したトークはbタイプ、自分がこれからやりたい分野はb、c、dタイプだなと再確認できた感じ。少数派かも知れないけど、だからこそ面白い。
ホテルの部屋からこの景色‼
7月の学会の方は、スイスの山奥で2年に1回開催されるもので、分野の中でも大御所が集まる、規模も比較的大きい学会で、細分化した研究の話をする場所というよりかは、分野としてどう進もう、どんな課題をタックルしよう、みたいなビッグピクチャー系な学会。私みたいなぺーぺーは主にネットワーキングの為に来る場所かな。スピーカーは、大御所オンリーで、そうじゃない大多数はポスターで参加するスタイルの学会(その分、ポスターに割かれる時間は結構長い)。
印象に残ったセッションは以下。
- Techniques for Depth Resolved Imaging in opaque media
- Data-driven research in Art and archaelogy
- Multimodal Macro and Microscale Chemical Imaging for Technical Art History and Conservation
- Preventative Conservations in museum
直前まで、行けるかどうか分からなかったのでポスターもかなり超特急で準備したのですが、結果。行ってとってもとっても良かった。やって行きたい研究の種類とか、どんな人・環境で仕事したいだとか、すごく色々なオプションを考える事が出来ました。下手をすると「科学っぽい」けど、実際にサイエンスに割けるリソースはあまりないラボとか、中途半端にアートに偏って、あまり科学的には面白くない研究をやっているラボもある業界なので、ちゃんとサイエンティストが集まってる環境、それなりにお金を出してくれたりコラボしやすい環境っていうのはキャリア面で大事な要素だと思う。やっぱり次はヨーロッパかしらん。笑
それだけじゃなくて、学部生の時にお世話になったけど、きっと私の事なんか覚えてないだろうなーという人に覚えてもらっていたり、再会出来たりして、嬉しかった♪ そして、私のボスの美術館を辞める沙汰とかはちょっとした噂話になっている(業界が狭いからね笑)ので、あなたはどうするの、大丈夫なの?と聞いてくれる人もいたり。業界として抱える課題はまだまだ多いのだけれど、大学院の時にいたゴリゴリ基礎研究の物理学者や化学者(この偏り方は、これはこれで尊いというか、アリなんだけど笑)とはまた違った、もっとオープンマインドでバランス感覚優れている人達が多い印象。めちゃめちゃ学際的な分野だし、このバランス感覚は必須かも。
思いがけず、自分のボスが辞めた事によって、私もポスドク後の未来を前倒しで考えさせられる事になり(任期が2+1年だから、1年未満で次の就活考えなきゃいけなくなるとか思ってもなかったよー泣)、かなりメンタルはガタガタした状態で臨んだ学会でしたが、とても良い出会いもあり、嬉しい再会もあり、夏のスイスの美しい自然と景色に囲まれて、すごく良い時間を過ごせました。まだまだこの分野において私は新人だし、知らない事もたくさんあるけれど、学びたい事の方向性もたくさんある事に気付けたし(自分の知識の浅さを知るともいう笑)逆に、この業界で私みたいな人間が研究する意味・意義みたいなのも再確認出来た機会でした。
ここ二ヶ月ぐらい波乱万丈だし、それに伴い秋にはまたアメリカに連れ戻される(という表現をしがち笑)ので、また国をまたいだ引っ越しをしなくてはいけなかったりして正直メンタルはなかなか落ち着かないのですが、とにかくこれを論文に仕上げて、次の目的地(またもや引っ越しの予感)へ行くために、修行頑張ろうと思います!