先週末は、12月ぶりにNYに行っていました~ 

研究が立て込んでいると、私の第3?のふるさとにもなかなか里帰り出来ていません。

今回のメインイベントはバレエでした!ABTの新作、Of Love and Rageを観たくて、ずいぶん前から友達と計画していました。

 

Image credit from ABT website

 

そのお友達は元ABTのダンサーで、コロナ直前に日本のバレエ団に移籍する為に退団したのですが、ちょうどオーディションが全キャンセルになり、地元の小さなカンパニーで踊っている間に色々考える事があったのでしょう。しばらく舞台から離れている間に電撃結婚!そして旦那さんのお仕事でNYに戻ってきたのです。NYに縁のある人なのかも。彼女の踊りはABT時代にも何度か舞台のチケットを頂いて見ていますが、スタイル抜群な人が多いABTの中でも目を引くバランスの良いプロポーション、華奢でソフトなラインなのに芯のある踊りをするダンサーで、正直もっと踊っている所を見たい人なのです♪

 

肝心のバレエもすごく楽しみにしていて! ABTの良さはやはり、物語がある全幕ものですが、新作の全幕ものってやっぱり予算が桁違いなのであんまり毎年はやらないのです。古典作品は結構見ていて(白鳥、くるみ、眠り、マノン、ジゼル等。ドンキも見たかな?)、なので久々の新作、コロナ明け、みたいな!と。今の芸術監督のラトマンスキー氏の作品は結構当たりはずれがある(Whipped Creamとかは前述の友人に来なくて良いと言われてしまったww)のですが、コロナ前に1回だけ、カルフォルニアでプレミアしたこの作品は舞台セットも良さそうだし、何といってもオリジナルキャストが素晴らしい!キャストに関してはまた後で。

 

ざっくりいうと、今回の新作は10点中7.5点という感じ!古典バレエの枠組みは周到しつつ、現代のオーディエンスが見ても古臭くない印象があり、そこは良かったなと思いました。バレエ好きで、古典は大体見たけど、コンテンポラリー作品は正直訳わかんないなという方(私はコンテ大好きですが、好き嫌い分かれるのは分かります)にはすごくおススメです♪ マイナス点は物語が色々盛り込みすぎ、展開が早すぎ、観客が世界観に浸る時間がちょっと足りないなと思いました。あと、音楽もあんまり記憶に残らない、当たり障りがないというか。

 

Image credit from NY Times

 

物語自体は本当、ちょっと難ありな内容で、ネタバレを恐れずに言うと…

古代ギリシャに美女、美女が美男に出会う、結婚(ここまでマジで20分ぐらい笑)。でも美男に嫉妬した輩の企みであたかも美女が美男に不貞している工作。美男怒る。美女の家に殴り込みにいく。自分の暴力に気付いた時には時すでに遅し、美女ぐったり。お葬式。でも本当は死んでない美女は墓荒らしに来た海賊にさらわれて海のかなたへ。墓参りに来た美男は墓が空っぽ+美女もいないのに気づき、親友と彼女を探す旅に出かける。さらわれた先の王に差し出された美女は美男との子供を身ごもってる事に気付く。子供を守る為に王の子だと偽って王と結婚する。美女過ぎて他国の王にも惚れられ、王1と王2の国が美男を巻き込んで戦争。美男勝利。美女、美男を許す。王1は子供を美女に返してあげる。ハッピーエンディング。笑

 

いやどう考えたって1時間半ぐらいのバレエに盛り込みすぎw 登場人物も3つの国からそれぞれ大勢出てくるし(コールドは同じダンサーが、3回衣装を変えて出てきます)、3つの国を大移動(しかも全部似てる)するし、古典作品のお約束であるグラン・パ・ド・ドゥ(男女でアダージオ、男性ソロ、女性ソロ、再び男女でコーダというお決まりのフォーマット)はないので見どころ‼‼‼ っていうのが無くてバレエ慣れてない人には分かりづらいかなぁと。なので物語の構成には、んーーー?という感じ。でも、女性同士、男性同士のパートナリングが随所にかつ自然に盛り込まれていて、これからのバレエはこうじゃないとなと思わせてくれました。

 

でも物語の???を補って有り余るダンサーと、セット・ライトデザインと衣装チームが本当に素晴らしかったです‼ まずはダンサーから。今回はオリジナルキャストで見れたのですが(ラトマンスキー氏がこのキャストを前提で振付を作った)、まず主役のCatherine Hurlan。彼女は子供の頃からずっとABT一筋で来た子で、ダンサー一家のサラブレッド。でもクラシックだけじゃなくてコンテやジャズも運動神経抜群+音感抜群なのでスポッとハマるのです。でもクラシックバレエの基礎やテクニックも類を見ない安定感。 クラシックが上手な人で、コンテも魅力的なダンサーってそんなに多くいないのですが(日本人ではハンブルグバレエの菅井円加さんが私の激推しです)、キャサリンは本当に幅が広い。キレキレの踊りも、優雅で繊細な踊りも出来る。そして私の中で一番大事なポイントなのですが、踊ってて楽しそう、自分の身体能力と音楽を存分に楽しんでいるのが伝わるダンサーで、ここ最近で一番好きなダンサーの一人です。男性主役のAran Bellは、とにかくパートナリングが上手で、キャサリン以外とも色々なパートナリングがある今回のバレエでも、誰と踊ってても女性が踊りやすそう。そして、私の中では白鳥のアルブレヒトとか今回みたいな「若造」っぽいというか、若気の至りで間違いを犯して許しを請う系な役が似合う笑 技術も、舞台の存在感も抜群で、クラシックの王子様系がドンピシャでハマるし、日本でガラとかで呼ばれたら絶対おばさま世代に大人気が出るベビーフェイス。キャサリンとアランが一緒に踊っているLet Me Sing Forevermore (Jessica Lang振付)は、彼らの音感と身体能力とダンスパートナーとしての相性が最大限に活かされてる小作品なので、ぜひググってみてください!

 

そして王1の役のDaniel Camargoは、実はすごく難しい役で、美男を思い続けるCatherine演じる美女に拒否られながらも、ジェントルマンに根気よく誘い続け、最後は美女もこの人の妻として生きよう、と思わせるまでおよそ15分ぐらい笑 でもしっかり説得力を持って踊るし演技します。しかもバレエにはあんまりいない「ただただ良い人」っていう以外特に特徴がない役なのですが、他の濃ゆいキャラ達に飲まれない存在感。さすがです。しかし私は彼のハーレムパンツの衣装がシェネという回転技する時にハンプティダンプティみたいに広がるのが可哀そうでしかたなかった笑 王2のJarod Curlyはコールドバレエの人なのですが、プリンシパルの代役として大抜擢。彼もすごーく背の高い人で、存在感あるタイプで、あまり踊る役ではなかったのですが、これからが楽しみなダンサーです。他のコールドバレエ陣も、3つの国の人々を踊り分けなきゃいけないし、大変だったと思うのですが、メインキャストがバタバタしている作品なので、世界観作りとして重要な役割を担っていました。ラトマンスキー氏は背の高いダンサーがお好みの様子。

 

そして衣装チームとセットデザインチームに本当に拍手を送りたいです‼ 普段バレエ見ない人でも、宣材写真を見ただけでおっと思わせる感じです。やっぱりこれからバレエが芸術として生き残っていくには、バレエ関係者じゃない人にも見たいと思わせるって重要だと思うのですが、衣装やセットって非日常な世界観を作るうえで欠かせないので。全体的にわりとミニマルだけど効果的なデザインで、幾何学的な振付にもマッチするし、何よりダンサーが踊りやすそうな衣装でした。短いしあんまり重要なシーンじゃないのですが、お葬式シーンの泣き女、死んだ(と思われてる)美女を運ぶ男たちの衣装と振付のマッチングは静止画にしても美しいシーンでした。

 

というわけで、この作品を違うキャストで見たいとかいうほどではないのですが、現代のクラシックバレエ新作という意味ではなかなか良作だったのではと思います。普段バレエを見ない人にも短めの上演時間だし、ロミジュリ的な恋愛要素あり、白鳥の湖的な愛は全てに勝つ的要素あり、衣装やセットも新鮮味があって楽しみやすいバレエだと思いました♪