6月前半は2週間、スタンフォードの施設でビームタイム実験をしておりました!

 

以前にもちらほら話した事があるかと思うのですが、パンデミック後、初めての現場に入れるビームタイム実験。そして私にとっても初めての現場入り!ビームタイム実験はこれで4-5度目なのですが、今までずっとリモート参加だったので、今回はウキウキ♪♪

 

1週目は、コラボレーターの実験に私達のラボは助っ人として参加。この実験は夜シフトだったので午後6時にラボ入り、午前6時に実験終了。ここでの実験では、レーザーとものすごく強力なX線(世界に数えるぐらいの施設しかこのスペックはないです)を使うのですが、限られた施設のX線時間、昼シフトは別な実験チームの時間なので、どんなに上手くいっていても、午前6時にはその日の実験終了。そのままベッドへ行き、昼頃に起きて、1日1度のご飯をどこかで食べて、また午後6時までにラボ入りする…というシフトが5日間続きました。

 

この実験では、残念ながら良さそうなデータが取れたのは5シフト中、おそらく1.5シフト分ぐらい。でもこの実験はすごく難しいのです。まずはレーザーとX線の光線を、ほそーい穴x2にまっすぐ通します。この作業はすごくすごく細い糸を、すごくすごく細い針に通す感じ。そして、髪の毛の断面ぐらい(50マイクロン)小さな面積にまで焦点を絞ったレーザーと、それ以上に小さく絞ったX線を空間軸で重ねなきゃいけない。いずれにせよ、ナショナルラボの機材なので、私達は触る事も出来ません。オペレーターのスタッフ研究員さんが頑張ってくれるのですが、私達はひたすら待機…。

 

 

そして無事に空間軸で重なって、かつ細い針の穴に光線をまっすぐ通す事が出来たら、まずはサンプルをいれずにチェック。これで光線の最終ポジションを調整。その他もろもろの準備が整ったらいざ、サンプルのガスを注入!そこからはもう時間との闘いです。空間軸の次は時間軸で二つの光線を重ねなきゃいけないので、その重なるポイントを探して探して… 求めているシグナルが見えたら即データ取得モードへ!となるのですが、大概はここまでの段階のどこかでうまくいかなかったり、最初はOKだった空間軸での重なりがズレてしまったり(そうなんです、レーザー光線は部屋の温度のすごく小さな変化でズレたりするのです…)、サンプル入れるまで分からなかった問題が発生したり。

 

とはいえ、この1週間目の実験で一番良かったなと思うのは、自分達の実験のリハーサルが出来た事。私達の実験は、使用する周波数も違えば、サンプルも違うのですが、針の穴に二つの光線をまっすぐ通す事と、空間、時間軸でレーザーとX線を重ねる事は同じ作業なので、入ってくるデータをどんどんリアルタイムで分析して「時間軸が重なる地点は100ピコ秒と110ピコ秒地点の間!」とか「67スキャン目からノイズが大きいのでもう一度針の穴のポジション確認してください!」「サンプルのガス圧が落ちてるのでチェックお願いします!」という指示をこちらから出す作業は似ているのです。なので、1週間目をコラボレーターの実験でリハーサル出来た事で、私もプログラミングを思い出す練習になったし、色々な細かいトラブルシューティングを事前に出来たのでとても良かったです。技術面以外でも、普段はZOOMでしか見かけない院生、教授たちを一緒になって12時間シフトを何度もやるとなんだか仲良くなるものですw それも良かったですね。今回のゴールは2種類のサンプルそれぞれを2つの周波数で見る事。結局さまざまなトラブルが重なり、1種類のサンプル、1周波数しかできなかったのですが、これでも論文が書ける成果は出ました!

 

午後6時から午前6時の夜シフトが5日続いた後は、24時間の休憩をはさんで、自分達の実験!今度は朝6時から午後6時までの昼シフトに体内時計を変えなければならず、人生で初めてメラトニンにお世話になりました笑 私達のチームは、同学年でX線実験の為のプログラムを書いたネイト、同じく主にX線実験が主軸の一つ下の超優秀な中国人の後輩リンユー、私、が分析チームの主戦力。新しく入ったポスドクのスチュアートと、一番下の後輩のリサはサンプル作り担当でした。1週目の実験に7-8人の分析チームの院生がいた事を思うと、結構少ない人数。エジンバラからお馴染みのセオリー系ポスドクが2名、スペイン人のアンドレとドイツ人のマッツが来たのですが、彼らは分析チームではないので。

 

結果、主に3人の分析チームで十分回せる事が明らかに♪♪ 自分で言うのもなんですが、私達は少数精鋭みたいです!今回の実験のゴールはサンプルAと4つの周波数、サンプルBとCは時間があったら、それぞれ1つの周波数のレーザーでデータを取りたいと考えていましたが(かなり冒険的ww)、最終的にはサンプルAで3つの周波数、サンプルBで1つの周波数だけの時間しかなかったです。。。が、記録的な猛暑日のせいでX線が半日、復旧できずに実験できなかった日もある事を考えると、上出来中の上出来の成果だと思います。これからデータをしっかり掘り下げていくわけですが、今から楽しみです!(この折り紙はトラブルが生じて暇な時に遊びました笑)

 

 

そして何より、ボスも含めてラボのメンバーとの仲がさらに良くなりました。今までも決して仲が悪いチームではないのですが、中国人のリンユーとはシャイなうえに普段違うプロジェクト過ぎて接点がないし、エディンバラチームは対面で会うのは3年ぶり!だけどみんなちょっと変わり者の面白い人だし、何より本当にチームプレーヤー!あんまり自分だけが目立ちたがるタイプがいないし、ボスもチームからのフィードバックを信頼して、こうしようああしようと的確な指示を出していたし、新入りのスチュアートとリサも、少しづつプログラミングを覚えて、最終的には主戦力チームの協力な助っ人になっていました♪ 研究室って、毎年誰かが卒業し、新入りが入ってくるのでなかなか良いチームワークを保つのは難しいのですが、現チームは良い感じです。

 

特に私はリンユーと仲良くなれたのが良かったな!3年同じラボにいますが、彼女はすごくシャイだし、私と違って実験系ではなく普段はシミュレーション系なので在宅ワークが多いから接点がなかったのですが、到着した日にものすごい辛い偏頭痛になっちゃって、その場の女子が私だけだったのもあり、大丈夫と言い張る彼女を無理やり車に乗せて一緒にホテルに戻り、しばらく一緒にいたのですが、それ以来、打ち解けて話してくれてなんだか距離が縮まりました♪ それ以外でも、3日目のシフト後、夜ご飯にPalo Altoに出かけた時も、なにを勘違いしたか片道1時間半の道のりを、歩いて帰る事になり、絶対これ歩道じゃないなって所を渡ったりして笑 12時間働いた後に90分歩くってどうかしてるでしょ笑 しかも7人もいたからUberすれば良い物を笑笑

そして、実験だけじゃない楽しい事も!なんとシンガポール高校時代の友人になんと8年ぶりに再会!彼とは実はほんのちょっとお付き合いした事もあるのですが(高校生らしいやつですw)、今ではただただ良い友達(彼はクィアだし!)。不思議な事に、お互い、特に申し合わせたわけもなく、アメリカ大学に進学し、さらに化学の博士号に進み、その中でも物理化学、その中でもultrafast molecular dynamicsというめっちゃニッチな研究分野まで丸被り笑 8年ぶりだったのに全然時間を感じさせない相変わらずの人懐っこさだし、会えた事を本当に喜んでくれて、私もすごく楽しかったです。ブランチで会って、その後実験が終わってから一緒にハイキングにいったのですが、道中ずっと理系キャリアの事、高校時代の事、お互いの家族の事など、話題に尽きず。話に夢中になりすぎて4マイルも余計に歩いちゃいました笑笑 それにしても彼は高校時代の細かい事よく覚えてた!!笑  これからも大事にしたい友達です。

 

午前6時にシフト終えてホテルへ戻っています… 小さく見えるのがチームメイト達。

 この日はデータ取れなくて虚しかった日w

 

というわけで今、プロビデンスに戻ってこれから領収書とか面倒くさい事しなきゃいけないし、ボスがさっそく明日ミーティングしようと言っているので、現実に引き戻されていますが、実りの多い2週間でした♪