前回のBook Seriesからだいぶ時間が経ってしまいましたが、最近ブログさぼってるのと、色々書きたい事が溜まっていて整理がつかなそうなので、書くことが決まっている読書感想文を♪

 

 

山内マリコさんの、あのこは貴族。最近、門脇麦さんと、水原希子さん主演で映画になったみたいです。読書好きな日系アメリカンの方のインスタグラムから知りました。山内マリコさんの作品は、他には読んだ事ないのですが、このキャッチ―なタイトルと、地方出身の女の子と東京生まれの箱入りお嬢様が、ひとりの男性を通じて偶然に出会う… というあらすじに興味をそそられ、しかも作家さん本人は富山県出身(私の祖父母が富山の結構な田舎に住んでいます)となり、気になったので、実家便の中に入れてもらいました。

 

サクッと読める軽やかさと、日本では見えづらい階級社会などの重めトピックのバランス感が心地よい作品でした。正直、文章の感じはそこまでユニークではないのですが、細かい所の描写の目の付け所とかは、面白いなと思います。寝る前にちょっとだけ読もうと思うと、どんどん読み進めちゃって夜更かししちゃうタイプの本です。

 

私は、この本に出てくる華子ほどのお金持ちでは全然ないのですが、東京生まれ。しかも私立のミッション系女子校に行っていた所とか(私が行っていた所は、かなりリベラル色強い所ですが、華子が行ってた学校は絶対、あの緑の制服の学校w)もあって「あぁ、華子みたいな子、知ってるわ」と、そこから共感しまくり笑 あまりにも守られて育った為、つい周りの守ってくれる人間に決定権をゆだねてしまって、いざ自分が決めなきゃいけない案件ではなかなか良い判断を下せない。でも持前のおおらかさと、器量良しな所がカバーしてくれて、不思議と周りに嫌われられない。人生のどのステージに進んでも自分の事を守ってくれる他人を探すのが本能的に上手く、そして、守られ過ぎて自分の実力を発揮する機会がなかったから、自分にはなんの能力もないと思い込みがちな所も、あぁ~こういう子、知ってるよ‼‼‼と笑 そんな彼女の狭い世界に風を通してくれるのは、彼女と同じ学校出身の帰国子女www でも私みたいなただの帰国子女じゃなくて、音楽留学で海外に行っていたパターン。うんうん、こういうサバサバした帰国子女って以外にも日本(東京)に戻ると超お嬢様で、そっちの世界のマナーも知ってるけど、ちょっと居づらくて海外に脱出してるってタイプ、いっぱいいるw

 

そしてこの作品のもう一人の主人公は、地方出身の美紀。元漁師の家で、田舎の狭さから抜け出す為に猛勉強して慶応大学に入学、そこで親に人生整えてもらって、学生の身分でホテルのラウンジをスタバのように使う同年代の内部生の存在を知る。自分が必死でつかみ取った地位を、生まれた時から用意されていた彼らの存在は異質以外のなんでもない。学費が払えなくなり、夜の仕事をする事になり、頭の回転の速さと人を読む才能で頭角を表すも、この世界の年齢制限にいち早く気付いている彼女はスパッとやめて上手にOLへと転職する。そんな賢く美しい彼女の魅力に気付いた男性は実は…という話。彼女が里帰りするシーンは、東京帰りなのがバレないようにトーンダウンした、それでも地元民には馴染まない程度のお洒落をして、生まれ育った町の活気の無さに胸を締め付けられつつも、あぁ抜け出せてよかったと思って、そんな自分に罪悪感を感じる彼女の描写が素晴らしいです。

 

ここからネタバレ。

 

 

 

この本のちょっと???な所は、後半、美紀と華子が出会うシーンなのですが、そこで出てくるテーマが「女同士の義理・人情」的な所で、確かに男性が絡むと特に脆く描かれがちな女同士の友情が、ポジティブにハイライトされているのはとっても嬉しいし、新鮮だと思うのですが、こーーーんな物分かりの良い人達いる??笑 というツッコミをどうしてもいれたくなってしまったw もう少しドロドロさせてたうえで、華子に毒吐かせたり、美紀に未練感じさせたうえで、最後まで持って行っても良かったんじゃないかな~と、思うわけです。というか、毒吐く華子が見たかったのかも笑 お嬢様は同じ階級の女同士の集まりでは結構遠慮なく毒吐くのです笑

 

後、これは完全に私の主観ですが、この作品の中で、知性を感じさせるキャラが美紀だけで、華子と相楽さんは、自分達の世界の事以外の知識がないうえに知ろうとすらしてない(相楽さんの方はあんまりフィーチャーされてないから何とも言えないけど)気がするし、幸一郎に至っては完全に思いやりもなければ知性も感じさせない(まぁ嫌われ役だから仕方ないのかもだけど)。こんなに恵まれた環境で育ったキャラクター達、世間知らずなのと知性の無さって別モノでは?と思うのです。狭い社会で、常識や視点がズレてるのは分かる。でも、ズレてるだけで思考し、表現する力はむしろ一般人よりあるはず。。。もちろん、作家の意図で上流階級キャラを表面的に描いているのかも知れないのですが、美紀が物語中盤から突然出てきてすぐに魅力的なのに対して、華子が中身も外見も世間知らずなお嬢様なのがちょっと残念だったかな… やっぱり華子の毒が見たいだけか笑

 

色々言っていますが、小説としては面白かったし、登場人物たちがいくホテルとか、出てくる住所の芸が細かいなと思います。映画も見てみたいかも。 サクッと読めて、東京に里帰り気分を味わえて、読了感は爽やかでよかったです♪