Dia 34 Muxcia


友人から譲り受けて以来、良き相棒であった杖を手放した。

途端に心許無くなり不安と寂しさがよぎる。


バスに乗っての移動。

巡礼中、車窓から手を振ってくれた人達のことを思い出しながら。

車道沿いの道を眺めても、昨日まで自分が歩いていたことなどなかったかの様だが、共に歩いていた仲間の姿だけは今も愛おしく目に焼きついている。


目的地のムシアでは、昨日お別れをした仲間と嬉しい再会。

海辺の町に相応しいシーフードを共にした。


聖母マリアがお告げに現れたという聖地ムシア。

この旅で何かを得ることができたのだろかと自問自答する私にある仲間はこう言った。

「カミーノの後で君の人生は変わるよ。少なくとも僕達という新しい友達は増えたでしょう?」

またある仲間はこの様に言う。

「必要な答えは知らないうちに届くのよ」と。

なんと素晴らしい仲間との出会いに祝福された旅か!


ムシアの夕日は、遠く西の果てに存在している新しい世界から漏れてくる街明かりの様な光が広がっていた。