札幌芸術劇場Hitaru こけら落とし公演『アイーダ』に関連し、札幌郊外でイタリアの名演出家ゼッフィレッリによる新国立劇場で公演された『アイーダ』における衣装と舞台美術展が行われている。

リアリズムを主軸とした彼のこだわりは、アンティーク生地を使用したものや、真鍮を手縫いで合わせて作った鎖帷子等、用意された462着もの衣装にもしっかりと反映。

ゼッフィレッリは私の敬愛する演出家の一人なのだが、以前に他のSNSに投稿した記事があり、今回も同じことを感じたので抜粋を載せておこうと思う。

『そもそもゼッフィレッリは壮大なスケール感と贅を極めた舞台演出で知られているが、間違えてはいけない点として、彼は決して必要以上に華美なことを望んだり、過剰な演出を施してはいないということが挙げられる。どんなに華やかな場面であってもどこか凛とした品位を保ち、どんなに大掛かりな装置を使ってもあくどさを感じさせないエスプリの妙。 ここが昨今よく見受けられる、真新しさばかりを追及し、自己陶酔を押し付ける演出家との大きな違いであると私は思う。 
(中略)
ここまで盛りだくさんに仕込んでおいて、それでも嫌味がないのはゼッフィレッリの天与の才、もう少し言及すると俗物的な境目の限界まで近づきながら、最後の一歩で墜ちきらない、絶妙なバランス感覚のなせる技なのではないだろうか』

ゼッフィレッリが生きた時代はそれこそ経済が豊かであり、だからこそ彼の豊潤なイマジネーションを具現化する力があったのは疑う余地がなく、もし彼が今に生きていたら、その才を持て余し、彼が本当に表現したかった美意識をあの様にして地上に咲き誇らせることはできなかったのではなかろうか。
人がそのさだめの中に生を受ける時、そこには寸分の狂いもなく意味をもってしかるべき環境を与えられるのだろう、と星の瞬きにも思いを馳せつつ。

本郷記念札幌彫刻美術館にて10月25日まで