ここのところいろいろと議論されている「ダウン症の胎児診断」について考えてみたいと思います。

 ・ダウン症とは

 まずは、財団法人日本ダウン症協会のHPを参照させていただきます。

 ダウン症とは、

 『正式名は「ダウン症候群」(最初の報告者であるイギリス人のジョン・ラングドン・ダウン医師の名前により命名)で、染色体の突然変異によって起こり、通常、21番目の染色体が1本多くなっていることから「21トリソミー」とも呼ばれます。 』

 『この染色体の突然変異は誰にでも起こり得ますが、ダウン症のある子は胎内環境がよくないと流産しやすくなるので、生まれてきた赤ちゃんは淘汰という高いハードル乗り越える強い生命力をもった子なのです。
 ダウン症の特性として、筋肉の緊張度が低く、多くの場合、知的な発達に遅れがあります。発達の道筋は通常の場合とほぼ同じですが、全体的にゆっくり発達します。
 心疾患などを伴うことも多いのですが、医療や療育、教育が進み、最近ではほとんどの人が普通に学校生活や社会生活を送っています。 』

 誰にでも起こりうる染色体の異常で、21番目の染色体が1本多く、筋肉の緊張度が低く、知的発達が遅れる事が多い。

 発達はゆっくりだけど、ほとんどの人が普通に学校生活や社会生活が送れる。

 こう記載されています。

 詳しくは、財団法人日本ダウン症協会のHPをご覧下さい。

 さて、このダウン症、他の染色体異常も同じく、母体の年齢とともにその発現率は増加していきます。

 次は出生前診断情報センターのHPを参照させていただきます。

 出生前診断情報センターのHPの高齢出産と先天異常のページを見ますと、

 35歳の辺りで急激に先天異常の発現率が上がっていきます。

 しかし20代でもゼロではありません。


 ・ccffDNA検査とは

 今回の血液による検査は、ccffDNA検査:Circulating cell-free fetal DNA(循環細胞フリー胎児DNA)検査というものです。

 妊婦さんの血液中にごく僅か循環している胎児のDNA断片を分析する検査です。

 出生前診断情報センターのHPのccfDNA検査のページをご覧下さい。

 妊婦さんの血液の中にはごくわずか胎児由来のDNAの断片がまじっています。

 それを説明したのがこの動画です。


この断片を調べる事で、染色体の異常を見つけるというのがccffDNA検査です。

 その精度は、

 1,696検体の精度検査研究の結果

 212件トリソミー21のうち、210件を検出
 99.1% sensitivity(敏感度)・・・病気を発見する能力 (95% CI: 96.3-99.8%)
 99.9% specificity(特異度)・・・非病人を病気だと誤診しない能力 (95% CI: 99.6-99.9%)

 DNA Sequencing of Maternal Plasma to Detect Down Syndrome: An International Clinical Validation Genet Med. 2011 Nov;13(11)

 ほぼ99%。

 妊娠10週から検査を受けることができ、母体からの採血なので流産等の危険性も無いです。

 それゆえ、無侵襲的出生前遺伝学的検査ともいわれています。


 ・従来の検査

 今までは、胎児診断といえば羊水穿刺(羊水検査)でした。

 胎児の細胞の染色体を分析するため、確定的な診断が可能でしたが、お腹に針を刺し羊水を採取するという方法なので、流産や感染症、胎児を傷つける等の危険性がありました。

 検査時期も15~18週で結果が出るまでに2週間を要し、胎児が大きくなっている可能性がありました。

 その他、胎盤を形成する組織の一つである絨毛を採取する絨毛検査、妊婦さんの血液のタンパク質の濃度を測定することで先天性の異常があるかどうかを確率として知る母体血清マーカー検査などがあります。

 どれも、流産の危険性があったり、正確ではなかったりとデメリットも大きい検査でした。

 
 ・胎児診断をどう考えるか

 今まで、ある程度のリスクがあったために検査を決断する人が多くはなかったものが、侵襲が無い方法のため気軽に受けられるようになる。

 ここに問題はあるようです。

 生むための検査か生まないための検査か。

 選択は権利なのか。

 どう考えるか。

 何を考えるか。

 

 とても難しい問題だと思います。

 皆さんはどう思われますか?

 (9月からの実施が報道された成育医療センター、昭和大学病院のHPには、現在準備中で、研究開始の時期は未定ですと記載されています。)

 次回は優生思想について書いてみたいと思います。