絶対に笑えない話 | 乾燥日記

絶対に笑えない話

「いいかお前ら、ちょっとでも笑ってみろ、
 この銃で頭を撃ち抜いてやるからな。」

テロリストはそう言って、
サングラスをとった。

目はとてもつぶらで、
かわいかった。
まるで、
少女マンガのようだった。

つい吹き出しそうになる人もいたが、
なんとか我慢した。

何しろ笑ったら撃たれてしまうのだから。
だが、人間とは不思議な生き物で、
笑うな、と言われると、笑いたくなってしまう。

ちょっとテロリストがつぶらな瞳だからって、普段だったら、笑うこともないかもしれない。

でも、この極限状態の中、
極度の緊張状態と、
かわいい瞳、凶暴なテロリスト、かわいい瞳。
どうしたってギャップに笑えてくる。
緊張と緩和。笑いの基本だ。

しかし、全員が耐えていた。
命がかかってる。

しかし、次の瞬間、予想外の登場人物が現れる。

「おう、遅かったじゃねえか。」

身長が2メートル近くある大男。
目は険しく、顔は傷だらけ。
この威圧感はただ者ではない。
少なくとも2、3人は殺して来ている顔だ。
恐ろしい。

「ちょっと混んでて遅れた。」

次の瞬間、人質の中の5人が吹き出してしまった。

「笑うな。」

パーン
パーン
パーン
パパーン

背の高い男が発砲し、5人が絶命した。
人質は、全員震え上がっているが、顔がまだ笑っている者もいる。


「まあまあ、しょうがねえじゃねえか。お前は目は怖いけど、
 声がかわいいんだよ。」