雨上がりの道でばったり会った友達と

おしゃべりがてらの散歩になった

住宅街の花を愛で

いつもの川に出て

河川敷を降りた橋の下に

スタンドも立てずに

えいやっとばかりに乗り捨てられた

鍵の付いた自転車を発見した

自転車そのものはとてもきれいだった

だから違和感を感じた

 

学校章のシールを見た友達は

「ここまで来ておいて

乗り捨てるのは不自然だよね~」と分析した

その高校に子供を通わせていたので

道のりをよく知っているのだ

 

友達とシェアしている自転車かもしれない

ここが受け渡し場所

そんな風に考えなくもなかったが

にわかおばさん探偵団は

防犯登録証をスマホで映し

おせっかいを笑われたらそれまでよと

交番に近い私が知らせることにした

 

お巡りさんは不愛想で

明らかに歓迎されてはいなかった

「放置自転車の来所があったんで

問題がなければすぐにジンシンに向かいます」と

どこかに連絡する雰囲気に

若干のめんどくささと

事件に出向きたい気持ちをはっきり感じた

それはそれで至極まっとうな気がした

 

生活臭の漂う蒸し暑い交番

椅子をすすめられたものの

来たことをすぐに後悔しはじめた

いやしかし

読書する時の臨場感が増すに違いないと

気持ちを切り替えて

きょろきょろと観察しておいた

『シーツ交換は15日 30日』の貼り紙

身を乗り出せば届く距離に

お巡りさんの帽子や盾があった

盾 構えてみたい・・・ゼルダがよぎった

 

ほどなくして

奥から「盗品でした」のきりっとした声が聞こえ

「そりゃすぐ行かなければいけないな」

と答える声も聞こえた

プリンターが動き

お巡りさんは書類を手に戻ってきた

改めて「盗品でした」と言われたがピンとこなくて

「探してたってことですか?」と聞き返した

「そういうことです 探してました

 ありがとうございます」と

初めて かすかな笑顔をくれた

「自転車立てる時 私 触っちゃいました」と

告白しておいた

指紋をとるのに差しさわりがあるのでは?と

急にドキドキしたのだ

「かまいません」と即答され安心した

身分証を書き写され 

発見時間と場所の確認をさせられ

解放された

 

友達に報告したら

「いいことしたね」+

拍手する何かのスタンプが送られてきた

 

誰かが自転車の持ち主に不快なことをした

その事実は変わらないので

晴れやかな気分とはいかない

私も数年前に鍵を壊されて

勝手に使われたうえ

パンクした状態で放置され

一時間以上かけて

徒歩でとぼとぼ帰宅したことがあった

とても悲しくて

自分がされたかのようにとらえて

しばらく落ち込んだ

 

でも君は若いから 忘れたらいいよ

明日から通学に使えるといいね!

がんばれ高校生!

めげるな高校生!