旅は読書に没頭できるチャンス

厚さの割に軽いのでお供にした

 

登場人物は多く 

その名前も覚えにくかったが

じきになんとかなるだろうと

気にしないで読み進んだ

エピソードのあれこれは

本を放り投げたくなるくらいひどい話ばかりだ

 

でも私自身を振り返るだけでも想像がつく

人間は きっかけがあったら

残酷になれちゃうのだ

国や世間が煽ったらなおさら簡単

張り切って残酷

その種は誰でも持っている

これからそういう雰囲気になったら 落ち着け!自分

 

著者がどうしてもっと早く

インタビューを始めなかったのかと

後悔する気持ちを書いている箇所があった

そうなんです!

20年ほど前の やはり12月の沖縄に

若い親の私たちは 幼児を連れて訪れていた

観光タクシーがひめゆりの関連施設に止まり

運転手さんに見学を促された

ホテルからタクシーで来た長い道のりを

当時の女の子達が歩いて逃げたという事実だけで

鳥肌が立ち 顔が引きつったのを覚えている

話を聞くのが怖かった 

せっかくの旅を暗くするのが嫌だった

私たちは「幼児連れ」にかこつけて下車しなかった

 

今回沖縄を訪れたが 米軍基地の話はあったけれども

もう ひめゆり云々の案内がなかった

幼児は幼いなりに感じることも

学ぶこともあったに違いないのだし

勇気を出して

証言者の直の声を聞いておくべきだった

 

宇丹貴代美 訳

河出書房新社 2250円+税