(----再び恐怖が登り始める。)
----ねぇ、知ってる? 『何処にも無い都会』の話。
----え?そんな話聞いたこと無いな。
----まぁ、そりゃそうでしょうね・・・最近出来た話だから。でも、この話は二つの都市伝説が合わさってるのよ。
----へぇ…そうなんだ。…どんな話なの?
----それはね… 『ある日、田舎から出てきた人が都会に引っ越す時だけ現れる都市』でね、その人の遠くにいる親友のフリをしてその人を永遠にその都市の住人にしようとするの…
「…お前は…誰なんだよっ・・・!」
「誰って…鈴木 康だよ。…しってるだろ?」
…表情も顔も性格も…一つも違わない康なのにそれは大きく違っている。
康は…いや 違う。…本当の康は…!!
-----でもね、その親友って言うのは絶対…
「…違う!…本当の康は…鈴木 康は…5年前に死んだはずだ!!」
-----何年か前に死んだ人間なんだって。
「あ~あ。思い出しちゃったらしょうがないなぁ…。でも、また一緒にいられるんだぜ?あの頃のように。」
そういって目の前にいる奴が…顔を半分だけ嬉しそうに嗤いながら歪め、その半分を悲しそうな顔で苦しそうに涙を流しながら…左右非対称な顔で…僕を見下ろした。
「…や、止めろ…まだ俺は…死にたくない!!」
「清…!ゴメンな。…でも俺はお前と…一緒に居たいんだ。」
するとあの時ぶつかった女の人が…俺の体の自由を封じた。
「?! 何すんだ!離せ!!」
…そして何処からともなく奴が斧を取り出した。
こいつは…俺を殺す気だ。
そう直感的に感じ取った俺だが身動きが一つも取れやしない。
…普通の女の力とは格違いに強い、そう思った。
「…何する気だ…!! …嫌だ…止めろ… ヤメロォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!」
そう叫んだ瞬間、斧が風を切り裂き俺の頭に一直線に襲い掛かった。
…俺に避けるすべはもう無かった。
ザクッ。
そう聞こえるはずの音すらもう俺には聞こえなかった。
…俺は頭を斧で刺され、即死だったのだから。
血が飛び散る。
…もう 俺に意識など…存在しなかった。
「ようこそ、『どこにもない都会』へ。 歓迎するぜ清。」
…そう言いながら康の顔をしたものは…清の死体を担ぎ…嗤った。
半分泣きながら。
----えぇ?!それってこわっ!!
---- まぁ…私も話しながら背仲がから寒気を感じるわ。 でも、もう終わりよ。
----何で?!もう一つは?!
----もう一つは…死んでから誰かに聞きなさい。
----え?
ザクッ。
…知ってはいけなかった。
聞いてはならなかった。
その都市伝説は語られてはいけない。
語る者はすべて、『奴ら』だ。
せいぜい、気をつけるといい。
…奴らに目をつけられないように。
-----さぁ、次は…誰にしようかな?
出会ってしまったらもう逃げられやしない。
- ----ようこそ、そしてさようなら。
彼女が最後に話さなかったもう一つの都市伝説、聞きたいかい?
…死んだ彼女の友達の分も話してあげよう。
でも 決して他言しないように。
…奴らに目をつけられるからね。
-----では…またの機会に。