【全部嘘。ていうが…】

宇宙遊泳だね、いくみちゃんは。と言われた。

時々みないで飛ぶ癖が発症する。冗談みたいに。
いつもはグズグズしてるようで、だけど何か決めると、ひゅんっと一直線に飛ぶのだ。

いろんなもの食べて、あこがれを燃やして生きてきた。

旅芸人への憧れは、絵画やヨーロッパの映画から、大道芸人、ジプシー、路上生活者、サーカスのイメージに惹かれた。なんにも持たないもの同士の熾烈な恋愛だとか、芸術家とミューズの関係だとか。

芸術や文学ってある意味では毒だけど、生きてくのには欠かせないもので。やっぱり生きててよかったっておもえる。感動したくて生きてるから。

私は生活を愛しているんだけれども、日常を飛び越える誘惑にも抗えないときがある。同じところにずっといるから飽きてきて、全く勝手のわからない真っ白な状況に自分を投げ込んでみたくなる。そこで自分がどうやっていくのかを試してみたくなる。どこまでも何にもなくてどう生きられるのか、本質は何が残るのだろう。

どこにいても何をしても、慣れればそれがそれぞれの日常。旅が日常になる日も近い。

旅をして持って帰ってくるのは、ほんとうはどこにいても移動しなくても、新しいものを発見する新鮮な驚きを日々心にもって生きようという思い。いま暮らしてる山は本当にお天気の変化が激しくて毎日違う表情が自然の中に現れる。風が吹いた、竹が揺れた、光が踊った、菜花がどんどんかさを増して、草木が伸びて、仔馬がうまれて、雨が降った、それにつれて自分の体調や心の状態も日々変化している。

こんなにもひとつの演目を稽古するのは初めての経験だけど、人も場所も季節も景色も時間も自分の状態も全部全部が留まらず新しいんだって。その中で自分もどう変わっていくんだろう。

初演は地元の上場高原合宿所で、16日に。筍みたいに薄皮を幾重も突き破ってにょきにょき伸びたい。




iPadから送信