アンサンブルの楽しみ | いわき市台風被害掲示板★南相馬、浪江町、双葉町、錦、勿来等

アンサンブルの楽しみ

 娘が朝からニマニマしていた。理由を聞いたら「きょうはマンドリン部のある日だから」だそうである。親父に似てきたなあと思う。


 私もきっと、バンド練習の朝はこんな顔をしてるんだろうと思う。


 私は、子供の頃から楽器が大好きだった。小学3年ぐらいの時に、姉の学研の付録でついてきたオカリナを勝手に使い、練習していた。当時はやっていた歌謡曲は何でも吹けた。


 小学4年になってリコーダーを買ってもらったら、これも完璧にマスターした。音楽の時間には、いつもお手本の演奏をする役だった。姉も得意だったので、よく2人でアンサンブルしたものだ。


 小学6年の時に姉が買ってもらったクラシックギターを奪い、練習した。


 当時はやっていたさだまさし、松山千春、アリスは全部弾けた。ストロークだけではなくて、アルペジオやスリーフィンガーも弾けるのは、多分、学校では私だけだったのではないかと思う。


 中学3年の時にオフコースが流行って、オフコースの曲の8割は、ピアノでマスターした。オフコースのピアノは、左手があまり動かないので結構簡単なのだ。ギターを弾く感覚で弾けるピアノだった。


 高校時代は野球部の練習が忙しくて楽器ができなかったが、いつかバンドがしたいなあと思っていた。


 大学に入ったら、クラスメートが「カシオペアバンドをやるけど、ドラムをやらないか」と誘ってきた。カシオペアというのを知らなかったので、気易く返事をしたが、後でこのバンドの神保彰という人が、日本屈指のドラマーだということを知り唖然とした。


 神保さんのドラムは、難しかった。


 カシオペアというのはフュージョンと呼ばれるジャンルのバンドだ.。「融合」という意味でいろいろなジャンルの音楽が混ざったジャンルなのだが、中でもこのバンドは、演奏の幅が広かった。


 ギターは単なるロックギタリストで、ベースもチョッパーベース主体のバンドだ。ピアノはジャズっぽかった。唯一ドラムだけがいろいろなリズムを叩いた。何のことはない、いろいろな音楽が融合しているのはドラムパターンだけだったような気がする。


 神保さんは、8ビートはもとより、16ビート、4ビート、サンバ、ボサノバ、シャッフル、ラテンと何でも完璧に叩ける人だった。「このバンドの曲を全部コピーできれば、どんなジャンルの曲でも合わせられるようになるだろうなあ」と思った。


 そして、今に至る、です。ほぼ毎日、少なくとも10分はスティックを握って基本練習を繰り返してきました。


 結局、神保さんのドラムは完全にはコピーできていません。なぜかというと、神保さんは、追いかけても追いかけても、どんどん進化していくドラマーだったから。


 神保さんに追いつけなかった私だが、目的はほぼ達した気がする。神保さんをお手本に技術を磨いてきたお陰で、どんなジャンルの曲でも合わせられるようになったからだ。


 完全にすべてのジャンルを、というのは無理だが、とりあえず、バンドの他メンバーにはどこで手を抜いているかを気づかれない程度に、つまり、ドラマー以外の耳はごまかせるぐらいに、全てのジャンルでそこそこ合わせられるのである。


 これは楽しい。なぜ楽しいかというと、「バンドしてます」という人がいたら、躊躇なく「一緒にやってみませんか?」といえるからである。「どんなジャンルを?」「どんなレベルで?」と聞く必要がないのである。


 一緒にアンサンブルしてみて、すぐに合わせられるという幸福は何モノにも代え難い。


 きっと娘も私と同じような人生を歩むのではないだろうかと思う。これで息子を音楽に引き込めば、毎日バンドができる。