見捨てるという選択
通勤のカーラジオでいつも聞いている番組が、今日は特に面白かった。
心理学の女医先生が人生相談に応じる番組なのだが、なるほど、と思ってしまった。
この先生、いつも、突き放した態度で厳しい言葉を相談者に浴びせるのだが、この日のこの相談者にだけは、全く違った態度だった。
この相談者の女性は、誠実な話し方で、先生が繰り出す質問に一生懸命答えていた。
彼女の相談内容をかいつまむと、こうだ。
ある男性とつきあい、家庭をもった。子供もできたが、この相手の男性が、不誠実なことばかりする。口論をふっかけてきて、家の中の物を壊すばかりか、最近では自分と子供に暴力を振るうようになった。
子供の安全のことが不安だが、この男性のことを思えば別れられない。この男性は、精神的に弱く、多分自分が家を出たら生きていけないのだ。
この男性が自分を食い物にしているのはわかるが、この男性のことを考えれば見捨てるわけにはいかない。
という内容。
この女性の話を聞いた先生は、落ち着いた口調で、諭すように話し始めた。
「あなたが、自分が愛した男性を思う気持ちは立派だと思う。しかし、世の中には、自分の力では直せないものもある。あなたはこの男性が正しい方向にいくまで我慢しようとしていると思うが、それでは子供が危険にさらされる。世の中には本当に邪悪な存在というのはあるものなのだ。だから、そういう存在に出会った場合、自分の側が破壊される前に見捨てる、という選択も必要なのだ」。
他人を大切にする前に、まず自分を大切にすること。そして、自分を大切にしてくれる人を大切にすること。さらに、自分の手には「見捨てる」という選択もあるのだということを意識すること。
「正しい選択をすれば、幸せに近づく」とこの女医先生は言っていた。