英語学習のモチベーションが上がらない時
英会話の勉強というのは、タライからタライへ、ざるで水を運ぶような行為だと誰かが言っていたが、言いえて妙である。
頑張っても頑張っても、上達をなかなか実感できない。「自由に話せるようになった」と感じることは、少ない。
ノバに通っていた時、自分より上のレベルの人の英語は、みんな上手に見えた。自分がやっとそのレベルに入ると、周囲の人がものすごく上級者に見える。ところが通っていくうちに、同レベルの人の英語のデタラメさが耳につくようになる。さらに、テンポが遅すぎて、いらいらし始める。
そうなると、たいていは先生からレベルアップの推薦状が出る。
またレベルアップして新しいレベルになると、周囲が上級者に見える。周囲が下手に見え始めるころにまた、レベルアップできる。
入ったばかりのころは、レベル4ぐらいの人がいわゆる「ペラペラ」に見えたが、いまだとレベル4では、いらいらするだろう。ボイスルームでも話していると、各レベルの人の違いがはっきりとわかる。
文法も、聞き取りの正確さも、表現力も、明らかに違うのだ。
米国にいると、自分のレベルアップをなかなか実感できない。周囲にいるのがネイティブか、米国永住の超上級者ばかりだから、いつも自分の英語に劣等感を感じながら会話をすることになる。
そんなときにモチベーションをあげるためにやるのは、英語をやりはじめた頃に使っていた教材を聞きなおしてみることだ。
私は、英語学習の一年目に「1000時間ヒヤリングマラソン」をやった。当時、会話の最初から最後までつながって聞こえて、何がなんだかわからなかった教材だ。
時の流れというのは、恐ろしいもので、この「日本の英語教材の中では、一番難しい部類」と言われる教材が、今だと、ほとんどすべてクリアに聞こえる。「ネイティブもこのぐらいでしゃべってくれると助かるのに」と思うほどだ。
いや、聞きやすいのは、あたりまえかもしれない。教材の中の英語は、きれいな発音のものばかり。さらに、意図的に聞きやすく話している。
現地にくれば、独特のなまりがあったり、スパニッシュが(文法的にも、発音的にも)混じっていたり、騒音の中で話したり、というものを聞かなければならない。相手の英語が間違っていても、仕事なのだから「あんた間違ってますよ」とはいえないのだ。
自分が伸びていることを実感するためにも、自分が今何につまづいているかを自覚するためにも、この「昔の教材を聞く」というのは効果的だと思う。