正義感が強かったY君の死 | いわき市台風被害掲示板★南相馬、浪江町、双葉町、錦、勿来等

正義感が強かったY君の死

小学時代の同級生で高校の野球部でも一緒だった友人Y君が急死したという知らせが今朝、入りました。肺血腫という病気だったそうです。


 Y君は、子供の頃から正義感が強く、口べただけどまじめな人でした。


 教員になりたくて、高校野球が終わった3年の夏以降から猛勉強して、浪人せずに国立の教員養成大学に入った頑張りやでした。うちの高校の野球部は、非常に練習が厳しくて、現役時代は勉強なんかしている時間がありません。そんなチームに所属しながら現役で国立大学に入るのは、きわめてまれなことでした。



 大学を卒業して、中学校の先生になって、夢だった野球部の監督にもなって。同期からうらやましがられるような人生でしたが、ある時期から雲行きが怪しくなりました。


 正義感のY君は教職員組合で頑張っていたのですが、かなり強硬な思想を持ち始めていました。


 それがもとで、疎んじられたのでしょうか。小さな事件をもとに、教員を辞めさせられてしまったのです。


 Y君が風俗営業の店で遊んだ、その女の子が未成年だったようです。風俗営業店に家宅捜索が入って、その店が摘発され、その中に未成年の女の子がいて、その子がY君の名前を取り調べで話したようです。


 性風俗のような遊びを肯定するつもりはありませんが、Y君は少し気の毒でした。普通、そのような犯罪では、「客」の側が責任をとられることはありません。しかし、警察署の公安担当者が左翼がかった思想をもったY君をマークしていたのでしょう。Y君が客だったことがリークされ、学校で問題にされてしまったそうです。


 Y君は学校をやめ、仕事を失い、新しい仕事を探さなければならなくなりました。彼にとって大きすぎる代償でした。


 Y君は、荒れていました。酒を飲んで友人に暴力をふるったり、相手を罵倒するようになったのです。順調に来ていた人生が、他人の嫉妬や逆恨みを買うことによって、大きく脱線してしまったのですから、気持ちはわかります。


 ただ、他の同僚も、そんなY君から離れていきました。みんな、自分の人生を生きるのに必死だったし、精神的に荒れていたY君から距離を置いていたのです。


 彼は元来、本当に優しい男でした。ある時、練習帰りに急に雨が降りました。僕は傘が無いのでしょうがなくトボトボと雨に濡れながら帰ることにしました。すると彼が後ろから追いかけてきて、私に傘をかざしてくれたのです。駅まで20分。駅に着いたときに、見たら彼の体左半分はびしょぬれでした。僕が濡れないように、僕の方にばかり傘をかざしていてくれたのです。



 亡くなった彼の人生を見渡して「彼は正義感が強すぎた」という人がいるかもしれません。きっと、野球部の仲間の中にでさえ、そんなことを言う人がいるでしょう。


 でも、そうでしょうか? 正義感が強くて、強すぎるということはないはずです。正義は正義であるべきだし、それが強すぎるということは本当は無いはずなのです。


 彼が幸せになれなかった人生であり、幸せになれなかった「この世」だけど、僕は、彼の人生を否定したくはないのです。むしろ、彼のような正義感の強い人が幸せになるには、この世は汚れすぎていたのではないでしょうか。


 汚れた水に生きられる「我々」が、生きられない側の人間を笑うのは、間違っていると思います。むしろ、汚れた水で生きている自分を恥じる精神を持つべきです。正しかったのは、むしろ、Y君だったのではないかと自問自答しています。


 世の中には、正しい道を選んだことによって、より苦しい思いをしている人はたくさんいると思います。そんな人が、自暴自棄になることなく、自分の選んだ道を歩んでくれることを望みます。


 私も、全くの真水とはいかなくても、なるべく汚れていない道を選んでいこうと思っています。



 Y君にとって天国は居心地がいいところでしょう。天国で幸せに過ごしてくれることを心から祈っています。