卒業
大学一年の春、最初のクラスで前の席に座った同級生に一目惚れしてしまいました。目の前にいるけど、でも、緊張して、全然話しかけられなくて。
彼女は都会的な女性で、私は田舎から出てきた貧乏学生。「接点はないなあ」と思って、いつも遠くから見ているだけでした。
彼女は、スポーツ万能で成績優秀。気だてが良くてファッションセンスもいいし。キャンパスの華でした。うちの大学は、あか抜けた女性が多いことで全国的に有名だったのですが、その中でも目立っていました。「高嶺の花」というのは、ああいうのを言うんでしょうね。
席が前と後ろだったのに、ほとんどまともに話したこともなくて。たまに急に振り向いて話しかけられても、緊張してまともに答えられませんでした。
本当に大好きだったんだけど、彼女がいつもお友達に囲まれて幸せそうにしていたので、「まあ、幸せになってくれれば、それでいいや」と思っていました。おつき合いしている人もいるようだったし、「きっとその人が幸せにしてくれるだろう」と思っていました。
それが、大学4年になって、少し気持ちが変わってきました。
自分の進路希望は、新聞社にはいるか、田舎に帰って地元企業に入るか。新聞社は、駆け出し記者は地方に出されるのが慣習だというので、「そうなると、いずれにしても東京にはいられなくなるな。そうすると彼女の顔もみられなくなるな」と思いました。
そう思ったら、急に、耐えられない気分になってきました。
今までは、学校に来れば彼女の顔が見られて、話はしないまでも、遠くから眺めているだけで幸せな気分になれました。
でも、「あと一年後には、多分永遠に彼女の顔が見られなくなるようになるんだなあ」と思うと、胸がつぶれそうになるぐらいの悲しさがおそってくるのです。
大学は、4年になると就職活動が中心で、ほとんど学校でクラスメートと会えなくなります。だからもう、4年生になったら社会人へのカウントダウンが始まっている感じでした。
新しい人生のスタートを切るために、彼女への思いを引きずっていては、大事な出だしでつまずいてしまいます。私は、彼女への思いに決別するつもりで手紙を書きました。「あなたのことがずっと好きでした。あなたが幸せになることを、遠くから祈っています。それと、一枚でいいから、あなたが写った写真をいただけないでしょうか?」。
卒業から3年目の春に、大学のクラスの同窓会が開かれました。
私と彼女の結婚披露宴二次会を兼ねたその会には、70人ものクラスメートが参加してくれました。
彼女がなんで私なんぞに振り向いてくれたのか、いまだにわかりません。彼女に聞いても、「何でだろうねえ」とわからないようです。
彼女は都会的な女性で、私は田舎から出てきた貧乏学生。「接点はないなあ」と思って、いつも遠くから見ているだけでした。
彼女は、スポーツ万能で成績優秀。気だてが良くてファッションセンスもいいし。キャンパスの華でした。うちの大学は、あか抜けた女性が多いことで全国的に有名だったのですが、その中でも目立っていました。「高嶺の花」というのは、ああいうのを言うんでしょうね。
席が前と後ろだったのに、ほとんどまともに話したこともなくて。たまに急に振り向いて話しかけられても、緊張してまともに答えられませんでした。
本当に大好きだったんだけど、彼女がいつもお友達に囲まれて幸せそうにしていたので、「まあ、幸せになってくれれば、それでいいや」と思っていました。おつき合いしている人もいるようだったし、「きっとその人が幸せにしてくれるだろう」と思っていました。
それが、大学4年になって、少し気持ちが変わってきました。
自分の進路希望は、新聞社にはいるか、田舎に帰って地元企業に入るか。新聞社は、駆け出し記者は地方に出されるのが慣習だというので、「そうなると、いずれにしても東京にはいられなくなるな。そうすると彼女の顔もみられなくなるな」と思いました。
そう思ったら、急に、耐えられない気分になってきました。
今までは、学校に来れば彼女の顔が見られて、話はしないまでも、遠くから眺めているだけで幸せな気分になれました。
でも、「あと一年後には、多分永遠に彼女の顔が見られなくなるようになるんだなあ」と思うと、胸がつぶれそうになるぐらいの悲しさがおそってくるのです。
大学は、4年になると就職活動が中心で、ほとんど学校でクラスメートと会えなくなります。だからもう、4年生になったら社会人へのカウントダウンが始まっている感じでした。
新しい人生のスタートを切るために、彼女への思いを引きずっていては、大事な出だしでつまずいてしまいます。私は、彼女への思いに決別するつもりで手紙を書きました。「あなたのことがずっと好きでした。あなたが幸せになることを、遠くから祈っています。それと、一枚でいいから、あなたが写った写真をいただけないでしょうか?」。
卒業から3年目の春に、大学のクラスの同窓会が開かれました。
私と彼女の結婚披露宴二次会を兼ねたその会には、70人ものクラスメートが参加してくれました。
彼女がなんで私なんぞに振り向いてくれたのか、いまだにわかりません。彼女に聞いても、「何でだろうねえ」とわからないようです。