動物病院に病気で来られる子には、
治療をしなくても治る病気の子
治療をすれば治る病気の子、
治らない病気なので悪化しないように維持の治療をしていく子、
治らない病気で維持療法をしても悪化していく子、
治らない病気で何の手立てもできない子
のパターンなどに分かれると思います。

高齢ペットで治らない病気に罹ってしまったケースについて考えさせられました。

13歳の猫さん、進行していく病気に罹りました。
食事療法や投薬によって病気を維持していけるように、その子の飼い主様は日々頑張ってお世話をしています。

その猫さんは好き嫌いのある子で、好きなご飯なら食べるけれど、病気の為に食べなければならないご飯は嫌いだからと避けてしまい食べません。
飼い主様は何とか療法食を食べてくれるようにと、好きなご飯との割合を変えながら混ぜてみたり、温めてみたり。とにかく食べてくれるように様々な工夫を思いつく限りに試されていました。
また薬を飲むのも大嫌いな猫さんで、当然ご飯にお薬を混ぜるということもできません。口の中に薬を入れて飲み込ませるという方法しかありません。
しかしながら飼い主様が薬を出す時のカサッという音を聞いてすぐ逃げ隠れる猫さん。
それを追って探しては捕まえて、薬を何とか飲ませるべくと毎回格闘されていたそうです。
ある日、毎日行われる投薬の際の格闘をしながら飲ませ終えた途端に猫さんに発作が起きてしまいました。
幸い、猫さんはお家ですぐに状態が回復しました。その後にご来院され、日々のお世話がいかに大変で…とのお話を伺うことができました。

この時の猫さんの発作は、投薬時の過度なストレスから起きた不整脈が原因ではないか…ということでした。
病気が悪化しないように飲む薬を飲まされる事で具合が悪くなってしまうという猫さん。飼い主様は悩まれました。
病気を何とか抑えようと頑張っているけれど、猫さんにとってはストレスでしかない。しかも好きなご飯も食べられないという状況です。

お家で病気の子のお世話をしている飼い主様で、治療を受け入れてくれない子の場合、無理させて治療を続けていくのか、無理させないで治療を諦めて好きなように過ごさせてあげるのか、という葛藤が常にあります。


次に、治るかもしれない病気だけれど治療をするかどうかで悩まれた飼い主様のお話。

小型犬の平均寿命(14歳)を超えた16歳のワンちゃん。
最近になり、ガンが見つかりました。
ガンの種類としては抗がん剤の効果を得られやすいタイプだったのですが、抗がん剤の副作用によって弱ってしまうのが心配で、治療を選択するべきどうかで飼い主様が悩まれました。
現在、臨床症状は特になく、食欲もあって年相応に元気に過ごせています。
だから余計に飼い主様は悩んでしまいました。

ガンの治療をして治ったとしてもあと何年生きられるのか。
今は食欲旺盛でも抗がん剤の副作用でご飯を食べられなくなって弱ってしまうかもしれない。
治療を選択しなかったことでガンで死んでしまうかもしれない。
色々なケースが頭に思い浮かびます。

ガン治療を選択した際の今後の体の状態はこうなりますよ、しなかった時はこうなりますよ、というあくまで予測の範囲でのお話を飼い主様にします。
でも、どうするかを決めていただくのは飼い主様に必ずお願いしています。

この2つのケース、飼い主様は非常に悩みに悩んだ故に自分の大切なペットの為に結論を出されました。また悩むことがあるかもしれませんが、飼い主様の結論を私達は尊重し今後も応援していきたいと思います。

自分のペットがこのような状態・状況になった時、どう考えますか?

治療をするしないにせよ、いずれは必ず訪れる死があります。
ペットの性格をしっかりと受け入れた上で病気とどう向き合っていくかを考えておく事。
さらに最期までの日々をどう過ごさせたいのか、飼い主としてどこまでやって、どう最期を看取ってあげたいのか、という事を元気な内に考えておく事をお勧めしたいです。