「1か月あたりの平均の所定労働時間」が分からないときは、とりあえず「173.8時間」だということにして進める。
残業代の計算式はシンプル。
残業代=単価×時間数×割増率
残業が深夜に及んだり、休日だったり、休日の深夜だったりしても、計算式自体は同じです。
この、「単価」の計算式は以下。
割増賃金の基礎単価(時給)=基本賃金(賃金総額-法定除外手当)÷1か月平均所定労働時間数
「1か月平均所定労働時間」の計算式は以下。
1か月平均所定労働時間=(365日-1年間の所定休日数)×1日の所定労働時間数÷12か月
ここで、「1年間の所定休日数」が分からなくて立ち往生する会社は、よくある。
社員全員が一斉に休む休日のほかに、社内オリジナルの「振替」や「代休」を駆使して五月雨式に順繰りに休む休日がつづら折りのように続いて、本当のところの「1年間の所定休日数」が分からなくなる会社。
労基署的な言い方をすれば、労務管理力が低いので、年間休日カレンダーを作成して前もって周知していない会社。
未払残業代の請求に対応するときは、それでもとりあえずの試算をすぐにしなければならないことがある。
この「1か月平均所定労働時間」が分からないときは、ざっくりと、とりあえず、次のように計算しておいて、後から詰める。
閏年でなければ、1年間=365日なので、
365日÷週の7日=52.14週/年。
1年間に、1週間は、52.14週ある。
1週間の所定労働時間の上限は、原則40時間なので、
52.14週×40時間=2,085.6時間/年。
1年間に、所定労働時間は、2,085.6時間ある。
これを12か月で割ると、
2,085.6時間÷12か月=173.8時間/月。
1か月に、所定労働時間は、173.8時間ある。
通常は、1か月の平均の所定労働時間が、この173.8時間よりも多くなることはない。
また、未払残業代を請求される会社は、たいてい、1日8時間以上、1週40時間以上働かせていることが多いので、この173.8時間よりも所定労働時間が少なくなることもほとんどない。
前述の「後から詰める」のは、この「少なくなることがないことの確認」となる。
ほとんどの場合、相手方も、相手方代理人(弁護士や行政書士、司法書士、社労士など)も、労基署も、このまま173.8時間を1か月平均所定労働時間として話を進めることになる。
なので、未払残業代を請求する側から見ると、計算式にこの173.8時間が出てきたら、それは「労務管理力が低い会社」ということになり、突っ込む余地が他にもあることのサインになる。
もちろん、相手方に提示するときまでには、きちんと計算しておきたい。
webライター・沈潜(ちんせん、Tingseng)