アイルランド生まれの競走馬トニービン。
現役時代に凱旋門賞を制し、引退後は日本で種牡馬としてダービー馬ウイニングチケットやジャングルポケット、牝馬二冠のベガ、オークスと天皇賞(秋)を制したエアグルーヴを出すなど大成功を収めた事で知られますが、残念ながらその父系は既に途絶えつつあります。
ではトニービンの血の影響力は現在の競馬で存在感を失ってしまったのか?というと、そんなことはありません。
ルーラーシップやドゥラメンテ、ハーツクライといった母方にトニービンの血を引く種牡馬の成功で、令和になってもトニービンの血は存在感を示しています。
きょうのきさらぎ賞を制したフリームファクシもトニービンの血を引きますし、昨年天皇賞(秋)と有馬記念を制して年度代表馬に選ばれたイクイノックスも母母の父がトニービンです。
トニービンが子孫に強く伝える要素は主に大きく2つあって、
1.父父Kalamounの持つNasrullah=Rivazの3×3の全きょうだいクロスを継続再度クロスすることでNasrullah=Rivazの5・5×4クロスのもたらすスピードと柔軟性のある体質
2.自身が5×3・5で持つHyperionの血によるスピードの持続力と、古馬になってからの成長力
この2つの要素が組み合わさり、「東京競馬場のような、長い直線のコースを最高速で長く走れる」「2・3歳戦だけでなく、古馬になってからも衰えない息の長い活躍をする」といった特徴を子孫に強く伝える、それがトニービンの血なのです。
トニービンの母の父HornbeamはHyperion系の種牡馬ですが、同じくHornbeamの血を持つキングカメハメハ系種牡馬とトニービンの相性は良く、キングカメハメハとトニービンの血を併せ持つ馬には先述のルーラーシップやドゥラメンテを筆頭に、代を経て父ロードカナロア(父キングカメハメハ)×ハーツクライ(母の父トニービン)といった組み合わせからもケイデンスコールやトロワゼトワル、ヴァルディゼールといった重賞勝ち馬が出ています。
配合診断のお仕事を頂いた際にロードカナロア牝馬にはシュヴァルグランやスワーヴリチャードといったハーツクライ系の種馬を提案することが多いのですが、これはHornbeamクロスを狙ってのものです。
これは師匠である望田潤さんの受け売りなのですが、今年初年度産駒がデビューする新種牡馬ニューイヤーズデイは父の母Helen Streetとトニービンの相性が良いらしく、個人的に母方にトニービンの血を引くニューイヤーズデイ産駒のデビューを今から楽しみにしているところです。
とりとめのない話になってしまいましたが、最近競馬を見ていてトニービンの存在感を感じる事が多かったので久々に記事を一本書いてみました。