14 「 アメリカの田舎の葬式」
カリフォニア・モントレーの南部、山奥の小さな村。
村を東西の貫くただ1本のハイウェイ、ホロン通りに添いに、
1軒ぽつんと、寂しそうに立つ屋根のとんがった小さな教会。
木造の古い建物である。入口のドアも手製の古びたドアである。
中に入ると古いアメリカ杉(レッドウッドゥ)の臭い匂いが
立ち込めている。日本の真新しいヒノキのいい匂いとはえらい
違いである。壁も天井も床もレッドウッドゥ特有の古い赤茶色に
包まれた寂しげな空間。中央にある牧師の説教台も古めかしく、
小さい、板を打ちつけた釘の頭が少し飛び出て見える。
元大工のフリムン徳さんには建物の材料や釘の種類まで気になる。
大工をすでにやめて7年もなるのに、木造物をみる目と別嬪さんを
見る目は死ぬまで衰えれそうにない。後の1段上がったところの
テーブルに小さな額縁に収まった写真が飾ってある。
その両脇にそれぞれ3本のひまわりの花を挿した小さな瓶と
3本のろうそく。壁のすき間から入ってくる風でろうそくの
炎が小さく揺れている。ただそれだけである。
遺骨も遺体もない。これがフリムン徳さんの親友バブ(アメリカ人)の
葬式の祭壇である。
バブが9月19日に死んだ。行年82歳。妻のアルビラが死んでから
丸2年になる。アルビラに呼ばれたのだろうか。
死人は3年以内に身内の誰かを呼ぶと日本で聞いたことがある。
バブはアルビラの死後、娘の住むモンターナ州に家を買い、
娘夫婦の世話になっていた。
葬式は友人の多いカリフォルニア・ラックウッドゥに戻って、
生前メンバーであったこの教会でやることになった。
モンターナからは車で2日間の行程である。
続く