カウンターにひょこひょこと、またファラン(西欧人)が来た。

最近、やたらとファランが多い。

で、うちのスタッフ皆海外へ個人旅行してるのに、ファランが来るととりあえず私に視線を向ける。

決して私は英語が得意なわけでもないし、フランス語やドイツ語やスペイン語がペラペラな訳でも

ないんだ。

なのに、他のスタッフは、こんなときだけ「タイの人、、、外人さん来たからよろしく!」とその場を

立ち去る。


私はありったけの知りうる単語をつなぎ合わせ、話しかけるのだ、まずは「きゃんないへるぷゆぅー?」

ここまではスムーズなのだが、ここからが勝負だ。こちらから必要な内容を順に聞く、相手に

リードをされては決していけないのだ。

相手の言うことを理解するより、必要最低限で済むようにこちらからリードする。


大概のファランは、とりあえず日本語が話せないし、この場を離れたらどうしていいのか

分からないから、一生懸命まずは聞き取ろうとして順に理解し合っていくものなのだ。


だが、今回は違った、このイギリス人おやじ。

いきなりペラペラ勝手に話し出すのだ、しかもストリクトな本場のEnglishで。

困る、私はどちらかというと、American、しかもできれば西よりの、、、ということで

仕方なく私は一息つくまでこのおやじの話すことを聞いた。


で、理解した内容で答えだしたのだが、いつもは通じる会話が通じない。

度々とめられ、しかめつらをされ、、挙句の果てに発音指導がはじまった。

いやぁー、お金を払わずに発音をご教授いただけるのは大変ありがたい。

だが、ここは後ろで客が番号札とってまだかまだかと待っている。


ここで私は早口でできる限り必要なことだけを一気に話す。

ようやく、「おっ、わかっているではないか?」と思ったのか、単に「諦めた」のか定かでは

ないが、こちらのペースに巻き込んだ。


やったー!と思うもつかぬ間、最後に領収書の名義を確認したら「れしぃーと」が通じないのである。

いや、通じているのだが、何回も同じ単語を言わされ「あっ、レシートね」と軽く発音訂正を

入れた上であきらめてもらう。


イラァァァッ!!!とさせられたのだが、これもサービス業であり、私の発音が

ネイティブとは違ってかなりまずいのは重々承知しているので「なおしてくれてありがとう!」と

皮肉を言いながら会計へと向かう。


チケットなどは、あっ、ホテルもついでに勝手に紹介して予約させたのでクーポンもだが、

次の日取りに来ることになった。


翌朝、来店。今店では新春キャンペーンで抽選をしている。で、くじを引いてもらったら

残念賞。「あーざんねん!」と心で皮肉に笑みを浮かべていたら、それでもおやじは

大喜びだった。中身も見てないのに。。。


いきなり聞く、「君は明日も出勤してるか?」「はい、いますよー」って答えたら、

「そっか、わかった、今日はずっといるか?」と尋ねる。また「はい、いますよー」って

答えたら「そっか、わかった」といって店の外にでるまで何度も何度も「さんきゅうさんきゅう」と

言い続けて出て行った。


おぉー、やっと授業が終わった。さぁ、次のお客様。。。

としていると、その日の夕刻、電話中の私の前にまたおやじがにこやかに登場した。

な・なんだぁー???と思ってると、受話器を抱えている私に話しかけてくる。

で、袋を出された、FUJI FILMの紙袋だ。

受話器を耳にあてたまま、正確には首と肩に挟みながらPCで予約の手配をかけながら

ちょっとだけ受話器口に手をあてて「ふぁっと?」と目で合図をすると、話がとまらなくなった。

私は聖徳太子ではないので、一旦受話器のお客様を保留にして改めて聞く、

「あのぉー、電話中なのですが、なんでしょうか。。。」といいながら、差し出された

袋をあける。


そしたら、オリジナル・フォトブックが出てきた。おやじが長期滞在していた中国やら

台湾やら日本やらの寺院や風景をとった写真のデスク用カレンダー。


電話を保留したままなので、「I love it ♪」と何度も呟きながらにっこり笑ったら

どうも満足したようでプレゼントだという。この写真は悔しいけど素敵なものだった。


おやじは、じゃぁ、またねぇー!っと去って行った。「またねぇー!?」ってどういうこと?

困るのだ、また英語の授業がはじまると、、、。

でも、カレンダーは本当に可愛らしく、それでも保留をとりあげ「お待たせいたしましたー!」と。


落ち着いてからカレンダーを見直すと、おやじのサインが入っている。

うぅ、うん!? このサイン見たことあるぞぉー!

本屋で私が気に入った壁掛けカレンダーのフォトグラファーじゃないか!

よくよく予約の名前を見てみると、おぉー、その人のイニシャルじゃないか。


びっくらこいた、この件は。

おっ、「またねー!」と言ったよな、確か。

絶対来いよ、私もアマチュア・フォトグラファーの端くれだ。


次回会ったら、英語の発音ではなく、写真について語り合おうじゃないか!


はい、その前に言い直しにならないように、英国言語の発音を勉強いたしておきますわっ♪