師匠からお電話をいただいた。映画『一献の系譜』の感想を伝えて下さった。
「あなたしか作れない映画だと思って、敵わないなと思いました。能登の人たちとはもう親戚付き合いみたいでしょ?あんな大勢をよく撮ってまとめましたね。これだけの人間関係を作って映画を作るのは大変だから、あなたの人付き合いがよく分かる作品でしたよ。毎回思うけど、あなたはすごいわね。映画を作る動機の部分がものすごい。あなたみたいな人、他にあんまりいないから。これからも健康であなたらしいものを、と言わなくても、あなたらしくなるんでしょうけど、元気でやって下さい」
と。
御年90歳。今は施設で過ごしていらっしゃるとのことで、ご本人の意思により、面会はできない。しかも、しばらく体力が無くて観ることができなかったらしい。本編103分は長いから分断しながらご覧になったそうだが、「しっかり観ました」と仰った。
自分の作品を客観視することは難しい。だから、大先輩にこうして評価いただけたのは、恥ずかしく、恐縮し、そしてとても嬉しいことだ。
助手時代は独り立ちの手前で、もどかしかったけれど、他に代え難い経験をさせていただいた。何より業界最高齢の方の元にいたことで、他の制作会社では味わえない「ものの見方」を教わることができた。
これも、私なりの系譜なのだ。
映画『一献の系譜』は、横浜「シネマ・ジャック&ベティ」にて上映中。(3月4日まで!)