天龍川石と笹啼き | 水石 一刻亮のちょっとしたコダワリ

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水石の深淵なる美を見つめて

三寒四温ですね、春近し・・・ですかね。

しかしこの言葉、本来は冬に使う言葉で春先の気候の表現では無かったそうですね、

現在は天気予報でも春先にかけての今時分使われていると思いますが・・・

言葉のルーツを探ったり、季語を探ったりすることは楽しいですね。

 

良い掛軸が手に入りましたので、床飾りを変えてみます。

 

主石は天竜川石です。

おそらくは父、一刻爺の自採石ですが、もう何年も庭に放置してある石です。

 

御覧の通り、底も天然の初心石です。

養石も十分なのですが乾いた状態ですと白っぽいのが難点ですね。

 

設えてみました。

 

掛け軸は『鶯図』です。

 

この輪郭を描かずに一発勝負の筆さばきで表現する日本画の技術は素晴らしいと思います。

迷いが有っては描けないですよね・・・

 

クマザサが描かれています。

ウグイスと言えばウメが付き物ですが、ここで笹が描かれていると言う事は

冬の掛軸と言う事になります。

『ホーホケキョ』と未だ鳴かぬうちの『チャッ、チャッ』という鳴き声、それが『笹啼き』です。

 

さゝ啼や小藪の隅にさす日影(正岡子規)

 

作者は五井金水です。共箱に入っています。

 

主石は近景の岩山と観ました。

水盤は常滑の鴻陽作、『均釉切立入足短冊水盤』です。

卓は恐らくカリン材かなぁ・・・の平卓です。ウレタン仕上げだと思いますが気兼ねなく使いやすいです。

 

横に長い石で、前抱えになっていますので、余白を考えて短冊形水盤を使用しました。

右に伸びた山裾部分がよくも割れずに残ったものですねぇ

 

静岡県内の天龍川下流域では暫し見られる石質ですが、中々景のある石は見つけられません。

硬い石質なんですかね・・・、地層を思わせるような褶曲模様が面白いです。

 

中々にして、この伸びの部分が激流に揉まれて無くなってしまうのですよ。

ですから、自然石にして長い石・薄い石・細い石・痩せた石は希少なのです。

 

 

 

水を打ってみました。

 

サビも載っていまして、色も黒が冴えてきます。

 

春近い山里の風景を想像して頂けたでしょうか♪♪♪