時を巻き戻している

病院を出たわたしと息子は
久しぶりに実家に帰ってみる事にした。

バスで行くつもりだったが
札幌市でも田舎の方なので
次のバスまで1時間近く待たなければ来ない。

今はそんな時間も
無駄には出来ないと思い
またタクシーに乗った。

実家に付くとまず目についたのが
荒れた庭だった。

父さんが建てて大事にしていた
藤棚が腐って倒れている

悲しくなった。

玄関に入るとすぐに
ツーンとくるアンモニア臭がした。

臭くて目にしみて痛かった。

猫のおしっこの臭いだった

しばらく行かない間に産まれたり
拾ったりして猫が14匹になっていた!

多頭飼育崩壊をしかけていた。
トイレの掃除が追いついていなかった。

それとタバコの臭いもキツかった!
わたしが実家から遠ざかる
最大の理由が母の吸うタバコだった。

実家は築30年くらいと古いが
2階建ての大きめな一軒家なのだが
玄関も部屋の中もゴミが積み上がり
人ひとり通るのがやっとな感じだった。

それだけじゃなく部屋の中は
ハエが何百匹も飛びまわっていた。

どこかで
蛆がわいているんじゃないかと
思うくらいの数だった。


何があってこうなったのか


原因は分かりきっていた。


わたしが乳がんになったことだ。


母の脆いメンタルが
崩壊したのは簡単に想像ついた。


心配でストレスで
バカみたいにタバコを吸っていたんだろう。
家事も掃除も手につかないくらいに。


バカだな~と思った。
本当にバカな母親だ。
哀れだった。


わたしはこの通り
元通りに元気になったのに。


病気になる前に喧嘩をしたとはいえ
そんなのはいつものこと。

同じ市内にいて家も知ってて
1度もわたしの様子も息子の様子も
見に来なかったじゃないか。

わたしが乳がんになったと
連絡しても、手術の日まで返信も寄越さなかったじゃないか。

返信がきたメールの最後の言葉は
あなたの大嫌いな母より
と書いてあった。


母が哀れに思うと同じくらい
責任も感じてきた。
タバコが増えて膵臓がんになったか。


この家を片付けてきれいにするのは
自分の使命にも思えた。

家の中はどこもかしこも汚かったが
わたしはとりあえず
母のベット周りから
掃除をすることにした。

兄妹には母さんが戻ってきた時に
安全に過ごせるように
家の中を片付けるよ!といった。

妹は戻ってこられるかな
と言ったが

大丈夫!
一時帰宅でもなんでも
母さんは必ず帰って来るから
その時に寝るベットと
トイレまで安全に歩けないと困るでしょ?
と言った。

うん。
分かった。
と先に妹がなり

兄と息子にも手伝わせた。

ベット周りを片付けるだけで
マジで半日かかった!!!!!

この日から
休みの日は母の面会と
実家の大掃除に通う日が続いた。

ちょうどGWだったのは幸いだった。

面会も沢山行けたし。

それにしても
わたしはとんでもない
嘘つきだった。

母が自宅療養に帰って来る
なんて思ってもないのに。


近いうちに
帰ってくるとは思っていたけれど。

だから、急いで片付けないと
いけないと思った。

兄妹もわたしも
母さんのために何かをしていないと
いられない気持ちでもあった。

わたしはカツラを振り乱しながら
汗だくになって働いた!

つづく