ルドビコ★バンク・バン 演出メモ2 | IKKANのオフィシャルブログ「IKKANのKAIJIN MANIA」Powered by Ameba

ルドビコ★バンク・バン 演出メモ2

ルドビコ★バンク・バン・レッスン

演出として与えられた稽古期間は2週間。
10日まで舞台の本番があるTakuya。
11日に稽古合流し台本を持ちながら稽古。

最初の一週間は、俺が演技プランを伝え、役者がセリフとプランを覚えていく稽古になる。
最初はとにかくこの芝居の、見せたい方向性を伝えていく。
ここが面白い、ここが感動。この役はこういうバックボーンがあって、ここを成長させていく物語である。と。

なにせ短い稽古期間。
探っている時間はない。

俺は演出家としては、演技指導がメチャメチャ細かいタイプなので、役者に俺のプランを覚えて貰うという方針。だから録音機を持ってきてもいいし、ビデオで撮って貰っても構わないと伝えた。プロの役者に失礼な話だが、俺の理想を全て体現しようと思ったら、本当に細かくてその場ではきっと覚えられないと思う。それくらい細かい。

演出家によっては、役者から出てくる演技を待つために、役者を暗中模索のまま放置するタイプの人もいる。でも俺はそれが好きじゃない。
まず俺が目指す100点を取って貰うために、なんなら全部を演じてみせるくらいに演技プランを示す。

とにかく稽古期間は短い。

こうしてくれああしてくれという、俺の潔癖なまでのアイデアでみんなはきっとパニックになる。
だから最初の一週間は台本を完全に覚えて、口が適当にしていてもセリフが出るくらいまで演技指導をするのはやめようと思った。

最初に演技プランを伝え、セリフを覚えて一週間の立ち稽古。
そこでやったダメ出しは、立ち位置のことくらい。
みんながセリフを覚えるまでは細かい演技は付けない。
セリフも覚えていないのに演技を細かく付けると、何から手を付けていいのか分からなくなり、逆に時間がかかる。
稽古始めに伝えた演技プランから大きくハズレさえしなければ、ダメ出しをせずほっておくことにした。

これが短期間稽古のベストだと思う。
旭川の地元劇団の演出をしたときにそれを感じた。
セリフも芝居も完全に入っている状態で、演技プランの変更をがっつり細かくやった。ちゃんとセリフが入っているから、俺のプラン変更稽古にきちんとついてこられる。
GWの旭川の演出のお陰で、短期間でもがっつり作れると思えた。ありがとう地元劇団。

みんながセリフを覚えている最中に、俺は演出プランをまとめる。
音響、照明についてだ。

稽古をしていくなかでやはりどうしてもいれたくなったのはダンス。

「この中でダンス得意な人~」

と言ったら、みんなに戦慄が走った。(笑)

「え?ダンスですか……?」

的な空気が漂う。

Takuyaと加藤良輔だけダンス得意で手を上げたけど、他の6名は。額に縦線が入っている。
あれ?左東君なんてキャラメルボックスで毎度えっちゃん先生の振り付け踊ってるじゃんとか、林修司君なんて、俺は見たことはないけどミュージカル出てるんじゃなかったっけ?

まあ確かに、えっちゃん先生の振り付けは、一世風靡セピアから続く、『踊れない人でも格好良く見える踊り』の流れだから、自信を持ってダンスできますとは言えないかも知れないけど。

20日に振り付け。27日に本番。
2曲くらいなら平気っしょ?

16日にダンスがどれだけ出来るか、短い振り付けしてチェック。
16日に振り付けのmiyuさんに来て貰ってレベルチェック。

以下、16日の時点でその日の俺の採点。

◎Takuya、良輔
○左東、学
△修、
▽將太
×マサ、宮島

(笑)

しかし、振り付けのmiyuさんが頑張ってたくさん稽古に来て貰った。miyuさんはダンサーじゃない子達にたくさん振り付けをしているので、絶対何とかなる。

オープニングとエンディングでは絶対踊りたいし、それがないと俺の演出は完結しない。

「ダンスやるって言ったら、みんなまずい?無理?」

一応みんなの意向を聞いた。
万が一、Takuyaと良輔だけダンスさせて、あとは素人でも出来る振り付けにすることだって、アイデア次第で出来なくもないし。

でもユニゾンで踊らせたい。諦めたくないなあと。

そしたら將太なんて、全然踊り出来ないのに「ソロでもなんでもやります!おみそになんてなりたくないっす!」
マサ君も「顔で踊ります!踊り任せて下さい!絶対何とかします!」

いいねえ。熱いよ。
だったらしごき甲斐もあるってもんだ!
心してかかってくれよ、みんな。と。





さて美術にかける予算が無いのと、美術スタッフがいないので、演出の俺が考えることになる。出ハケを左右にするのか、中央一個にするのか、いやもっとあちこちを入り口にするのか。
音響をどうしようとか、選曲はどうする?効果音は?
そんなこんなで一週間。

そろそろみんな台本を離して芝居が出来るようになってきた。

さあラスト一週間は60Pくらいある台本を、1日10Pずつ進めるという稽古になる。そうすれば5~6日間で芝居が完成。残り1日~2日をダンスの振り付けの日にする。

なので10Pずつ、丁寧に演技指導していく。
仰天するほど細かい演技プラン。身体にしみこむまでじっくりやっていく。前の一週間なんてメじゃないほど細かく止めて、実演込みでじっくりやる。
日頃笑いづくりをしない役者たちに、この笑いの間や、方法論を伝えていくのは毎度しんどい作業だ。
お笑い芸人に伝えると、あーはいはいって感じの事も。口で伝えるだけじゃ、え?どういうことですか?となる。だから実演しなければならない。やってみると、あー!なるほど!それ面白い!と分かってくれる。

俳優養成所時代から感じていた、演出家は演技指導で実演しては役者が育たない。とかいう暗黙の法則がどうにも納得がいかなくて。
いいじゃん、別にやって見せたら。と、いっつも思ってた。
役者の創造力が無くなるとか言うけど、演出家が実演したもの以上の事が役者から出てくればいいんだから、まずはこっちが100点を見せて、役者はそれを1000点にするべきだ。と。

いろんな現場で、もどかしい。
俺もわからなくなると必ず演出家に聞く。
「やってみせてください」
と。
そしたら、演出家から出たモノ以上のことをやってみせてやろうじゃんって気になる。

だから俺は結構やってみせるタチです。
真似してくれ!と。まずいったん完コピしてくれと。

そしてその上で、新しいアイデアを上乗せする。
絶対その方が正義だと思う。

お客さんには最低でも100点のモノを見せる。
そしたら、入場料分のお金を頂いて構わない。
演出家の最低限の責任だと思う。

20点でウロウロしている役者に、「お前から出てくるアイデアを待ってるぞ」的な演出家は、上演を目的とした現場じゃ意味がないと思う。

だからそういうお勉強会は、上演を目的としないワークショップなんかでやるべきだと。だから俺は今ワークショップと、上演のための演技指導の方針を完全に分けている。ワークショップでは、俺から答えを提案せずに結構待つ。

そんなこんなで残りの一週間は頑張ってやった。

しかし、合間合間で事件も起きる。

修ちゃんにこの話を貰った時「稽古期間が少ないけど、出演者のスケジュールどんな感じなの?」と聞いた。
修ちゃん「11日からの稽古、一人もNGがありません!そういう風にみんなのスケジュールを抑えました!」
と言ってたのですが、

NG日があちこちにあって、代役立てなきゃ行けなかったり。
ひぃいぃぃってなりました。
代役立てたら、丁寧に演技付けても本人じゃねえし(汗)

その修ちゃんがドラマの撮影のため、最後の通し稽古が出来ない。みたいな事件も起きたり、結構スケジュールが泣きそうになりました。
た…助けて…!間にあわねえ!
しかし、せっかくのテレビドラマですよ、修ちゃん撮影に行ってもらいたいし、あちこちのスケジュールを日々組み替えて、ボロボロになりながら芝居の稽古と。踊れないダンスの稽古。

きっと見に来たみなさんが思っている以上に大変な稽古場でした。(笑)

あ、我ながらみんなに迷惑かけたなと思っているのは。
ダンスがあるのに、稽古場に鏡がないので、最後の通し稽古で初めて鏡のある稽古場で練習をしたと言うことです。
最後の通し稽古はキャラメルボックスさんの稽古場を使わせて貰ったのですが、そこで初めてマサ君が「俺……一人だけ動きが違う……!!!!」と、orzしてました。(笑)

ごめんね。
2曲も突然入れるとか言って。

でも絶対、OPとEDでダンス入れるのは、よい演出だと思ったんだ。

俺は映画とかドラマみたいにするのが好きで、
スタートでドラマのように人物紹介をしようと。
エンディングは映画のようにしようと。

ダンス演出と映像演出は、修ちゃんに相談しないで決めてしまい、申し訳ないなと思いつつ。でも絶対素敵にする自信があったからやってしまいました。許容してくれてありがとう。プロデューサーの修ちゃん。




あと1週間は欲しかったなーと思いつつも。
でも絶対入場料分の損はさせないと、プロの仕事の責任を果たしたつもりです。が、どうだったんだろう。お客さんの評判は良かったので、自分はこの2週間で作った割には、完成度よい方じゃない?なんて。

もちろんあと1週間あれば、もっともっと理想のバンクバンになったかもしれないけど、欲を言えばキリはないので(笑)。

演出助手で、俺の細かいダメ出しを延々とメモってくれた桜木さやかちゃんサンキュウね。助かりました。




あ、アンケートはとりあえず一番最初に演出家に渡ってくるので、全部見させて頂きました。

「こんなに笑ったのは久しぶりです!」
「こんなに笑ったこと無いです!」
→という、俺の芝居でいつも頂ける、嬉しい感想たくさん!自分が作る物を笑って下さるのは本当に嬉しいです。

「DVD化してください!」
→これ多かったです。another公演は、本公演との差別化のためしないでしょうけど。今後規模が変わればわかんないですが、記録用くらいしかとってないので、今回はしないでしょう。

「バンクバン。男性版、違和感なく楽しめました!」
「女性が入るバージョンが想像つかないです。」
→高橋いさをさんも絶賛してくださった。男性バージョンへの脚色。男だけになることにより、よりいっそうムキになって主役を奪い合う、会社員達の姿がリアルと評判。

「自分もバンクバンやってましたが、プロは凄いです。」
「懐かしくて、セリフ口ずさみながら見てしまいました。」
→演出はいろんな形があっていいと思うので、その都度やっている人間達が全力であればプロもアマも関係ないと思います。バンクバンを演じたことがある人たちがメッチャ居ました。すごいなあ、いさをさんの作品。

「ダンスの曲はなんて曲ですか?」
「DVDが無いなら、サントラ売って下さい」
→GreeeeNの『人』がオープニング。『BeFree』がエンディングです。中野のTSUTAYAで、ランキング上位のHipHopの中で、今回の芝居のテーマにそぐった曲を探し続けて選曲しました。選曲候補にあったのはあとケツメイシです。ケツメイシが好きだったんですが、今回はGreeeeNに出会ったので、そっちに浮気しました。

「私も銀行員ですが、こんな訓練してみたいです」
「銀行員です。以前ライフルで銀行強盗に入られたことありますが、模擬訓練の方が怖いです。」
→銀行員の方々が結構多かったです。

「西条って書いてあるの、西城の間違いじゃないですか?」
→バンクバン上演経験者からいただきました。論創社の戯曲版は『西城』ですが、高橋いさをさんから貰った最新版の台本は『西条』となってましたので、最新版に合わせました。

「最後の背中に映る映像、どうやって出すんですか」
→いやー、見ての通り、プロジェクターからです。現場であわせて文字の位置とか大きさとか変えて工夫しました。

「原作を知らないのですが、さすがIKKANさんの脚色。とっても笑えました。」
→ジュンと柳田を男性に変えた以外はほとんどセリフ、いさをさんの台本通りです。どっちかというと演出の範囲で工夫しました。バンクバン上演経験者なら分かると思いますが、ほぼ台本通りです。
明らかに台本と違うセリフは、『俺が身代わりになろう』のシーンです。原作もキャラクターの顔や個性に合わせたセリフになっていたので、そこだけはさすがに変えさせて貰いました。

「深いテーマは特に無かったみたいですけど、笑いすぎてお腹痛くなりました面白かったです!」
→1回目はそういう楽しみで是非!しかし、何度も見ているとあれ?もしやこれって……!?なんて人間の背景が見えてくるかも。いろんな楽しみ方があって当然です。おふざけおちゃらけ一切無しで作っているので、もう一つのバンクバンの真実の姿に気づいてくれると嬉しいです。

「シリアスなシーンでうっかり泣いてしまいました。」
→うっかり?(笑)いや、それでいいんだと思います。




あと1週間稽古したかった芝居。
なので、初日が開けてからも毎日、本番前に部分部分の稽古をしました。本当は全部稽古したいけど、そういうわけにはいかないので。

初日ももちろん良かったけど、千秋楽はいくつか演出もかわっていた所があったと思います。どっちも見た方はそういう楽しみ方もされたんではないでしょうか?




是非、感想聞かせてくれると嬉しいです。




したっけ!