川沿いの道に、およそ5〜60人の人がわらわらと集まっている光景が見えた。

何の集団かとガイドさんに訊ねると、その川で溺れて亡くなった人の葬式だという。


ベトナムでは家の外で亡くなった人の亡骸は家に帰れない。「死」を連れ帰って他の家族がまた亡くなってしまうから。


だから基本亡くなった現場で葬式をする。


亡くなってしまったら慣れ親しんだ家に帰ることが一切できなくなるので病院でもおちおち死ねない。


ガイドさんのお父上が去年、脳梗塞で亡くなられたそうだ。

それまでお元気だったが倒れて救急車で病院に搬送された。残念ながら手の施しようがないという状況だった。

そこで医者は家族に息のあるうちに自宅に連れて帰るようにと。

人工呼吸器をつけたまま、救急車で自宅へお父様を連れ帰り、自宅で呼吸器を外し3時間後に亡くなられたそうだ。


日本のお医者さんは患者が病院でも自宅に帰っても死なないように努力する。


ベトナムのお医者さんは患者が病院で死なないように努力する。


どちらも患者本人と家族のために頑張ってくれる事に違いはない。


因みにお医者さんの努力も虚しく患者さんが病院でなくなってしまったか場合は、病院に日本で言うと斎場のような施設があるそうだ。