普通のサラリーマン生活を送っていた2007年も終わり



年が明けた2008年、僕は会社をやめた



そして、東京に行くための資金を1年間バイトで貯め



2009年3月、僕は再び上京した



親友の高村は、大学卒業後、そのまま東京で就職し働いていた





この、”僕が再び上京する”という行動が


あんな苦しみを引き起こすとは


このときは思いもしなかったんだ



どのくらい経っていただろう



半年かそれ以上か



あっちゃんの声は変わることなく、僕の気持ちも変わることはなかった





元気?今の仕事はどう?



また何の変哲もない会話をした



僕は何の変哲もない会話が得意だ



モテない男の特徴かもしれない





別に何の進展もない、あるはずがない



ただただ声が聞きたかった



そとは少し冬の気配が漂い始めていた







僕はこの数ヵ月後、会社をやめた



東京でやりたいことがあった



それで成功すればもしかしたらあっちゃんが振り向いてくれるかもしれない



関係ないとはわかっていても、そんな無意味な事を考えたりした



大学を卒業した僕は




地元の田舎に戻り




普通の会社に就職した








東京の生活から




田舎の生活に戻り




これであっちゃんとは一生会うことはないだろうな




やっとあっちゃんをあきらめられるかもしれない




そう思っていた







毎日、会社に行き




朝から夜まで働いた




僕は普通のサラリーマンになった




普通の日々があっという間に過ぎた







就職して数ヶ月が経ったころ




あっちゃんの誕生日が近づいてきた




誕生日、当日




僕は迷ったが




あっちゃんに一通のメールを送った




何の変哲もない




ただの「誕生日おめでとうメール」




「ありがとう、覚えててくれてうれしい」という返信








僕はあっちゃんの声が聞きたくて電話をした




卒業式の夜は




みんなそれぞれの仲間と




大学最後の夜を楽しんだ






あっちゃんと僕のいたグループは別だったので




僕は最後にあっちゃんに会いたくて




あっちゃんと一緒にいる友達に




「今どこにいるの?」




と連絡を取った








僕はあっちゃんのいるグループと合流し




あっちゃんの隣の席に座った







それからの時間




僕はあっちゃんに




一言も話しかけられず




卒業式の夜は




終わった








あっちゃんとの大学生活






最後の時だった


大学生活は




あっという間に過ぎ去った







4年間




僕はあっちゃんだけを見ていた




あっちゃんは僕を見ることはなかった




いや、僕にあっちゃんを振り向かせるだけの力がなかった







卒業式当日




一緒に写真を撮ってもらった




撮る瞬間




会場のあちこちで




「プシュー」という音と共に




キラキラの紙テープが飛び出した




空中からテープが降り注ぐ中




シャッターをきってもらった




あっちゃんは笑顔だった




僕の大好きな




笑顔だった