古い記憶を辿る時

まるで前世の出来事のようだな

と夫が口癖のように言っていた


前世のような

夢でも見てたような

かけがえのない無数の思い出


まるでナイフが突き刺さるように

鋭く、瞬間的に

痛みをともなって


夫と生きた30年近い日々の中の

一コマ一コマが

一日の中で何回も何回も蘇る


そうかと思えば

夫が言っていた事

感じていた事

体験していた事は

こういう事だったのかと

初めて気づく事もある


夫に伝えたい

そして

この感情を分かち合いたい


なのにいないという現実に

打ちのめされる瞬間も

頻繁に訪れる


そして今

夫がいなくなってから

夫が好きだった

SF映画のように

世界は様変わりした


夫が生きていたら

今頃二人でどんな話をしていただろう


確実に言えるのは

夫のマスク姿はあり得ないって事・笑


私は漸くノーマスクになったけど


例えばそんな時


俺の言った通りだろうって

漸くわかった?

って必ず言ってたな


無邪気で

無頓着で

でも実は

繊細で

最後まで夢とロマンを

追い求めて走り続けて

私の願いを何でも叶えてくれた人だった

私が誰より愛した人だった

私を誰より愛してくれた人だった


そのかけがえのない人を失うという

あり得ないほどの絶望の中

それでも少しずつ

自分を立て直して

どうにか新しい世界を

歩き始めてはいるけれど


私の中心にはいつも夫がいる


死ぬまでそれは変わらない


…じゃなくて

また来世があるから

死んでも変わらないんだよって


言ってるね