施術が終わるのは仰向けの姿勢で。

殆どは、頭の施術で終わります。

百会から、または側頭部から、こめかみから、

混ざった絵の具が分離されるのを待つように、

ゆっくりゆっくり手を(体を)離して、

沈殿したら気を切って、目隠しを取って、声をかけます。

すると、皆さん静かに目をあけて、それからもう一度つむって、

そして頭を起こしているときには、なかなか見せない表情で笑うのです。

笑う、というのはちょっと声をあげた状態を指すようだし、

微笑む、よりももっと素直で大きく口の両端が上がります。

にっこりする、と言う言葉が一番ぴったりかもしれませんが、

「にこっ」とするより、もっとあどけなくて、

大人になってからはあまり人に見せない、極めて個人的な表情のように思えます。

朝の子供の顔です。

そう、笑おうという意思のもとの笑顔ではない、もっとずっと、筋肉のゆるみからくるような笑顔なのです。

終わりましたよ、という意味合いのお声かけをした後、

お客様が目を開けて、また目を閉じて、この表情をしたとき、

ああ、良かったな、と思いながら、私も同じ顔で笑います。

今日も初対面の方の、深い、あどけない笑顔を見て、

私も笑いました

また思い出してもらえますように。

おやすみなさい。