口にした男達は何やら談笑を始めた。たかだか酒の一杯とカラスミである、何がそんなに楽しいのか分からない。ただ男達の顔には、迷いのない笑顔が浮かんでいた。(まるで希望しか見えていないようだな)、そんなことを思うと俺は、自分の中から湧き上がる何か得体の知れないものを感じていた。
白いコートを着た女が一人で入店してきた。
「いらっしゃいませ」
この街では、女が一人で昼間から酒を飲むことも、なんら珍しい光景ではない。
「荷物ここに置いてもいいですか?」
女が空いてる椅子を指しながら聞いてきた。
「混んでこなければいいですよ」
二人の男は相変わらず笑って話を続けている。しかも今度は、どうやら俺を見て笑っているようだ。
何か不自然な仕草があったのだろうか、いやそんなはずはない。
完璧に振舞っている自負が俺にはあった。