ネタバレ注意。
主人公の名前は「かな」です。
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政宗から受け取った着物をきちんと着つけてもらってすぐのこと。
遣いで出ていたらしい政宗の家臣の方たちが、本能寺へと帰ってきた。
与次郎「かな様…っ!本当に、戻っていらっしゃったんですね……!」
政宗の家臣「お元気そうでなにより……!またお顔が見られて、本当に嬉しいです……っ」
「お久しぶりです!みんなも、元気そうでよかった!」
(懐かしいな……みんな、全然変わってない)
中には、一年前に毒で倒れ、看病をした記憶のある顔も幾人かいた。
涙ぐんで歓迎してくれる家臣までいて、再会の喜びに胸がいっぱいになる。
政宗「だから、帰ってくるって言っただろ?」
政宗の家臣「本能寺に泊まり込むとおっしゃった時は、何事かと思いましたけどね」
政宗「かなのためだって言ったら、お前らも反対しなかったじゃねえか」
政宗の家臣1「そんなの当然じゃないですか!俺達がどれだけかな様にお世話になったと思ってるんです?」
政宗の家臣2「そうですよ、政宗様だけがかな様を大事にしてると思ったら大間違いです」
与次郎「我々も、かな様のことが心配だったんですよ」
政宗「あーわかった。わかったからそう熱くなるなよ」
「本当に、ご心配おかけしました」
与次郎「……改めまして、お帰りなさいかな様。御館様ともども、お待ち申し上げておりました」
政宗「まあ、これからも仲良くしてやってくれ、かな。こいつらとも、長い付き合いになるからな」
「……うん」
何気ない政宗の言葉に、これからもずっと一緒にいられる実感が湧いて、
少しはにかみながら頷く。
与次郎「あ……ようやく上がりましたね」
話していると、不意に近くから空高く立ち上る煙が目に留まった。
「あれは、狼煙……?」
政宗「ああ。お前のこと心配してる奴らにも、知らせておこうと思ってな」
「心配してる奴……?」
——本能寺近辺で狼煙が上がった、数刻後、安土城、天守では……
秀吉「信長様、先ほど京都方面より、狼煙が上がったとの報告が」
三成「恐らく、政宗様からの合図かと」
家臣から報告を受けた秀吉と三成が、信長の元へ参上していた。
信長「……と、いうことは政宗の言うとおり、何の断りもなく消えたかなが本当に戻ってきたか」
おかしげに唇を歪め、信長が窓の外へ視線を向ける。
三成「はい、おそらくは」
秀吉「しかし、一年も行方知れずで、かなの身に何事もなかったかどうか……」
三成「秀吉様は、かな様が本当に心配なんですね」
秀吉「危なっかしくて見ていられないってだけだ」
三成「しかし、かな様は本当に五百年後の日ノ本へ行って、また戻ってきたのでしょうか……?」
信長「そのことの真偽は、さほど重要ではない。五百年後の人間だろうと、そうでなかろうと、あの女の言動は珍妙で面白い。使者を遣わし、青葉城へ行く前に安土へ寄っていけと政宗に伝えろ。顔を見せぬようなら、無理やりにでも連れ戻すともな」
光秀「……だ、そうだ。よかったな、お前もちょうど安土へ滞在していて。またかなに会えるかもしれんぞ」
家康「どうして、いちいち俺に報告しに来るんですか」
家康の元を訪れた光秀は、先ほど聞いた、狼煙の話を伝えた。
読んでいた書物から顔を上げて、嫌そうに家康が眉をしかめる。
光秀「おや。お前なら、泣いて喜ぶかと思ったんだが。政宗が本能寺で火事に巻き込まれて、おまけにかなが行方知れずと聞いて、相当に取り乱していたように見えたからな、お前」
家康「……気のせいじゃないですか」
光秀「そうだったか?」
家康の本心を見透かすように片眉を上げて、光秀が笑う。
光秀「俺は嬉しいぞ、またかなの脅えた顔が見られると思うと」
愉しげに口元を緩める光秀を、家康が横目で睨んだ。
家康「あんたの趣味の話には興味ありません。読書に集中できないので、もう出て行ってください」
光秀「わかったわかった。邪魔したな」
家康は追い立てるようにして光秀を締め出すと、
どこか嬉しそうなため息をこぼして、再び書物に目を落とした。
家康「…………無事だったのか。よかった」
本能寺の住職に挨拶をして、荷造りを済ませ、狼煙を上げた翌々日には、
私達は北へ向けて、馬を駆っていた。
「……奥州に向かう前に、安土に寄っていく?」
政宗「ああ。どうせそろそろ、信長様からの遣いもやってくる頃だろ。せっかくだ、こっちから出向いてやる」
道中、広々とした花畑で休憩をとっていると、政宗がそんな提案をした。
(久しぶりに、みんなに会えるんだ……)
「……でも、平気かな?無断でいなくなった私が、突然帰ったりして……」
政宗「大丈夫だ。お前が姿を消したのが、故意じゃないことは俺から話してある。無事な姿を見せて、安心させてやらないと、あいつら奥州まで追いかけて来るぞ」
草の上に腰を下ろし、政宗はのんびりと晴れ渡った空を仰いでいる。
政宗「余計な心配してないで、お前も休め。……ほら、今日は一段と空が青いぞ」
「……ほんとだ、いい天気」
政宗にならって、草むらに座り込むと、手のひらが重なった。
(まあ、なんとかなるか……五百年越しの遠距離恋愛でさえ、なんとかなったんだし)
政宗がそばにいるだかえで、些細な心配も消え去ってしまうくらい、胸が幸せに満ちあふれた。
少し離れた場所には河原もあり、馬に水をやる家臣の人たちの姿が見える。
「この花畑って……もしかして、佐助くんを見送った時に、野営したところ?」
政宗「ああ。懐かしいな」
(どうりで、なんとなく見覚えがあると思った)
咲いている花が違っても、辺りをただよう爽やかで甘い香りは変わらない。
政宗「……もう、一年も前なのか」
隣で、政宗も懐かしそうに呟いた。
優しげなその声が、あの夜聞いた言葉を思い出させてくれる。
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政宗「俺の死に場所はお前の隣。それも、お前を守って守って守り抜いてからだ。それまで死ねない……お前のせいで、俺は死に場所も選べなくなったってわけだな」
「私のせい……?」
政宗「お前が俺を好きにさせたせい」
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「政宗……」
政宗「ん……?」
「私ね……」
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政宗「はっきり言っておくが俺は伊達家当主として、家臣団の将として、それが必要とあればたとえお前だとしても——殺す。この乱世で、それぞれが強い信念を持って生きているなら、誰かを殺すことも、自分が死ぬことも、当然のことだ」
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使命のためにどんな犠牲も払えると言っていた政宗と、
私のために死ねないと言った政宗は、きっとそんなに変わっていない。
(きっと政宗は……使命を果たすことも諦めないし、私と一緒に生きることも、諦めない。どっちも貫く覚悟を、してくれた。だから私も、何があっても諦めない)
「私、出来る限り長生きしようと思う」
政宗「……どうした突然?」
「政宗の隣で、できるだけ長生きして、死ぬ時まで笑ってる」
決意を込めて微笑みかけると、政宗も微笑みを返してくれた。
政宗「……なら俺も長生きしないとな」
政宗には私の考えていることも、きっとお見通しなんだろう。
政宗「それにしても……お前と出逢ってから、いろいろあったな」
政宗が両手を組んで伸びをする。
「そうだね。平穏とはほど遠かったね」
政宗「ああ、ほんとにな」
「出会ったばかりのころ、突然、刀を突きつけられたこともあったっけ」
政宗「そんなことあったか?」
「ええっ?忘れちゃったの?」
政宗「嘘。ちゃんと覚えてる」
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政宗「お前に、聞きたいことがある。お前、五百年後の日ノ本から来たらしいが……本当か?」
「はい、そうですけど……?」
政宗「そうか。歓迎するぞ、かな」
「え……?」
政宗「しばらくは、俺も退屈しなくて済みそうだ」
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(あの時から今まで……いっぱい傷ついたり、傷つけたりしたけど)
-選択肢-
大変だたけど… (4+2)
全部、楽しかった ◎
後悔がひとつもない (2+4)
「……今思い返すと、全部、楽しかったって思えるから、不思議だな」
政宗「まあ、たいていの大変なことなんて、そんなもんだろ。過ぎてみれば全部、楽しかったって思える」
「うん、そうだね」
(私がそう思えるようになったのは、きっと……政宗のおかげだよ)
いつも前を向いて、笑って突き進む姿が、
どんな時でも私に力をくれた。
政宗「かな」
「ん……?」
呼ばれて隣を振り返ると、政宗の愛おしげな眼差しと視線がぶつかった。
政宗「お前に出逢えてよかった」
「……っ、どうしたの、急に?」
真っ直ぐに見つめられて、甘くささやかれると、
相変わらず、恋したばかりの頃のように、胸がときめく。
政宗「お前といると、一生退屈しそうにないな、と思って。湖に落ちたり、肩撃たれたり、炎に巻かれたり……俺の色んな初体験をことごとく奪っていったからな、お前は」
「うっ……」
意地悪く微笑まれて、色んな記憶が脳裏をよぎる。
「た……たびたびご迷惑をお掛けして、すみません」
政宗「謝るなよ。感謝してるんだ。水だろうが、火だろうが、銃弾だろうが、お前のためならいつでも受けて立ってやる」
(政宗……)
急に真剣さを増した声に、胸がとくんと高鳴った。
政宗「人生、そのくらい刺激的じゃないと、つまらないだろ?」
そう言って、政宗は楽しげに笑って見せる。
(こういう、どんなことも笑顔に変えちゃう、強いとこ、本当に……)
「かっこいいなあ……」
政宗「何だ、惚れなおしたか」
「ううん……惚れなおしてない。ずーっと、大好きだからますます、大好きになっただけ」
政宗「……っ、……ばか、お前が俺を口説くなよ。そういうのは、俺の役目だろ」
むに、と頬を摘まれて、思わず笑ってしまう。
(照れる政宗も、相変わらず可愛い)
「政宗と一緒なら、私も一生笑って暮らせそう」
政宗「……当然だろ」
「わっ……!」
政宗が、ぐいっと私の腕を引いた。
ふわっと身体が浮かんで、腕の中に抱きかかえられる。
政宗「あーあ。とうとう俺に捕まっちまったな。自分から飛び込んできたんだ、もう二度と手放してやらねえからな。……その代わり、俺が、お前を絶対に幸せにしてやる。約束だ。」
政宗は愛おしそうに眼を細めて、私の顔を覗き込む。
政宗「俺のそばにいて、不幸になんてなれると思うなよ」
「ふふ……なに、その自信」
いつも通りの偉そうな言い草が愛おしくて、笑みがこぼれた。
政宗の肩に腕を回すと、ぐっと顔が近づく。
政宗「お前と出逢ってはじめて、いろんな感情を知った。理解できなくて苦しいとか、何を捨てても守りたいとか、ただお前が笑ってるだけで幸せだとか、いつまでも一緒にいたいとか」
「……うん」
言葉にされた政宗の想いと同じものが、自分の胸にもあって、
嬉しくて、なんだかくすぐったい。
政宗「俺の一生はもう、お前のだ」
「いいの?もう、返せないよ?」
政宗「その代わり、お前の一生を俺がもらう」
悪戯をしかける前の子どもみたいな顔で、政宗が覗き込んでくる。
かすかに鋭さを増す視線が、鼓動を高鳴らせた。
「どうしようかな」
意地悪で囁いてみせると、見透かすように政宗が笑う。
政宗「諦めろ、もう遅い。お前の一生、俺がもらった」
囁くと同時に、政宗が私の唇に噛み付いた。
これ以上ないくらいの幸せに、くらくらとめまいがする。
(……どんな時も、そばにいるよ。私の幸せは、政宗と一緒じゃないと、ありえないから)
出会ったばかりの頃から、幾度となく触れ合わせた唇を重ねる。
花の上に落ちたふたりの影は、いつまでも、ひとつに融け合っていた。
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遅ればせながら、政宗様お誕生日おめでとうございます![]()
Eテレで伊達政宗に学ぶカッコイイ男、みたいな特集やってたので観ちゃいました。
イケ戦がかっこいいのに実物もかっこよかったみたいで
ますます政宗が好きになりました…![]()
むっとしてるけど顔赤い絵がすげえ好きでした。可愛い可愛いして怒らせたい…(?)