売れないのだろう。
 
 
 
 もち米が大量に、半額になって店頭に並んでいた。
 
 
 
今日は子供の日。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  子供のころ、どんな目でこれを見上げていたか?
 
 
 
 
鯉のぼりって裕福な家庭の、シンボルなんだよなぁ。
 
 
 
 
鯉など上げられなくても、
親子4人でラーメンを分け合って、
 
 
必死で働いて育ててくれた
母を
 
見送ろうとしている1人の人に
ぼくは今朝、とても失礼なことを言ってしまった。
 
 
 
 
 
言い訳じゃないけど僕は、
 
口下手だからこそ文章なんぞ書いている。
 
 
 
今日もどこかの金持ちの鱗が僕を笑っている
 
 
その境遇は、その人の昔と僕の今とで共通だろうに。
 
 
 
僕はあと10日も生きられない。
 
 
 
 
 
 
 
 
他の米だったら、まずこんな値段で買えまい、と、
 
 
 
僕は1つ、手に取りレジへと向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いつか、ちゃんとね。
 
 
 
   いつかちゃんと、平たくない、まあるい鯉をさわりに行こうね。
 
 
 
 
 
 
  画用紙からはみ出したまっ青な鯉の目を、
 
塗りつぶしながら僕は母に頷いた。