経営学の大家P.F.ドラッガーの論文を
本人公認の上でテーマ別に編者がまとめて本にするというシリーズの
「技術」編である。


P.F.ドラッカー, 上田 惇生
テクノロジストの条件

技術とは何か、どういうものか、
そしてその技術をマネジメントすることがいかに大切か、
技術をマネジメントしていくにはどのようなポイントを抑えればよいか、
そんなことを軸にさまざまな視点から
「技術」と「ビジネス」の関係、
「ひらめき」と「体系化」の関係、
などいろいろな関係について書かれている。



ドラッガー氏は60年以上論文を書き続けているので
抜粋して編集されている本書の時代背景はリアルタイムではないのだけれど、
今日においても応用の利く金言ばかりである。


技術者は研究に没頭し、
または自分の技術を磨くことにするあまり、
みずからの研究の成果、自分や同業者の技術を
マネジメントすることをせず、
得てして技術者のマネジメントをするのは
技術者ではない財務や経理の人間という状態になることが多い。


技術を知らない人間が技術のマネジメントをすること、
技術しか知らずマネジメントスキルのないものがマネジメントをすること、
どちらも一長一短である。



本書は
非技術者に技術の、
技術者にマネジメントの
重要性を知らしめる一冊となっている。


ある種のHow to物的に、
技術者の心がわからない非技術者に
非技術者の心がわからない技術者に
よいかもしれない。



本書の中には
イノベーション=革新
を起こすことについても触れられている。
技術の醍醐味はイノベーションであると。


「イノベーションとは」から始まり、
「イノベーションを起こす手順」なんていう章まであり、
「イノベーションを模索するチームは
既存の業務を行う部署とは分けるべきである」
なんていう具体的な提言もされている。



イノベーションは奇跡ではなく
法則があり手順があるものだと、
本書を読んでいるとそんな気持ちにさせさせてくれる。
そんな風に奇跡に手が届くような気にさせることが
人類の進歩に必要な奇跡を生む種なのだと思う。


氏は昨年老衰でなくなった。
95歳だったそうだ。