前回の続き。

 

佐藤水産の鮭のルイベ漬け海鮮盛り弁当(新千歳空港駅)(1,480円)

「駅弁大会」としては反則技の弁当から始める。

D-1輸送」にも、実演にも来ていない弁当だから。

地下のデリカコーナーで売られている弁当なのである。

 

数年前までは、「駅弁大会」の「うまいもの」コーナーに、佐藤水産が出店していた。

「鮭のルイベ漬け」とは、生のままでは死滅しない寄生虫対策に、鮭を冷凍し、寄生虫を死滅させてから解凍したものである。

昨夏、随分世間を賑わせたアニサキス虫対策がまさにそれで、普段は解凍刺身よりは生の直送を有難いと思うのに、敢えて解凍と書かれた刺身を選んで買ったものだ。

回転寿司などで人気の「サーモン」は、あれは本当はマスで、しかも養殖が多いという。純然たる鮭は生はご法度とは、随分昔、「美味しんぼ」で知った。「究極のメニュー」で生鮭を出した山岡士郎を海原雄山がコテンパンにこき下ろす場面が今も記憶に残っている。

 

さて、本品。

以前、佐藤水産が出店していた時、ルイベ漬けをよく試食させてもらったものだが、当時もこの弁当を見かけたことはなく、大分前、本品の存在を知った時、羽田空港へ出向くのも辞さぬ覚悟で、午前中の東京駅へ行ったら運よく入手できたことがあった。

今は当時よりも入手しやすく、又、以前は空弁として知られていたが、新千歳空港駅の駅弁として紹介する札が、今回は付けられていた。

透明トレイで区切られた鮭のルイベ漬けがメイン。イクラと親子状態の醤油漬けとなっており、食べる時、トレイから白い酢飯の上へかける。

鮭の酢漬け、鮭の味付けミンチといった付け合わせが珍しい。

塩イクラも別に乗り、鮭ミンチの下には、これも珍しいとさかのり。

 

鮭のルイベ漬けは既に濃厚醤油味だが、お好みで更に醤油ダレをかける。

醤油ダレは主に付け合わせのほうにかけるためのものだろう。

 

珍しい鮭づくしの弁当。

購入当日、うまいものや実演会場を見て回ったが、1週間前に食した「浜形水産」の海鮮弁当で満足し、これ以上の変化を感じられなかった中にあって、本品は独自の存在感を誇っている。

 

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鮎屋三代弁当(塩焼き)(新八代駅)(1,350円)

新八代駅の「鮎屋三代」は、「駅弁大会」後半に決まって出店する名物駅弁。

前半に勢い込んで沢山食べてしまうので、なかなか本品に行く付くことがない中、今回、随分久しぶりに食べた。

ノーマルな「鮎屋三代」は鮎が甘露煮だが、本品はメイン食材の鮎を塩焼きにした別バージョン。

ご覧の通り、なかなか凝った掛け紙が奢ってあり、内側こそプラスティックトレイだが、外側にはちゃんと経木があしらわれており、ご飯が固くならないことと、高級感を両立させた、弁当箱も凝った造りとなっている。

 

焼鮎からとっただしの炊き込みご飯にはシメジ、椎茸煮、蓮根、筍が乗せられ、更に付け合わせに玉子焼(残念ながらダシの味はすれど少々甘い)、菜の花、さくら大根と賑やかだが、どれもあっさり控えめな味で、主役を引き立たせる。

 

さてその主役の鮎は、塩焼となることで、内臓の苦みも皮の焦げも、直接感じられるようになり、個人的には甘露煮よりもこちらがより好みである。弁当箱に合わせた小ぶりの鮎だが、子持ちであった。

無論、鮎は頭から骨ごと丸かじり。

嘗て人吉駅の「鮎すし」という名物駅弁が、14時頃到着の別枠で来ていたこともあったが、寿司ではない鮎の弁当といえば唯一無二の魅力を誇る。

久方ぶりに食べてよかった、やはり後半戦のエースである。

 

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美少女図鑑・甲州地鶏の親子丼(1,500円)

「美少女図鑑」という素人モデルを紹介したフリーペーパーのことで、それとタイアップした駅弁が今回4種類作られた。

本品の他に「常陸牛すき焼きと大洗名物あんこう弁当」、「東北美少女 BOX」、「鹿児島黒豚炙り焼き重」がある。

弁当名だけでは中身が分からない「東北美少女」は岩手県のもので、ほたてとローストビーフを盛り合わせである。

個人的には一貫してアイドル嫌いだし、別にパッケージを集めようという心づもりがあるわけでもない。

巷に数多あるご当地アイドルや、AKB一派にも有難味を感じていない。

モーニング娘の時も、おニャン子クラブの時も、全く同様である。

 

そんな私が本品を予約したのは、偏に本品が今回唯一の親子丼弁当だからである。

そんなわけで、女の子が描かれているから甘口査定にすることなく、純粋に弁当として味わうことにする。

 

数回前に取り上げた「元気甲斐」と同じ丸政という調整元による駅弁。

ご覧のように黄色い玉子が色鮮やかだが、半熟など到底望むべくもなく、レンジで温めて食べる。

白飯は少し上げ底がしてあるが、弁当箱全体に及ぶので、量に対する不満は特にない。

玉子とじというよりは玉子焼きの中にインゲン豆と鶏肉が散らしてあるといった感じで、その玉子焼きの食感から、もっと巨大なトレイに具材を一挙に流し込み、加熱調理したものを切り分けたのであろう。

鶏肉は胸肉とモモ肉が使い分けられており、食べ応えはあるがパサパサする胸肉、脂身の旨味と柔らかさはあるが、ともすればしつこくなりがちなモモ肉、いずれかに偏ることなくバランスがとれている。

彩のため仕方ないのだろうが、親子丼として見るなら、インゲン豆は余計。付け合わせの椎茸、人参煮、桜漬けも、弁当らしい演出だが、鶏肉入玉子焼にはあまり合わない。

駅弁といえば鉄道と切っても切れない関係にあるのでひと言記すが、鉄道雑誌の(特にRM系で)読者投稿で、列車のイラストに若い娘の絵を一緒に描いているのが嫌いである。

その手の投稿を目にする度に、「お前の描きたいのは、鉄道車両なのか?それとも女の子なのか?」そう問いたくなる。

女の子の絵が描きたければ、何も鉄道にかこつけるなど回りくどいことをする必要はなく、女の子だけに集中して描けばいいだけの話である。

鉄道雑誌なのに、女の子を絡めてくるのは、邪な気がして好きになれない。

その点、本品は、最初から「美少女図鑑」タイアップと銘打ってあるので、ご覧の若い娘の写真がパッケージに載っているのも、一応の説得性はある。

とはいえ、そもそも駅弁と若い娘を無理やり関連付けることに必然性があるのか疑問を感じる。

別にこの、その辺にいそうな娘たちに何ら恨みはないけれど。

願わくば変な悪い奴に引っかかってひどい目に遭ったりしないことを願うばかりである。

 

…と最後は、弁当の味とは関係のない話になってしまった…。

 

次回へ続く。