前回の続き。

 

近江牛ステーキ&焼肉弁当(草津駅)(1,850円)

昨年に続きリピート。

白ごまを振った焼肉が香ばしく、ピンク色の切り口が嫌でも食欲をそそる。

ステーキ肉を別皿に避難させ、残りをレンジで温めた。

前年の記事を読み返してみて、「そういえば…」と思い出したのだが、昨年のものに比べて随分と簡素化している。

付け合わせはマッシュポテト&ブロッコリーから小松菜入りビビンバに変わり、特徴的だったケチャップベースのタレは廃され、ブラックペッパーをまぶしただけのシンブルな塩味に変わった。

 

内容を変えずに大幅値上げするか、簡素化して値上げ幅を抑えるか。

難しいところだが、本品の場合、珍しい洋風ステーキ弁当という独自性が著しく損なわれてしまったのは惜しく感じる。

 

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元気甲斐(小淵沢駅)(1,780円)

毎年「甲州かつサンド」をメインに実演販売する業者だが、脇にひっそりと積まれている”実演ブース内の輸送”である本品を寧ろ目当てにしている。

今どき珍しい経木の弁当箱が2段重ねになった駅弁で、買った時点で既に底が歪み、甘い汁の匂いも漂うが、それが”味”というもの。

 

「お品書き」が入っており、ご覧の通り。

 

 

この手の弁当には珍しく、各お重にご飯が入っており、小食の人なら2人で1重ずつ分け合っても十分完結した弁当として成り立つ。

しかも、胡桃御飯やら、おこわやら。付け合わせのおかず類もどれも一筋縄ではいかない超個性派揃い。

前回食べた2019年の記事の繰り返しになるが、これを実演にしてほしいと思うものの、確かご飯は京王百貨店が用意する筈だし、これだけの多品目ともなると、手間がかかりすぎて実演ブースでは量産できないのだろう。

隠れた名品である。

 

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氏家かきめしスペシャル(厚岸駅)(1,580円)

久しぶりに食べた。

牡蠣の煮汁とひじきの炊き込みご飯は、何とも言えないいい磯の香りが漂う。付け合わせはアサリ、ツブ貝、椎茸、蕗。

沢庵に福神漬けが珍しい。

「オリジナル」では牡蠣が中央に4粒しかなく、それでも炊き込みご飯だけで十分美味いのだが、”牡蠣ダブル”の「スペシャル」ともなると、却って牡蠣が余りそうになるのは嬉しい悲鳴といえようか。

「オリジナル」なら東京駅の「祭」でも実演販売しているのを見かけたことがあり、あまり珍しくはなくなったが、やはり牡蠣弁当ならこれが一番旨いと思う。

 

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比内地鶏の鶏めし(大舘駅)(1,300円)

その4」で取り上げた「鶏めし」の上級バージョン。

紐をかがった美しい包装はこちらも変わらず。

オリジナルの「鶏めし」との最大の違いは、鶏肉が塩焼きであること。無論、比内地鶏を謳っているが、私の舌では違いは判らず。心持ち鶏肉の量が多い?

素晴らしいがんもどきを始め、個性的な付け合わせの名脇役ぶりは同様だが、こちらは更に中央に鎮座まします茄子の味噌田楽が第二のスター級惣菜である。

メイン食材の鶏肉が塩焼になるだけで、仄かに甘い優しい世界にピシッと気合が入る。そんな違いが味わえる。

 

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続いて甘いもの。

 

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萩の月 (仙台・菓匠三全) (5個入簡易包装:896円)

言わずもがなの超有名菓子。

「駅弁大会」に来るのは簡易包装版なので、あの着物のお姉さんが佇む叙情豊かな化粧箱には入っていない。

全国に亜流あれど、やはりこの”本家”に勝るものなし。

違いは独特の玉子味溢れたザラッとした食感のカスタードクリームにある。

幼少期、カスタードクリームが嫌いであった。

今のように生クリームを配合したトロリとしたものではなく、もっとぼよんぼよんとした玉子味の強いカスタードだった記憶がある。

そこらで売られていたクリームパンも、シュークリームも、玉子を使わない糊みたいな白くて甘いクリームが主流の時代、たまに高級土産だったヒロタやヨネザワのシュークリームが、嫌いだったカスタード入りで、チョコエクレアの皮だけ食べて中身を残す子供だった。

きっと当時の私だったら、「萩の月」さえ嫌いという奇特な子供だったかもしれない。

味覚に幅が出た大人になってから「萩の月」に出会って本当に良かったと思っている。

尚、かつては「萩の調」というチョコレートバージョンがあったが、生産中止となり、限定復刻するも完売。

一度だけお取り寄せで食べたことがあるが、オリジナルのカスタード味の方が美味いと思った。

 

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白餅・黑餅(伊勢・赤福)(8個入/1,000円)

赤福餅の白小豆版と黒糖版。

ニューバージョンかと思いきや、「黒」は明治時代まで作られていたものの復刻なのだそうで、新型コロナ禍のこの暗い世相の中、少しでも明るく前向きな気持ちになってもらえることを願って作られた品だということである。

公式サイトの商品紹介によると、黒は、生まれたての純朴なものの象徴、白は、清らかで洗練されたものの象徴とのこと。

特に黒糖味が美味。黒糖ならではのパンチの効いた甘みが、強いインパクトを残す。

今年も後で登場するであろう福井えがわの「水羊かん」と同じ。

 

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赤福(伊勢・赤福)(8個入/800)

白餅・黑餅」との比較の積りで”オリジナル”も購入。

甘党の関西人には説明不要のソウルフードで、私も幼少期から赤福を欠かしたことがないと豪語するほどの赤福好き。

一度、”巻き直し事件”でイメージダウンするも、それで沈んでしまうことなく復活を遂げてくれたのは、それだけブランド力が浸透しているということか。

トロリとした柔らかい白餅を、瑞々しいこしあんでくるんだサッパリした上品な甘さ、手で握ったような独特な形が身上。

伊勢神宮内宮前の本店や、名古屋近辺には「赤福茶屋」という喫茶室があり、夏場には「赤福氷」というかき氷も供される。

赤福氷」とは言うなれば宇治金時だが、あんこの代わりに底に赤福餅が潜んでいる。ひんやり冷えた赤福餅も美味なもの。おまけに安い。

 

嘗ては神戸では売っている店が三宮のそごう位しかなかった筈で、その時代、梅田の阪急百貨店本店に行ってみたら、「2個入り」などという一人で食べるのに適量のパックを見つけ、驚いたこともある。

「♪伊勢~のめいぶ~つ あかふく~餅はいいもんだ」

子供の頃に聴き覚えたCMソングが未だに頭の中から離れない。

 

尚、近鉄電車が三宮まで乗り入れてくるようになってからは、神戸でも前よりはずっと買い求めやすくなった。

 

私はかねてより美味い土産菓子を称して「東の萩の月。西の赤福」と勝手に諳んじているのだが、今回取り上げた菓子を順に食べ進めていく中、ある日の朝、「赤福」、「白餅・黒餅」、「萩の月」の豪華三つ巴を同時に味わう僥倖を得た。

仙台で「赤福」は買えず、伊勢で「萩の月」は買えない。

東西の両雄を同時に味わえるのは、やはり「駅弁大会」のような一大イベントならではの有難みであろう。

 

次回へ続く。