前回の続き。

 

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ぶりかまめし (富山駅) (1,200円)

駅弁大会を訪れだした最初から、唯一欠かさず食べている弁当。

ブリかまを丸ごと圧力鍋で煮て、骨まで柔らかく噛み切れるようにしたものがメイン食材。

わっぱめし様の容器中央にドーンと鎮座するが、これでも昔よりは小ぶりになったのだ。

甘辛味のぶりかまに、付け合わせの山椒をかけると、さながら鰻のかば焼きのような味。

脇を固めるのは富山名物白エビ浜焼き、甘酢生姜刻みとわかめ。

控えめな酸味を効かせた青菜入り酢飯が全体を受け止め、下手をすれば生臭くなりかねないぶりかまを絶妙に中和している。

 

一度、魚屋でぶりかまを買ってきて、手持ちの圧力鍋で煮てみたが、この弁当のように柔らかくはならず、無理すればどうにか骨ごと噛み砕けるレベルにしかならなかった。

やはり素人には真似できない調理法があるのだろう。

 

冬季限定の弁当で、できれば現地に出向いて味わってみたいものだが、富山といえば名うての豪雪地帯。

幾ら北陸新幹線が通ったとて、大の寒がりの私は、足が雪にズボッと埋まるのを想像しただけでも、気持ちが萎える。

一度、8月初旬に富山へ旅したことがあるが、夏の富山は豪雪とは打って変わって滅茶苦茶暑いんだ、これが。勿論、ぶりかまめしは猛暑にはなし。

 

やはりこの弁当を味わうには、駅弁大会が性に合っている。

因みに、近年では京王百貨店中地階や、東京駅でも買える模様。

 

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松阪名物黒毛和牛モー太郎弁当 (松阪駅)(1,500円)

これも近年リピートし続けている駅弁。

黒塗りの艶々とした、かわいらしさを排したリアルな牛さんの容器が一大特徴。

掛け紙ならぬ掛けカバーを取ると、あらら…意外とつぶらな瞳が潤んでいらっしゃるのネ…。

続いて牛さんの顔の蓋を取ると、どこからともなくメロディーが…。

 

〽う~さ~ぎ~ お~いし か~の~やま~

 

あわわ…牧歌的というか、郷愁をそそられる。

こんな懐かしい気分で、しかもこんなにつぶらな潤んだ瞳の牛さんなのに、この子を切り刻んで鍋にして喰っちまってよいものなのか…?!

 

〽かーわいそーな子牛~ 売られてゆ~くよ~

「ドナドナ」の哀愁漂うメロディーのほうが似合うんじゃないかしらん。

 

生ある者を弑することに我ら人類、生命の源あり。

そんな哲学的な思いを短時間で馳せてしまうが、無論空腹には抗えないのである。

そんなわけでさっさと喰っちまえ!!

かくも人間様とは残酷な生き物なのだよ。

中身は、牛脂がよく効いたすき焼きの牛肉だけ引っ張り出して白飯に乗っけた感じのやつがメイン。

ずっと食べ続けていると、口の中が甘ったるく脂っぽくなってくるので、付け合わせの紅生姜の酸味が実に有難い。
この辺りは、そこらの牛丼屋と同じ理屈だが、こちらはさしずめ“高級牛丼”の趣き。

さっぱりとした切干大根、しば漬けの酸味もまた、良い箸休めとなるのが有難い。

多分脂がよく効いた牛すき煮の味が他の弁当よりも強いのだろう。

牛すき焼き系駅弁では、他では味わえない満足感が得られる。

 

レンジでチンする際は、「ふるさと」の元=基盤は勿論取り外すべし。

コイツを脇に放置しておくと、後で思いがけない時に、「〽う~さ~ぎ~ お~いし」とお間抜けな電子音が鳴り、脱力させてくれるのも、この弁当ならではの味わい。

この基盤の奴がなかなかタフで、牛さんは跡形もなく胃袋に消えちまった後も、しぶとく何度も何度も意外なタイミングでメロディーを奏でやがるのだ。

 

牛さんよりも何よりも、一番丈夫で強いんじゃないか?!

 

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ここからは今回リピートした駅弁記事の再掲。

 

近江牛大入飯 (米原駅)(1,200円)

カレー味のご飯に牛焼肉という唯一無二の個性派駅弁。

特にお気に入りにつき、今回他の選択肢を敢えて蹴って再購入したもの。

近年、駅弁大会へ行く度に食べている。

 

先日の記事内容をコピー&ペーストするのも芸がないので、この弁当については、更にその前の2020年の記事から引用する。

 

名前からはちょっと想像がつかない、カレー味のご飯が一代特徴の個性派牛弁。

牛肉は脂身がたっぷりの肉厚で、玉ねぎを絡めた甘辛炒め。

カレーピラフとまではいかない、あっさりめのカレーご飯が食欲をそそる。

付け合わせは彩メインの赤かぶ漬けとパセリのみという潔さ。

ガッツリ系の食べて満足の駅弁だ。

 

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たかのののどぐろめし (金沢駅)(1,350円)

4階輸送コーナーで、残数がものすごく減っていたため、思わず衝動買い。

後半はチラシに載っており、やはりチラシ効果は絶大である。

しかし、チラシ画像のほうが更に焼き色がついて香ばしそうで、具材もびっしりに見える。…まぁ仕方ないのでしょうが…。

そう思ってカゴに放り込み、会計の列に並びながら衝立の向こうの様子を見ていたら、バックヤードからデパートのおっちゃんが山ほど補充していた。

何だ…。

 

以下、今年の「その5」からの再掲。

 

のどぐろといえば高級魚の代名詞で、今回は提供されていないが、新潟駅弁で「のどぐろとサーモンといくらの弁当」という駅弁を毎年のように食べていた。それでのどぐろの味を覚えたものだ。

駅弁に使われるのどぐろは小ぶりだが、タレをつけて焼いたのどぐろがこれだけ一面に咲き誇っているのは壮観としか言いようがない。

宮島口の超有名駅弁「あなごめし」を思わせるシンプルで潔い内容。のどぐろが好き、のどぐろを思いきり味わいたいという向きには絶対にお薦めしたい弁当だ。

 

尚、過去の記録を調べてみたら、2017年に同じ名前の駅弁を食べていた。

その時も「輸送」で、“瞬殺”アイテムだったのだが、今回のものは全くといってよいほど別物である。

(参考画像:2017年1月)

 

…そういえば、数年前、某日本人庭球選手で馬面歯茎が特徴的な男が、「のどぐろが好き」とのたまい、それで付和雷同的ミーハー庶民の間でこの魚の知名度が増し、一気に人気が出て、値段が高騰するのでは…?などとまことしやかに囁かれたものだが、彼は不調なのか、その話題すら耳にせず、近頃とんとそんな発言も多くの人々の記憶の遥か彼方へと押しやられてしまった。

まぁこういう駅弁が出てくるということは、一有名人の発言を契機とした“のどぐろ特需”は杞憂に終わり、変わらぬ高級魚としての地位を維持し続けながらも、枯渇や需要逼迫という水準にまでは達していないということなのであろう。

 

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次回は甘いものの予定。