7月30日(月)

 

名鉄名古屋―(大江)―東名古屋港―(大江)―(名鉄一宮)

―(津島)―(須ヶ口)―金山―上前津

上前津―(赤池)―(豊田市)―(知立)―(上小田井)―江南

江南―(岩倉)―(金山)―道徳/道徳―名鉄名古屋

名古屋―吹上/吹上―丸の内

 

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前回の続き。

「金山とまと」が開く13時まで時間がぽっかり空いてしまった。

この地にも「まんだらけ」があるらしいので、余程行こうかと思ったが、欲しいものが何もないので、行っても仕方ないのである。

大須観音へ行ってみた。

日向はとっても暑いので、日影でぬるま湯と化したペットボトルのお茶でも飲みながら、ぼーっと過ごす。

向こうのほうで鳩のざわめきがするので、目をやると、おばさんがえさをやっていた。

ありえない数の鳩が群がっている。

今はどこもかしこも“鳩のえさやり禁止”と書いてあるので、子供の頃はよく見かけたこういう風景も、滅多に見られなくなってしまった。

ふと脇に目をやると、烏がじーっと木陰で涼んでいた。

朝ごみ捨て場を漁ったり、夕日に向かって飛んでいったりする姿には覚えがあるが、そういえば烏は昼間どうしているんだろう?と思っていた。利口な烏が熱中症でみすみす倒れるわけがない。

珍しいものを見つけた気分である。

 

そうこうする内、12時半になった。

折角時間つぶしをしているのに、いざ13時ぎりぎりになって行ってみたら長蛇の列…なんてのは嫌だから、「大須マルシェ」に入ってみた。

辺りには誰もいない。

人気店の筈だが、こんなんでいいのか?

私の次に女性客の連れがやって来たのは、開店10分前であった。

お店の方は中で開店準備に勤しみ、やがてメニューの紙が貼り換えられた。

エスプーマがかかったのとか、「めっさこいピーチ」とか、「いちごのショコラ氷」とか、「ルビーグレープフルーツ氷」とか…誘惑が多すぎて、何を選ぶべきか迷いすぎてクラクラする。

1つは最初から決まっている。

「マンゴーデラックス」!

だって、2,000円が800円に値下げって書いてあるんだもん。

マンゴー好きとしては絶対に外しちゃいかんでしょ。

考えた末、最初の1杯はこれにした。

↓ピスタチオクリーム&ナッツ(950円)

奥歯が悪いときだったら、到底選べないメニューだった。

この店は、ナッツにひとかたならぬこだわりがあるように思えたから、個性的なメニューということでこれにした。

確か店先でナッツ詰め合わせが売られていたように思う。

細かく砕いたピスタチオだけだったら、単調な味になったかもしれないが、ミルクがたっぷり中から姿を現し、これが効いて、香ばしくもマイルドな味になった。

さてお次はお待ちかねの「マンゴーデラックス」。

これは細かな説明一切不要の直球ストレートなお味。

マンゴーごろごろはトッピングだけかと思いきや、中にもごろごろ転がっていた。おまけにミルクが絡めてある。

“デラックス”にふさわしいゴージャス氷であった。

店を出ると、ゴージャスシャンデリアの廊下は相変わらず静寂を保っていたが、実際は扇風機の向こうに人の列ができている。

それでもこれ位の並びようなら随分ましではないか。

今回は1度きりしか来られなかったが、他のメニューも順に試してみたくなる店である。

表の立て看板を見ると、「カシスカルピスかき氷」とか「アップルプラムワイン」とか、更なる魅惑メニューがあるようで…。

そして「トマトクリーム氷」。

店名に「とまと」が付く以上、フルーツトマトの氷がないわけないと思っていたが、やはりあったか…。

きっと真夏は旬ではないんでしょうね。

商店街を進む。来た道とは違う筋だ。

途中こんな立て看板を発見。

一面に猫、猫、猫!!!!

さすが“濃い”名古屋。

猫カフェの宣伝も徹底してるにゃん。

3年前に訪れた「川久」発見。

透明プラカップに氷を盛って、透明円盤の受け皿に乗ってくれるユニークな店。

今回はパス。

広場中央の休憩所(何ていう名か知らない)で招き猫を仰ぎながら暫し休憩。

向こうでメイドさんが森高ばりの裾広がりのミニスカ姿で、カモお客さんを探してる。この暑いのにニーハイソックスはしんどいだろうなー。

久々に絶対領域を遠目に拝む。

いつからか、若い女の子のミニスカとニーハイソックスの間、太ももの数10センチだけが素肌が露出している箇所が“絶対領域”と呼ばれるようになり、それなりに浸透したが、ニーハイがなく、生足のほうが有難みがあるか…といえば、そうでもないようなのである。

2000年頃から、メイドさん、巫女さん、眼鏡っ娘…これらが急激に好ましい女子の格好として定着し、その頃“絶対領域”という語も誕生した。

「好ましい」と書いたが、「萌え」という概念の誕生である。

知識としてはあるが、私にはどうも未だに今一つ実感がない。

大須エリアを出て、通りに出ると、海星堂書店が見えた。

ヤフオクで何度かお世話になった店だ。

実店舗を目にするのは初めてなので、行ってみた。

本店1階で、店長と思しきリーダー格の男性と、バイトかな?と思しき若い男の店員が、丁度その頃終わったばかりだった夏の高校野球の大阪予選のことを話しているのが聞こえてきた。

結局この後優勝した、根尾、藤原、柿木らの選手たちがいた大阪桐蔭高校が、確か準決勝でライバルの履正社だったかにあと少しで負けるところだったのを、相手のエラーか何かであやうくつなぎ、後続が粘り強く出塁を重ね、逆転勝利を収めた。

その時のことを店長(?)が熱心に話していた。

東京だと、幾ら優勝候補の筆頭でも、大阪のチームのことが話題に上ることなどあまりない。ましてや地区予選である。

私みたいに興味をもって調べでもしない限り、この試合が昨夏の大阪桐蔭は一番危なかったことなど、知る由もないのである。

それが幾らプロ野球の雑誌コーナーがある、ちょっとマニアックな古本屋とはいえ、こうして大阪の高校野球が普通に人々の話題になる。

名古屋という土地が、大阪により近しい文化圏なのだと改めて思った。

 

2階の映画グッズコーナーに上がる途中で、こんな品が飾られてあるのを発見。

「木之内みどり」ってわかりますか?

「木内みどり」とは別人ですよ。

今となっては竹中直人夫人というのがわかりやすいが、『野球狂の詩』で実写映画版、TVアニメ版共に、ヒロイン・水原勇気役や、『刑事犬カール』の、素人っぽい演技と、クセのない美貌が印象に残る元歌手だった。

 

右側はもっと驚き!

今では妖艶熟女路線しか目に浮かばないが、この人にもこんな初々しい頃があったんですね。

結局何も買わずに店を出た。

この時点でまだ14時半。

銭湯へ向かうにはまだ早すぎる。

そこで当初の予定を覆し、地下鉄鶴舞線で上小田井とは逆の赤池方面の電車に乗り、ここから豊田市~知立~名古屋~上小田井と大回りすることにした。

初めて名古屋へ来た時以来だが、折角だから猿投方面に行けばいいものを、そうすると更に1時間ほどかかってしまうので、またしても地下鉄が分かれる先だけが「お預け」となってしまった。

途中で乗り換えた名鉄電車は6000系だった。

登場時は、“これからの通勤電車のあり方に対する1つの答え”と、バスみたいな小ぶりの一方向固定クロスシートのレイアウトが随分持て囃されたものだが、登場してから既に40年。

今では本線にも滅多に見られず、ロングシートに改装され、ローカル線用になっている。

名鉄も徐々に簡素な作りの銀色電車が増えており、「らしさ」が失われつつあるが、ロングシートになったとはいえ、横引きカーテンは健在で、まだまだ通勤電車にしてはゴージャスな印象は残っている。

鉄道ファンとしては、あの仰々しい車号表記の字体、スカーレットの車体、横引カーテン、パノラマカーの血筋…これらはいつまでも残ってほしい名鉄電車らしさである。

 

そうこうする内、電車は知立に着いた。

前にも記したように、知立駅は現在改良工事の最中で、将来は本線と三河線の重層式高架駅に生まれ変わるという。

今回は碧南方面には行けないが、初めて名鉄の乗り鉄に来た14年前は、三河(南)線のローカル普通に、7700系というパノラマカー一派の、しかも元特急仕様の内装を残す車両が使われており、戸袋窓部分の、ドアと反対側も椅子の端という独立した2人掛けロングシートに敢えて座った。

今では元急行用で5700系電車位しか、ゴージャス気分が味わえる普通電車はないが、かつてパノラマカーが多数走っていた頃は、それが当たり前だった。

 

ここから特急に乗る。

前日とは違い、もうフリーパスは持っていないので、一般席に座る。

JR西日本の新快速並に混んでいる。

金山で特急を見送った。

遂にこの紅白のおめでたいオリジナル色も消滅してしまったらしいが、この時はまだこうして残っていた。何度見ても、カブトガニにしか見えない。

犬山線直通を待っていると、内側ホームに5700系の「一般席」特急・名古屋行がやってきた。

こんな運用があるとはこの時まで知らなかった。

急行用の2扉車で、扉間が転換クロスシートという内装ならではの使われ方だが、この形式も大分古くなってきているし、この先、ロングシート特急になってしまうのだろうか?

その向かい側にやってきた犬山線直通の「普通」は、まさしくその5700系電車であった。

ラッシュ時なら収容がきかないのでしんどいだろうが、空いている時なら、大歓迎である。

先頭かぶりつき席は埋まっていたので、立ちん坊で前を見ている。

名古屋で乗客の多くが入れ替わり、待望の鉄っちゃん席に座れたので、ここからは堂々と展望写真に勤しめる。

枇杷島分岐点も、その先の三角州も、展望席なら撮影は思いのまま。

上小田井で下車。犬山行きだったので、このまま乗り続けてもよかったが…。

後続の急行に乗り換えて、時間を浮かす。

江南という駅で降りる。

勿論初めて。

駅前広場はあるが、改装中で、駅の全体像は今ひとつつかめない。

地図を頼りに車の道から、やがて住宅街へと歩を進め、そろそろ心細くなりかけたところで再び飲食店が軒を連ねる通りに出たところで、目的地を発見。

栄温泉。

さながら一昔前の地方の映画館みたいな店構えだが、ほんまにやってるんかいな…?

一応暖簾が出ているのでやってるんだろう…と随分レトロな木製引き戸を開け、中に入る。

中は靴脱ぎとなっており、更に引き戸がある。

下足箱の金属格子文様を見よ!

これこそが名古屋銭湯様式。

ところが番台に誰もおらず、幾ら呼び掛けても応答がない。

仕方ないのでそのまま入り、後でお金は払うことにする。

 

脱衣所からして随分とレトロ調。ロッカーの扉がプラスティック製なところだけが惜しいが、昔は木製だったのだろうか?

浴室との間に流しがある。床がタイルの流しの手前に、斜めに配された木製引き戸があり、その手前にごつごつとした岩が置かれ、ちょっとした和風庭園風となっている。

さて浴室。

手前に四角いカラン塔。天辺に風呂桶が重ねられ、その奥中央に島状に浴槽が展開する。

ジェット、浅い、電気と続き、ジェットと浅い浴槽までがぬるい。

奥の壁に連なる深い浴槽が主浴槽で、ここもお湯熱め。

白い壁が清潔感漂い、正面奥、女湯にまたがって熱帯魚が泳ぐ竜宮城のタイル絵が浴室を見守る。

浴槽側面の四角いタイルの意匠が綺麗だ。

外へ出て建物裏を回ってみた。

随分奥へ長い立派な建物で、トタンの壁面、資材置場、天に聳える煙突と、メカニカルでものものしい姿に男子たるもの惹かれずにはおれない。

来た道とは違う道から駅へ戻ることにした。

「愛栄通」という名がついているが、金融機関が撤退した後の空き家、ガランとした商店街…さびれ様がよそ者にも一目でわかる。

やがて車通りに出た。

するとこんな立派な建物を見つけた。

それは廃業銭湯。

「広見湯」という屋号も立派に残っており、単なる休業日に見える。

これも一種の看板建築といえようか?

この銭湯が開いている頃、来てみたかった。

駅前に戻ってきた。

車のお出迎えが多い。

やはり名古屋は車社会なのだ。

名古屋方面に戻る。

途中、岩倉という駅で、後から来るミュースカイの案内を聞く。

乗っていたのは確か準急で、こまま乗り通してもよかったが、折角名鉄電車に連日乗っているのだし、前日、特急乗り放題の権利を得ながら、一度もミュースカイには乗らなかったし、そこで急に思い立って、金山までのミューチケットを買い求めた。

そろそろ夕ラッシュのせいか、4連が2本連なった8連。

それにしてもこの面構え、つくづくJR東日本の「成田エクスプレス」用の旧車両・253系と似てるなぁ。

私にあてがわれた席に、白髪頭の親父が居座っていやがる。

写真にチラッと写っているこの親父だ。

余程「そこワイの席や。退いてんか?」と言ってやろうかとも思ったが、ご覧のように車内はガラ空き。

まぁ目くじらをたてることもありますまい。

1列後ろの空席に陣取った。

そろそろ日が沈みかける中、城東線、枇杷島分岐点と鉄道スポットを横目に見つつ、ミュースカイは快適に飛ばす。

車内は静寂で、揺れも殆どないが、前に近鉄特急に乗った時だったかに記したように、どうも特急の車内から見る車窓風景は、金魚鉢か水槽越に見る景色のようで、今一つ実感味に欠ける。

特急券代をケチりたいのも勿論だが、どうもそう思えてならず、だから今の私はあまり特急に乗りたがらない。

金山でミュースカイを降りた。

名古屋は車社会とは昔から言われるが、それでも通勤ラッシュはある。

ものものしいデザインの6500系電車の普通で、道徳という駅で下車。

近代的な高架駅だ。

ここから真っすぐ歩く。

途中、公園で明日から夏祭りなのか、模擬店の準備が忙しそうだった。

ほどなくして突然こんなレトロな建物が姿を現した。

道徳温泉である。

黒い板塀が懐かしくてたまらない。

昔の家並みには必ずといってよいほどこうした板塀があった。

ここも勿論番台式。

客の入りは多く、賑わっている。

脱衣所の天井が高い。

浴室へ入る。

中央に楕円形の主浴槽。深くて熱い。

奥の壁際に浅くてぬるいジェット風呂、隣に電気風呂。

左右両壁沿いにあるカランにはお湯しかなく、水用がないのが珍しい。

脱衣所を見回してみて気づいたが、配電盤の古めかしさといったら…。

帰りの電車も6500系だった。

濃い色の木目化粧板が、一昔前の応接間の流行を思わせ、昭和レトロ色が濃い。

名古屋で地下鉄に乗り換え、吹上という駅から少し歩く。

途中、小学校の前を通るが、夜の学校は人けがなくちょっと薄気味悪い。

千種小学校というらしい。

千種といえば、河合塾を連想する。

JR中央(西)線と、確か地下鉄東山線に、千種という駅があったはずだが、ここも千種という名の学校があるからには、近いのだろうか?

よそ者の悲しさで、全く土地勘がない。

鉄道知識があるだけましだが、線で捉えているにすぎず、面で全く把握していないので、全く心もとない。

 

やがてこの日最後の目的地・出口湯に着いた。

夜9時までと、銭湯としては早じまいなので、急いで来たのだ。

着いたのは8時過ぎであった。

ここも勿論番台。

脱衣所のロッカーは木製扉で、レトロな雰囲気。

ここも脱衣所と浴室の間にタイル貼りの体を拭く場所があり、向かいに流しがある。

こういう作りだと、必然的に脱衣所へは身体を拭いた後で上がってくるので、「体をよく拭いてから上がりましょう」とわざわざ張り紙することもない。

浴室は、女湯との仕切り壁に接する形で浴槽が並ぶ。

大きくせり出した浴槽2つの間に、ちょっと窪んだ格好で四角い電気風呂があり、奥が主浴槽で熱め、手前が寝風呂でジャグジー付き。

壁の下半分はガーベラか、赤い花が綺麗なタイルで、上半分は所々にピンク色の小花があしらわれた絵。

更に上ほうには、コンクリートか漆喰か?竪琴のようなマークの飾りが点々と並び、この銭湯が只ならぬレトロな空間であることを物語っている。

庭の木々が生い茂り、それに覆われた出入口が、なかなかいい雰囲気を醸し出していた。

長い旅路を経て、この日も漸く宿に帰り着いた。

さっき名古屋で乗り換える時、名鉄百貨店に虎屋ういろの売店があり、思わず抹茶とよもぎの2本を衝動買いしてしまったが、さてこのういろう2本、いつどうやって食べようか?

幾ら旅先でハイテンションになっているとはいえ、夜食で食べるにはヘビーすぎるし…。

次回へ続く。