8月28日(月)

 

稚内―鴛泊/鴛泊―香深

 

香深―稚内

 

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利尻島&礼文島へ行く。

前夜、ホテルフロントのおっちゃんにフェリー乗り場への道をきいてみたら、裏口から出れば近道で、切符は出航30分前から売り出すと教えてくれた。

…ってことは6時半過ぎには着いてなきゃダメってことか…。

逆算すると、うへっ5時半起きだよ。

起きれるかな…?!

それで前の日、21時半頃と、普段は絶対寝ない時間に布団に入ったお蔭でどうにか起きる。

コンビニで買っておいた「ようかんパン」に、旭川のイオンから持ってきた「みそぱん」をかじる。

「ようかんパン」は「どこが“ようかん”やねん?」とツッコみたくなる、ホイップとカスタードをはさんだやわらかスポンジパンで、歯に優しい食い物だったが、「みそぱん」よ、お前はどうしてこんなに硬いのだ?!朝っぱらからのどが渇いて仕方がない。おまけに4切れも入ってる。お蔭でこの後札幌の宿を出る時まで持ち歩いてしまったよ。

早朝の北の町は空気が清々しいなぁ。

枯れかけの百合も、既に枯草になりつつある草むらを一直線に走る鉄路も、気持ち良く見える。

前を歩く小太り眼鏡のおっちゃんも“ご同輩”とみた。

道を何本か横切ると、フェリーターミナルに着いた。

つくづく南稚内に泊まらんでよかったと思う。

中に入ると結構人がおり、平日でも利尻&礼文へ渡る人が多いことに気づかされる。

フェリーの切符を自動販売機で買った後で、周遊コース分まとめて買えたことに気がつく。観光バスを降りてその都度切符を買いに並ぶのはしんどいから、受付の兄ちゃんに頼んで一旦払い戻しにしてもらい、セットで買い直し、その後、予約しておいた観光バスの切符もまとめて引き取る。

7月にかけた時、なかなかつながらなかった電話はここにつながったのか。

もっと裏寂れた吹きっさらしの小屋に若い受付嬢1人みたいなのを想像したが、実物は遥かに立派な場所だった。

 

船が出るまで30分ほど間があるので、港の先まで行ってみた。

おおー、あれが昨夜真っ暗闇の中、先っちょまで強行突破した防波堤ドームか。

ものものしい船だと思っていた「りしり」も、明るい空の下で見ると、爽やかでスマートに見えるじゃないか。

港の先を望む。朝焼けに濃い色した海が照らされ、「ザ・北の海」って感じ。

この後、カモメの死骸を見つけるが、胸や腹をえぐられ、結構グロい姿だったので、写真には撮らず。

船着き場脇に路線バスがポツリと淋しく1台。

キミは何故ここにいる?

ターミナルへ戻り、アナウンスを聞いて2階の乗船場へ行くと、既に長い列ができている。

「うへっ!こんなに人いるの?!」ってほど。

 

フェリーも予約できるのか…とアカウントを作ったが、予約できるのは1等だけで、2等はその場で勝負の自由席。もとより“「並」で結構”と思っているから、アカウントは全くの無駄に終わった。

とりあえず窓際の席にありつけたから良し。

フェリーはおろか、船自体随分久しぶりのことだ。

鉄道やバスや飛行機…長細い乗り物にばかり慣れている目には、船の横幅の広さに面喰う。

後から後から人が来て、どうやら隣に来た夫婦者も、島への観光客のようだった。

出航して暫くは窓から景色なぞ見ていたが、ほどよい振動、ほぼ満席の人の熱気、丁度映画1本分くらいの所要時間、それに早起きが手伝って、いつしかスカーッと眠りこけている。

子供の頃は乗り物酔いがひどく、船は勿論、観光バスにタクシー、乗用車でも窓を開けていないとウゲーとなり、勿論鉄道も、窓が開かぬ密閉空間の特急車は、昔は禁煙車などなかったことも手伝って、乗る分には鬼門であった。

そんな私も大人になればいつしかこれ位の船は平気の平左になっている。

自分で車を運転するようになってから、乗り物酔いへの耐性が強くなった気がする。

 

目覚めると、あと20分ほどで利尻島という頃合いであった。

この先の礼文島まで乗り通しそうな、隣の夫婦に、“これでもう外に出てそのまま降りるのでよろしければ窓際の席、どうぞ”とお勧めして、甲板に出る。

目の前に利尻富士が迫ってくる。

海の上は涼しくて気持ち良い。

広い通路、昔の映画館を思わせる売店がちょっと懐かしい。

デッキ手前を階段で上がった先は1等客室で、脇には1等和室。「サンライズ瀬戸」のゴロンとシートみたいな木枠で仕切られた1人ずつの領土があるようだが、小金持ちぽい老夫婦が出て来る時しか中の様子は窺えない。奥は2等のカーペット席…というと聞こえはよいが、雑魚寝コーナーだが、結構人がいる様子。

 

やがて利尻島の鴛泊(おしどまり)フェリーターミナルに着いた。

勝手わからぬまま、観光バス乗り場へ向かうと、たくさん停まっているかに見えたバスの多くは団体客用で、定期観光バスは一番端の2階建てバス。

一般客はすっこんどれ、と言われているみたいだが、既に先客は数多い。

2階へ行ってみたが、一番後ろの右側だけが窓際が空いている。

島を時計回りに回るので、左の窓際がよいのである。

それにどうせ途中で何度か降りるのに、この狭い階段を混み合う人々をじっと待つのに耐えられそうにない。

天井は低いが、1階席の左窓際に陣取ると、ほどなく後から来た親子連れの若い男が隣に座り、ますます狭苦しくなった。

2階建てバスってのは、一見ゆったりして見えるが、実は詰め込み車ってことが多いのだ。

それでかどうかは知らんが、近鉄は逸早く「ビスタカー」をやめてしまった。

鉄道の2階建て車両は、大した乗車経験がなく、何度も乗っているのは「ホリデー快速ビューやまなし」の215系か、京阪特急の8000系くらいだが、2階席から埋まるので、混むのを嫌い、人気のない1階席へいつも逃げる。ちょっと上から見下ろすのは割と機会があるが、ホームすれすれローアングルの眺望こそ、非日常だと思うのだ。

 

船も出て、満席になったところでバスも出発。

随分おばちゃんのガイドさんなところがローカルぽくて良い。

バスガイド特有の、あの妙な抑揚のついた話し方が、何だかデビュー当時の山田邦子みたいだ。

 

最初に下りたのは姫沼。

周遊コースなので、ガイドのおばちゃんに、みんなぞろぞろついてゆく。

 

沼の向こうに聳えるのが利尻富士なのだが、どうも天気に恵まれず、頂上まですっきりとは見えない。

沼の手前で30分の自由行動。沼の周りの板張りをぞろぞろ皆歩き始める。

ぐるっと回った終盤で、逆さ富士を写してみた。一応写ったかな。

沼正面脇に写真展示館があり、冬場の空が澄んだ時の綺麗な時や、植物写真がわんさか飾られていたが、撮影NGなのでササッと見て回るだけ。

 

既に花の季節は過ぎかけていたが、それでも道端にはこんな花も咲いている。

バスに戻り、出発。

海沿いを走る車窓から石碑を眺める。

江戸時代末期、ラナルド・マクドナルドというアメリカ人が、日本に憧れて捕鯨船で日本に近づき、利尻島へ単身上陸(早い話が密入国ってことですな…)。長崎に連行されたが、この外人さんのお蔭で、日本人は初めて英会話を習えて、お蔭で後に列強が押し寄せた時、外交交渉ができて、日本が滅亡せずに済んだんだとさ。

日本を贔屓にしてくれる外人さんは手厚くもてなしたほうがいいよという教訓。

郷土資料館を見学。

でっかいトドの剥製があったり、昔の漁の様子が再現されていたりする。

昆虫標本も。そういえば先ほど姫沼からバスで出る時、黒アゲハ蝶がひらひらと舞う姿を見かけたが、羽根に青緑色が入っていたので、ミヤマカラスアゲハ?と思ったら、果たしてそうであった。

オタトマリ沼で下りる。

他の連中がプレート前でまずは記念写真に群がっているのを尻目に、早々に沼の先まで行ってみた。

戻ってきた時はこんな有様。人の群れに呑まれるのは嫌。

その脇でおばちゃんガイドさんがカメラマン役に忙しい。

ごくろうさまです。

沼の対面は土産物屋が2軒あり、観光バスが連れてくる客が収入源だからか、やけに愛想よく迎えられる。

折角なので、うに軍艦を食べることにした。

東京の回転寿司みたいにキュウリで誤魔化す野暮はしない。

結構並び、バスが停まっているのは30分こっきりだから、途中で店屋のおばちゃん増員。1人は売り子、もう1人がひたすら調理。うに軍艦がどんどん量産されていくが、おばちゃん、慌てすぎてウニこぼさんようにな。

2貫で1,300円したが、まぁ安いほうなんだろう。

 

早くも職場への土産に「さけ昆布」を幾つか買う。

さんざん試食させてもらったし、美味かったし、買わん訳にはいかなかった。

そしたら店のおばちゃんがソフトクリーム割引券をくれたので、急遽ソフトクリームも買う。この手のソフトクリームも、近頃ではすぐ平気で300円や400円とられるから、割引価格で150円というのは破格であろう。

少し腹が満たされたところで、ほどなく仙法志(せんぼうし)御崎公園で30分。

丘を海の方へ降りていく。

ウニが食べられる土産物屋が坂の途中にあり、水槽でウニやナマコが飼われているが、「見た目は変」って、そりゃナマコがかわいそうだよ。

坂を下りた先の岩場には養殖場みたいな囲みがあり、中にはゴマアザラシが2頭いた。ガイドさんが何とかちゃんと何とかちゃんと言っていたが、すみません、忘れました。

さっきのウニ売店で、アザラシのえさ100円也が売られていたが、ケチだから買わない。

大勢ギャラリーが取り囲む中、目が合っちまった。

そんなに期待のこもった目で見つめんといて!

おっちゃん、えさ持ってないねん。

目つぶったら、キミも何やおっさんくさいなぁ…。

おさかなくれよぉ~

目ぇ剥いて流し目しちゃうわよん♡

わあーいお魚キターッ!!バシャバシャ

はぐっ!見事空中キャッチ!

牙長くて、口の中赤くて怖いなんていわないでね。

どんなもんでいっ!鼻の孔おっ広げてドヤ顔。

がーっ、空中キャッチだぜい。横顔が獣っぽい…

この辺でアザラシプールの奥へ進む。

北の荒磯、昆布もうねる。波のしぶきが冷たいぜ。

そんな感じ。

再びアザラシ。

もうめんどくさいから、ゴマちゃん1号、2号でいいや。

1号も2号もおあずけを食らい、時々すねたように、やる気なく目をつむり、薄目を開けて、「早よ次のえさをくれぇ」と言ってるようだが、よく考えればこの2頭、まるで示し合せたかのように目を閉じ、開くタイミングを揃えてくるのはてぇしたもんだ。シンクロ顔負け!…とまで言うのは多分買い被りすぎなんでしょうけど。

そうこうする内、再びお魚もらえそうな気配に、興奮してばちゃばちゃ。水しぶきも上がる。

ぐはーっ。水面すれすれだけど、お魚キャッチだよーん。

いいなー1号。わたしにもちょうだい♡

こうなりゃお色気作戦よん。

濡れた身体のラインも露わに、おねだりポーズをキメる2人。

「カーッ、早よ投げい!」

「そーよ、そーよ。」

…何故か奥の子が亭主で、手前の子が嫁はんに思えてならない私。

この辺でえさを持つ人が誰もいなくなり、ゴマちゃん1号&2号は、「もはや人間どもの前で媚を売る必要なし」とばかりにプールの中をスーイスイと自在に泳ぎ始める。

それを潮に丘の上へ戻ってゆく観光客多数。

 

ほとんど花は終わった後なのか、それでもハマナスの花と実を発見。

苺の葉っぱにプチトマトがなったみたいな実だなぁ…。

道を隔てた向こうは昆布直売所。

ウェルカムドリンクなのか、おばあちゃんにとろろ昆布のお湯割りをもらうが、ごめん!昆布は買わず終い。タダ飲みしちゃった。

確かここでバスに乗り込む時、おばちゃんガイドさんが1人ずつとろろ昆布袋を配ってくれた。嬉しいねぇ~全くカネを使わんでも、最低限の利尻土産が手に入ったわけだ。

 

ここから先は車窓観光。

↓弁天宮。

↓寝熊の岩。

そう言われてみれば、熊ちゃんが腹這いで向こう向いてる気も…。

体の表面がごつごつと荒くれて、何やら大魔神みたいな大熊だが、こう下向き加減だと、潮が満ちたら溺れちゃうよ!

↓人面岩。

渋谷のモヤイ像の首から上の巨大なのが右向いてるみたいにも見えるが、それにしても彫の深い、鼻の穴のデカい、ゴツい男だなぁ。

やはりおデコの縄がポイントなんでしょうね。

「つるニハ○○ムし」にも、頭の平べったいジャイアント馬場にも見えてくる。

↓こういう雲、何雲って言うんでしょうね?

ウリボーがひっくり返って背中でずりずり這ってるようにも、「かわいいコックさん」がサーフボードに乗ってるようにも見える。

沓形と言ったと思うが、街の向こうの港には、やけに大きな客船が停泊中。この日の夕方にはどっかへ向かうと言っていたっけが、すまん、今となってはすっかり忘れた。

右手側草原の向こうに、雄大なる利尻富士。

先ほどのオタトマリ沼からとは丁度反対側からの眺め。

最後の立ち寄り所、利尻空港。

ここで降りる若者もいたが、この先どこへ行くのだろう?

こうして利尻島時計回り一周3時間半の旅もおしまい。

おばちゃんガイドさん、山田邦子調を貫き通し、最後は拍手鳴り響く。

この快感がたまらんのでしょうね…。

さぁお次はこの船で45分。

目指すは礼文島。

次回へ続く。

以上敬称略。