8月5日(金)

 

日本橋―恵美須町/天下茶屋―萩ノ茶屋

 

恵美須町―日本橋

 

日本橋―(なんば)―西梅田/西梅田―(なんば)―日本橋

 

*****

 

前夜訪れた通天閣お膝元に、朝っぱらからやって来た。

脇道に逸れ、まだ開いていない商店街を通り抜ける。

喫茶ドレミのとんがった建物の前に出る。右下の灰色の壁みたいなのは通天閣の脚。

通天閣の股をくぐり抜け、ガチャガチャとした一帯に出た。

去年、来そびれた「喫茶スター」に入る。

意外なほどに洋食メニューが充実している。

あんみつやみつ豆の、下が茶色いサンプルがやけに気になる。

氷の種類も意外と多いが、多分市販シロップを使ったものが大半だろう。その中にあって、「氷フルーツ」は気になる。

ちょっと入り辛い雰囲気だが、思い切って戸を押してみた。

中は広く、大衆食堂とも民芸喫茶ともつかぬ独特の雰囲気。

前の方で寛ぐのは夜のお仕事帰りのお姉様方だろうか?

ポークチャップバーグサンドにも心惹かれるが、ホットケーキ、ミックスジュースにしておく。

どうやらプリンはやっていないらしい。飲み物を頼むと、昼の12時までは、モーニングがサービスでついてくるという仕組み。

モーニングはコロンとしたロールパンに、これまたコロンとゆで卵がつく。

ミックスジュースは色から想像される通りの、オレンジ味が強いもの。コップに赤い店名ロゴが入っているのが如何にも昭和風律義さだ。

ホットケーキは、「バターケーキ」、「小倉ケーキ」、「アイスクリームケーキ」の3種類があったが、オーソドックスな「バターケーキ」にした。

色、形、味から、どうやら自家製ではなく、冷凍の既製品をチンしたもののようだった。

 

*****

 

大阪を象徴する、通天閣をバックに、ふぐ提灯がぶら下がる図。

食い倒れ太郎コスプレのビリケンさん。

写真撮ってるのは一目で観光客とわかる中国人ばかり。

激安床屋脇に、ナヨッとした兄さん発見。床屋さんはともかく、何で美容師さんの男ってこういうイメージなんやろね?

エラいド派手な男物服屋さん。その並びにあるカジュアルな服屋店先に吠える白と黄色の虎の顔は、こう見えてリュックですねん。黄×黒の色合いからして、阪神タイガースのイメージなんか?

ジャンジャン横丁入口の「だるま」親父も、まだこっちにおいど向けてはる。

ジャンジャン横丁へ入る。この喫茶店、一度寄ろう寄ろうと思ってはいるのだが、今回もパスしてしまった。

射的場も開店前は地味だが、縁がギラギラの円看板、鉄道ファンの自分には、京成赤電の「開運号」に見えてしまう。

前は囲碁センターと将棋場が別々だった気がするが…。

↓ここへ来て、こいつらを見る度に思う。

平安神宮でプカプカ浮いとる同族は幸せもんやなー。

それに引き替えお前らは、下手すりゃ数時間後には首刎ねられて、生血飲まれて、ブツ切りにされて、土鍋で煮られて…憐れやのう。

ちょっと前にシネマヴェーラ渋谷で観た「㊙色情めす市場」という映画で、芹明香さんが道行くおっちゃんたちに片っ端から、「なぁおっちゃん、ウチ買おてえな」と声掛けてたのが、この地下道。

JRの線路をくぐり抜け、大通りを渡り、動物園前一番街のアーケードへ向かう。

ここが更なるディープスポットを隔てる一種の結界となっている。

去年初めて恐る恐る入って行った時ほど、フラーッフラーッと所在無げに歩いているおっちゃんの姿は今回は見られなかった。

南海電車の天王寺支線跡が廃線後何十年も経つのにこうして残っているのはすごいことだ。夜は閉鎖される公園となっている。ここで一度アーケードが途絶え、2番街へ入っていく。

途中、脇道を少し入った先にあるのが、オーエス劇場。

相当草臥れた外観だが、ちゃんと営業している。

"OS劇場"というとストリップ小屋を連想するが、ここは大衆演劇の小屋。一度、観に来たいと前から思っている。

劇場側から商店街を望む。ごちゃごちゃとした呑兵衛横丁だ。

商店街を彷徨う内、次なる目的地に辿り着いた。

ニュープリンス

奥に細長く広がる鰻の寝床状態のこの店。

見事におっちゃんばかりであった。

右上方、植え込みの並びにも席があるが、予備なのか、それとも団体用なのか。

神保町の白十字にも似たような中2階席がある。

難波の純喫茶アメリカンの2階も似たようなもんか…。

ほぼ満席の中、漸く一番奥に空きテーブルを見つける。

ここも全ての飲み物にモーニングサービスがセットされる。

ここでもミックスジュース。とことん大阪の色にどっぷり嵌まる。

更に氷ミルク金時を頼むことにした。

いわゆるふわふわ系とは違う粗挽き氷だが、白玉が入り、ミルクもたっぷり。あんこも水分多めの多分缶詰のゆであずきと思しき粒餡。この取り合わせが懐かしい。冷房がガンガン効いていて、ちょっと寒くなってきた。

途中で後から来たおっちゃんと相席になった。腰の低い、感じのいい方であった。

尚も商店街を奥へ進む。

アーケードが途切れたところで、去年は朝から開いている銭湯に浸かったが、今年はちょっと先を急ぐ。入湯は省き、道を左に折れて、飛田新地を突っ切っていく。まだ朝10時前なので、殆どの「料亭」が閉まっているが、それでも時折ピンク色の照明が煌々と照っている。朝の陽射しには不似合いな気もする。

一番奥の、これは正真正銘の料亭・鯛よし百番までやって来た。

この界隈、下手にカメラを向けると、怖いお兄さんに捕まるという話なので、相当用心して「鯛よし百番」だけ今年も撮った。店は暗くなってから開くはずなので、この時間、まだ閑散としている。

早足で料亭街を抜け、商店街へと戻ってきた。

ここから先ほどの動物園前2番街を北へ少し戻り、更に脇に入る。

阪堺電車の今池町電停付近、スーパー玉出脇の商店街を進む。

去年はここから北側一帯をぐるぐる歩き回ってみたが、今回は南側に折れてみた。

おっちゃんたちが所在なさげに屯している。

パッと視界が開けた空き地みたいな場所に、ベニヤ板などの資材が山ほど積み上げられていた。

中にもおっちゃんたちが大勢いる。

そこが噂に聞く三角公園であった。

辺りをうろうろ周ってみた。こっちも碌な恰好をしていないから、案外溶け込んでいる。(と思っている。)

周囲の一角に古着屋があった。古びたジーンズやTシャツが沢山売られていた。値段は確かめていない。

おっちゃんが大半だが、中にはお姉ちゃんといってよいような女の人も少しばかり居た。

去年横を通った四角公園もそうだが、日本のしかも大都市の一角に、こんな場所があるというのが信じられない。流石に道は舗装されてはいるが、これで土埃舞う未舗装道路で、焼けた色した木の電柱に裸電球が灯っておれば、1970年代の世界である。

今回も今池商店街を北へ南へ辺りをうろうろ歩くと、朝から開いている銭湯や、意外なほどにゴージャス仕様の喫茶店があった。

かなり歩き詰めたところで今池商店街へ戻り、西へ進む。

南海電車の萩ノ茶屋駅に出た。朽ちかけたコンクリートの織り成すアーチ型が実にいい味を出している。配管類を覆う金網のフェンスがものものしい。それにしても何で駅の入口がピンクなんやろ?

この日はガード下の甘味処「ハマヤ」はまだ開いていなかった。

南海電車をくぐり抜ける。

駅前交番がものものしい。何だか要塞みたいだ。

このまま尚、西へ進む。昨年も全く同じルートを辿ったから、土地勘ができた。

広い車通りへ出る。少し北へ進み、通りを渡ると、すぐ別の大きなアーケード街が広がっている。

商店街を歩くのが好きだ。その地で生きる人々の息づかいが伝わってくる。

何気なく撮った写真を後で見返して驚いたが、散髪屋の幟に「カット690円」の文字がはためく。そういえば通天閣脇の、あのナヨッとした兄ちゃんの人形が立っていた床屋も700円だったか。大阪ミナミは物価が安いねー。東京だったら、チェーンの激安ヘアーサロンで辛うじて1,000円。床屋ならカットのみで1,700円くらいは平気で取られる。同じ日本なのに、1,000円も違うなんて…。

 

やがて大きな看板が姿を現した。

去年、素通りしてしまったが、今年こそはここへ行こうと心に決めてきた。

鈴成座という大衆演劇の演芸場である。

↓去年も同じようなことを記しているが、レトロな産婦人科発見!

こういう古い建物が溶け込んでいる商店街は東京ではなかなか見られない。

遺構じゃなくて、現役なのだろうか?

大衆演劇昼の部は12時開演ときいてきたが、まだ11時にもならない。

先に小屋を下見する。

隣に「関西ニューアート」という建物が。

今春まで営業していたストリップ小屋であった。

何でも観客参加型のストリップ公演が連日催されていたとかで、昨夏この界隈を初めて訪ねた後、東京に戻ってから調べてみて、初めて知った。

大衆演劇とストリップ。どちらにチャレンジしてみようか迷っている内、残念ながらストリップの方がひと足違いで突如廃業してしまった。

ご覧のように鈴成座は、細道の住宅街にひっそりと佇み、周囲に不思議と溶け込んでいる。

入口奥をのぞき込むと、既に奥の方で今度はおばちゃんたちが数人早くも並んでいたが、その列に混じる勇気はなく、もう少し辺りをぶらぶら回ってみることにした。

 

再びアーケードの先へ先へと歩を進める。

アーケード、尽きた先には何がある?

南海電車の駅がある。

去年、津守という、すっかり時代に取り残されたような都会のローカル駅から南海電車に乗った。

アーケードの尽きる手前のレトロ洋菓子店や、囲碁将棋センターがしっかり残っているのを確認して、元来た道を引っ返す。

どこかで時間をつぶすのに、寄れる喫茶店はないかいな?

この商店街には、チェーンのカフェなどは皆無で、代りに喫茶店が幾つもあった。色々あると却って迷う。

結構いい感じの洒落た上等そうな、似た雰囲気の店が複数ある。こういう街に住んだら退屈しないことだろう。

入口上のアーチ型が印象的な「ESPRESSO」という喫茶店に入ってみた。

またしてもモーニングの恩恵に与ることになった。

完全に食べ過ぎなのだが、くれるというものを断ってしまえるほどドライにはなりきれない。貧乏性にできているということなのだろう。

結構歩き詰めてきたので、冷たい飲み物が欲しくなった。

ニューオーリンズ・アイスという、早い話がアイス・カフェ・ラ・テみたいな飲み物に、デニッシュをつけてもらった。ここでもゆで卵がついてきた。既にこの日だけで朝から3個目のゆで卵である。

食傷なんて贅沢は申さぬことよ。

出されたものは基本的に全部食う。

同じ食パンでも、デニッシュの、油っこいけどザクザクとした食感が、僅かに空いた胃袋を心地良く満たしてくれた。

11時半を少し過ぎた。そろそろいい塩梅。

店を出た。鈴成座のポスターが貼られている。

ここは大衆演劇の下町。

さぁこれから人生初の大衆演劇。

どんな世界が待っていますやら…?!

 

次回へ続く。