8月4日(木)

 

日本橋―(長堀橋)―玉造

 

玉造―西大橋/西大橋―(大正)―福島

 

福島―(大正)―西大橋/心斎橋―梅田

 

梅田―大山崎/大山崎―(淡路)―豊津

 

豊津―恵美須町/恵美須町―日本橋

 

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前回の続き。

 

適当に歩くこと10数分。道がクネッと曲がっている交番前を目印に、暫く南下する。

少し歩くと「まんだらけ」である。

去年初めて来た時にも感じたが、中野の喧騒に比べると、ひっそり閑とした印象を受ける。

一通り回ってみたが、特に欲しいものは見つからなかった。

唯一、ちょっと心惹かれたのが岡江久美子写真集。

確か5,000円位だったと思う。相場だと思っている値段よりは随分安い。

NHK連想ゲームにレギュラーで出ていたのとほぼ同じ頃に出た、この人には珍しくセクシーな雰囲気の写真集だ。思えば去年、同じコーナーで山本みどり写真集を買った。これも相場よりは安かった。

ほぼ同じ時代の、ほぼ同世代の女優の、似たコンセプトの写真集、しかも相場より安いものを1年後に見つけるとは巡りあわせの妙を感じたが、あまり色々な女優の写真集ばかり買い集めてもねー。そう思い、今回はやめにした。

 

ソフトクリームの店が1件隔てて並び、しのぎを削っている。どちらも健在のようだ。

尤もその内1軒は、ソフトクリームとはいわず、牛乳アイスと言っている。

朝から氷ばかり食って、腹が冷え冷えなので、流石に食指は動かなかった。

しかし、この看板、さすがに誇大広告じゃないの?

確かに実物も長ーく伸びてはいるけども。

心斎橋駅を目指す。

しかし大阪という街は、つくづくキャラクター好き、しかも立体像好きな街やねー。アピールの仕方が実に具体的、直接的なんである。

pumaの直営店など、東京だとどこにあるのか知らないが、玄関先にちょこなんと両足揃えて猫族が鎮座する立体像が立っているのは大阪ならではのものだろう。

御堂筋線で梅田まで来た。

階段を上った先のコンコースに駄菓子のディスプレイがあり、ここを通る度に見入ってしまう。

幼少期、ココアシガレットのハッカが嫌いで、オレンジシガレット派だった。あの独特の粉っぽい味が懐かしい。

いつの間にやら、抹茶シガレット、ブルーベリーシガレットなんてのも出来ている。

ずん胴ボディのコーララムネの、いかにもバッタもんといった感じのパッケージデザインが何故か好きであった。

阪急京都線に乗って延々大山崎までやって来た。

途中腹がくちくなり、特急車内で舟を漕いだ。いつしか高槻市を出、しまった!乗り過ごした!と思ったが、長岡天神より先だと気付き、ホッと胸を撫でおろした。

ここで降りるのも初めてである。出入口は1箇所のみ。随分とローカルな感じの駅前である。

ここから延々歩く。下調べでは、西国街道という道をずっと歩く心積もりだったが、いつしか折れる道を間違え、却って遠回りしてしまったようだ。阪急の線路側に真っ直ぐ下り、そこから工場と社宅に挟まれた道をひたすら歩く。心細くなってきた頃、車通りにぶつかった。そこが本来通ってくる筈だった西国街道のようだった。

こんなところに集落が?と思えるほど電車の駅から離れた場所に、古そうな街並みと、それにそぐわない大型スーパーが同居している。店頭がすっかり日に焼けた新聞紙で覆われた八百屋、昔ながらの佇まいを見せる化粧品屋、それらの前を歩く。目的地は間近なはずだが…。

漸く辿り着く。昭和湯

はためく暖簾をくぐった中の沓脱ここからして広い。

戸を開くと番台だ。ここはこう見えて大阪府の北のはずれ。しかしあまりに遠いせいか、大阪府公衆浴場組合には入っていないようで、入浴料は410円と相場より安いのが嬉しい。

脱衣所も、更に浴室も広々としていて、開放的。

夕方の4時半と、まだこの季節は日が煌々と照っている時間だったので、開け放たれた前栽も、ゆったり余裕があって更に開放感が増す。

浴室は男女境の仕切り壁際に、ズラッと浴槽が並ぶ造りだが、深い浴槽の手前が半円形に突き出しているのが何だか愛嬌がある。そして奥の壁上方にドーンと女湯に跨り描き出されるは雄大なる富士の山。

タイルが多用されたレトロ感溢れる浴室は、昭和湯というその名に恥じぬ佇まいだが、決して古臭い風情ではなく、こざっぱりとした粋な表情に思えたのである。

湯から上がっても尚、日は高かった。

ああ、昼風呂の何たる贅沢さ!

昼日中人々がまだ忙しく立ち働く中、こうして逸早く活動から自らを解き放ち、のんびりと湯に浸かる。その快感は、或いはいけないことをしているんじゃないかという背徳感のなせる業か?はたまた、まだそんな年でもないのに、一足先に極楽浄土へ昇天せんとする楽隠居気分を垣間見たるがゆえか?

 

幼少期、京都へ出かけるといえば専ら国電、しかもガラ空きの新快速ブルーライナーに乗るのが常で、阪急で京都へ行くなど、随分後で単独行動が許される身となってからだった自分にとって、車窓に迫るサントリーの工場の風景は、もうすぐ京都という目印であった。

そのずっと手前にあたるこの街を、こうして何十年も経った後、銭湯目当てに訪ねようとは、全く夢にも思わなかったのである。

今度こそ西国街道を道なりに…と思いながら、結局来た道に逸れた。

人影はあまりなかったが、それでも少しは人がおり、前を歩く若者や、若くはなさそうな女性らに、何とはなく付いてゆくと、それは阪急の駅へと向かう近道で、しかし他所者には決して窺い知れぬ細道であった。

まだ見ぬ目的地をあてどもなく探し当てる行きに比べ、目的を達した後の帰路は何とも気が楽で、足取りも軽かったのだろう。いつしかひっそりと佇む駅前に着いていた。

 

そろそろ日が傾いてきた駅で、電車を待つ。何故か京都方面の電車ばかりがやって来る。

漸く大阪へ向かう電車が来て、それに乗り込む。

暫くの間新幹線と併走する。随分昔、新幹線が開業する前、先に出来上がった真新しい新幹線の線路を、阪急電車が先に走ったという逸話がある。阪急の線路を新幹線に並ぶように高架線にする工事をやっている間、そういう措置が取られたとのことだ。

時折新幹線が走り去ってゆくが、スピードがまるで違うので写真も撮れない。

後で地図で見てみたが、その向こう側は、太い川が何本も合流し、淀川になる場所で、その対岸を京阪電車が通っている。新旧両京阪線が一番近寄る場所である

てっきり準急が来たとばかり思っていたら、普通車だったことに、高槻市を出た辺りで気付いたが、今更混む特急に乗るのはいやで、そのまま淡路まで乗り通した。

線路をくぐり、河原町方面のホームへ出た。さすがに夜6時にもなると、ラッシュである。

近年種別幕が緑から青に変わった快速が来たので、思わず側面の一体幕にカメラを向ける。マルーンの電車に青色の幕は新鮮に感じる。

否、一つ先例があった。昔宝塚が高架駅になる時、今津(北)線が1駅手前の宝塚南口行と宝塚行が交互に走った。その時、誤乗防止のため、宝塚南口行が青幕だったことがあったか…。

近年だと、東急大井町線が溝の口まで直通する前、二子玉川の中央林間方か渋谷方かどちら側のホームに着くかで緑と黒で色分けしていたことや、今なら同じ東急の大井町線で各停が二子玉川から溝の口まで、外側線を各駅に停まるか、内側線を通過運転するかで、行先表示の色を使い分けている例もある。

快速を見送り、北千里行普通に乗る。またしても帰宅途上の女子高生か中生か、女学生の集団に出くわす。体格が貧弱な男の子も一緒に居たから中学生かな?夏休みじゃないのか?近頃は、こんな夏休みのまん真ん中にわざわざ登校日があるのだろうか?だとしたら学校も意地悪だ。

やがて電車は豊津という駅に着いた。カーブしたホームに降り立つ。ここで降りるのも初めてだ。

駅の南側すぐに川が合流している。草がぼうぼう生え、大阪郊外の電車の駅を降りてすぐとは到底思えぬような長閑な風景が広がる。とりあえず川沿いに歩いてみることにした。

下調べとは既に道から外れている。所々架かっている橋の向こうに随分古臭そうなアパートを見つけた。

ボロアパートある場所に銭湯あり。

自分の中にそんな格言がある。

橋を渡り、そのアパートを横目に見ながら土手から緩く下ってゆく道を進む。閑静な住宅街の奥に、思った通り煙突が見えた。通りを回り込むと、七福温泉である。

途中からポツリポツリと雨が落ちてきた。迫りくる雨から風呂屋に逃げ込んだ格好となった。

何といってもこのデーン!とのしかかったような重厚な屋号がいい。どんよりと雨模様と化した夏の夕暮れ時を更に重苦しい気分にさせてくれるような、昭和な佇まい以外の何物でもない雰囲気。私は大好物でっせ!

先ほどの昭和湯もそうだったが、ここも結構先客がいた。地元のおっちゃんばかりである。

番台奥に広がる(…って当然か?!)脱衣所は適度にごちゃごちゃっとしていて、阪神タイガースの野球中継をやっていた。いいね、関西は。適度に野球中継があって。東京なんて今じゃ碌に野球もやらない。やったとしても、嫌いな読売(…あそこだけ“巨人”なんて呼びたくない…)。今や、その読売戦よりも詰まらんトークバラエティの長尺ものばかりやってる。TV局が製作費をケチって、チープな番組ばかり作る時代、テレビ離れが生じるのも当然だ。要するに、見ても見なくてもどうだっていい番組しか見当たらないということである。

 

浴室は意外なほどに充実していて、深浅両浴槽の他、ジェット、薬湯、奥にはサウナ、電気風呂、打たせ湯まであった。それにあれは蓮だろうか?水面に落ちた花のタイル、それに魚のタイルもあるぞ。

 

雨が気になる。雨足が弱まったか、先客の地元のおっちゃん連中がぽつりぽつりと帰っていく。

1人残ったおっちゃんに話しかけられる。

「今年のタイガース、あかんなー」

「ほんまですねー」

関西弁が喋れて、ほんまよかった。

 

*****

 

元来たのとは違った道をそのまま北上する。家がごちゃごちゃ立ち並ぶ迷路みたいな古い住宅街。

適当なところで土手に出て、川沿いを駅に戻った。もうすっかり日は落ちた。駅前の車通りを斜めに横切り、上りホームへ。丁度折よく地下鉄直通の電車がやってきた。

この日、この後どこへ行こうか、少し迷っていた。

一つはこの前行きそびれた、船場自由軒へ行くこと。

もう一つは、一足先に通天閣足元へ行くことである。

氷ばかり立て続けに食べたせいで、腹はあまり減ってはいなかった。

洋食をいっぱい詰め込める余裕はなさそうに思われた。

この電車に乗っておれば、折角真っ直ぐ連れてってくれるのだ。それで通天閣のお膝元、恵美須町へ行くことにした。

ライトアップされた通天閣もオツなもの。股の下にはご覧の通り、コテコテとは似つかわしくない孔雀に牡丹が広がっている。婦人化粧品の広告なのである。

すぐ脇に店を構える喫茶店「ドレミ」

去年初めて訪ねた時いた、あの愛想のいいおっちゃんはおられるやろか?

この夥しいサンプルを見せつけられてはもう誘惑が止まらない。

「いらっしゃいませー」明るく迎えてくれたのは、去年と変わらぬジーンズに丸眼鏡、刈り上げた白髪混じりの髪型がよお似合うおっちゃん。

中はそこそこすいていた。さて何にしよ?

見慣れない飲み物に目が留まる。

「チョコレートミルクセーキ」

何じゃ、そりゃ?じゃ、飲み物はコレ。

夜8時とはいえ、先ほどの通り雨はどこへやら。もしかしてそのせいで却って蒸し暑いのか?氷はやはり欠かせませぬ。去年と同じ、個性際立つパインフラッペで決まり。

実は今回、こちらの店で是非味わってみたいメニューがあった。ホットケーキである。

美味いんだそうな。去年の時点で知っておればねー。

「ちょっと、時間かかりますゥ」とバリバリの関西弁で、件のおっちゃんに断りを入れられたが、何構うもんか。この日はここが終着点だ。

最初に来たのは冷たい系2種。チョコレートミルクセーキとは、ミルクセーキを入れる器の内側に予めチョコソースをかけたものであった。ミルクセーキだけでも甘いのに、そこに甘々のチョコレートシロップが混じるのだ。

どんだけ甘いねん!とツッコミを入れたくなるほどの甘さだと思ったが、相対的にミルクセーキがアッサリ淡泊に思えてくるから、人間の舌というのは不思議なものだ。

こっちも大のチョコ好きだから、欲をかいてストローの先っちょでコップの内側にへばりついたチョコシロップをカイカイと掻き出してはミルクセーキと混ぜて飲みたがる。その内、折角美しい模様を映し出していたコップが何やら混沌としたぐちゃぐちゃの模様に化けていった。虎縞ここに崩れたり。

その濃厚甘々ミルクセーキと好一対をなすのがパインフラッペ。こちらの瑞々しさが甘々地獄(?)のぬかるみから、我が舌を救い出す一服の清涼飲料水となった。…って普通、逆。

さてお待ちかねのホットケーキ。ぽってりとしたフォルムの印象に違わず、表面はカリッと中は適度にしっとり…というよりかは、粉もんの印象が勝るか?たっぷりマーガリンを塗りたくり、メープルシロップを惜しみなく投下。さながら灼熱の砂漠にサーッと染み入る雨滴の如し…というは聊か譬えがオーバーに過ぎようか。

前の日に食べた福島のダイヤのも同じ系統に思えたが、こういう分厚くて、口に放り込めば水分を吸いまくるタイプのホットケーキ、私は大好きだ。

どこをどう見ても手作りの、飾らぬ、それでいて自分で真似ようにも真似られない、いつまでも絶えてほしくないホットケーキである。

出がけに件の給仕担当(?)のジーパンのおっちゃんに、「ホットケーキ美味しかったです!」と告げたら、厨房のほうを向いて「いやぁ召し上がってもらえてよかったですわ。あちらの方の自信作ですねん。プリンも美味しいですよ。今度是非!」

総白髪のコック服が誇らしげな、あの方がマスターであろう。調理に勤しむ風格ある老爺にはまだちょっとありそうなベテラン職人の姿が見えた。どことなく給仕担当のおっちゃんと風貌が似ている気がする。

もしかして息子さん?

しまった、聞くの忘れてもうた。

外に出てからそう思った。

ライトアップされた色とりどりのサンプルから目が離せない。

しっかりプリンのサンプルもある。

この店の「king of dessert」って何やろ?

…やっぱり、この「フルーツ盛合せ」かな?氷が下に敷かれてる?!

パインメルバー、ピーチメルバー、バナナローヤル…気になるわ。勿論、プリンローヤルも。

ホットケーキを食べて満足…のはずが、何や、プリン食べにまた来たくなってきたなー。

そんなことを思いつつ、通天閣の股ぐらから徐々に北へと遠ざかる。

何や左上の写真、浮き輪したマジンガーZがミニスカート姿で足拡げて踏ん張って、花柄パンツ見えてしもたって風に見えません?

ミナミからだと阪急直通もまだ混まないのか、帰りの電車はガラ空きだった。

前に記事にした1300系という新型電車も、徐々に増えてきとるなぁ。

この日は地上出口に韓国人娼婦か、はたまたアカスリ姉ちゃんか、呼び込みはいなかった。

道頓堀川をふと覗くと、うわっ水草が繁殖しとる!

大阪なだけに、何や、どろどろソースのお好み焼きにまぶった青のりに思えてしゃーない。

 

次回へ続く。