何年か前、地元のブックオフで偶々見つけ、立ち読みしたのが本作。
1977年のスーパーカーブームのさなか、小学生だった私にとって、やはりスーパーカーの王者といえばランボルギーニ・カウンタックである。
今でこそ『笑点』の座布団運びのイメージしかない山田隆夫氏だが、東京12チャンネル(当時)の『対決!スーパーカークイズ』という番組で司会をやっていた。
「♪スーパーカー スーパーカー ぼくのあこがれ ぼくの恋人 スーパーカー…」
というオープニングに加え、番組後期からは「スーパーカーなーんちゃって」というおふざけソングも加わり、まさに山田隆夫節全開。
「♪ポッポッポルシェは930 となりのターボがいっていた
お昼のランチャ 何クーペ? パンサーパンサー 値段はエクラ?
5円 10円 シトロエン これじゃーちっとも モーガーンない
トイレはどこだ? BMWで な~んちゃってネ…」
あまりに懐かしすぎる動画というか静止画像&音楽があったので、貼っておこう。
番組終盤は、筑波サーキットでスーパーカー2台のガチンコレースというのがお定まりのパターンで、バックに流れる映画『ロッキー』のテーマ曲がやけにカッコよく思えたものだった。
そんなスーパーカーブームもやがて鎮静化。私は結構しつこくブームにしがみついていた方で、「スーパーカーマジック定規当」も第4弾を友達とお金を出し合って箱買いもしたし、親にねだり倒して童夢零のラジコンを買ってもらったりもした。
個人の経験を少し語ると、スーパーカーブームが過ぎ去ろうとしていた頃が丁度小5に上がる時で、それまで通っていた小学校が2つに分かれ、多くの友達と別れることになってしまった。
新しくできた友達と鉄道趣味で意気投合し、一気にNゲージへ傾倒してゆく。ブルトレブーム、絵入りヘッドマークの国鉄特急ブームが来たのはその後であった。
その後、私はカーマニアにはならなかったし、運転するようになってからも碌に車いじりもしない。
だが、当時のスーパーカー少年だった頃の情熱は少しは残っている。
だからつい最近も「童夢―零のすべて」なんてムック本を見かけると、思わず衝動買いしてしまいそうになる。NEKO MOOKの「カウンタック」は前に買った。探しても見つからなかったが、今も家のどこかにある。
*****
さて本作。
梅澤春人氏が手掛けた作品で、調べてみたら2004~2012年に「週刊ヤングジャンプ」に連載され、既に完結。コミックスは全28巻とかなり長い。
これを買い揃えるのもかさばるからなーと思い、12~3年ぶりに漫画喫茶へ行ってみた。
近年の作品だし、どこにでもあるだろうと思って、新宿地下の店へ適当に入り、3時間コースを選んでいざ探してみたら、全く見つからない。すっかり当てが外れた。このままでは3時間分のカネが無駄になる。
そこで代役として、ひと足先に記事にした『ドカベン・ドリームトーナメント編』を手に取った。
その後、ネットで検索し、今度は本作を置いてある店をきちんと調べた上で、別の漫画喫茶へ行ってみたが、3時間かけても漫画とはいえそう簡単に読み飛ばせるものでもなく、かなりすっ飛ばしても10巻まで読むのが精一杯であった。
本作は青年マンガで、早い話がドリフト走行などでカーレースをする場面が見せ場だから、見開きでダイナミックな画が沢山出てくる。
少女マンガのような細かな字のセリフのオンパレードではない。
それでも全28巻を読み切るには、漫画喫茶にトータルで9時間ほど入り浸らねばならない計算となる。
2度目の漫喫行を果たせぬまま、年の瀬を迎えてしまった。
早く続きを読みたいのに、なかなかその時間が取れない。
コミックス全巻揃いの古本相場は、4,000円代。
ならばいっそのこと買ってしまえ!
そうすれば時間を気にすることなく、好きな時に幾らでも読めるではないか。
結局大人買いしてしまった。
*****
物語の主人公は空山瞬(そらやましゅん)。34歳、独身のサラリーマン。
カネなし、女なし、クルマなし。
3ヶ月かけて口説いた女に振られ、ヤケ酒をあおっていた時、実家から1通の手紙が送られてきた。それは小学生だった瞬が、25年後の自分に宛てたものだった。
当時はスーパーカーブームの真っ最中。
社長になって、ランボルギーニ・カウンタックLP400を買う夢をかなえていると思います、と書かれたハガキと、LP400のスーパーカーカードが入っていた。
瞬は夢を叶えられなかった自分のショボイ人生が情けなくなる。
高卒後上京してフリーター生活。それでもカネをためて24歳の時、トヨタMR2(AW11)を買い、仲間と峠を攻めに行き、ドリフト走行を得意とする走り屋になった。
だが28歳の時、父親が倒れたのを機に、車を手放し、走り屋をやめ、現在の4流会社に就職した。
今からでも遅くはない!
瞬は奮起し、LP400を手に入れる夢を叶えようと決心する。
だが色々調べていく内、それは決して簡単な夢ではないことがわかってきた。
カウンタックLP400は僅か150台しか生産されず、稀少価値がついている。
そんなある日、瞬は、ワンオーナーのカウンタックLP400を譲るというホームページを見つける。その条件は、何故LP400が欲しいのか、理由をメールで送るというものだった。
半信半疑に思いながらも、瞬は自らの夢と想いを送った。
返信がなければ条件が合わなかったと思えと書かれていたが、僅か1時間後に瞬に譲るという返信が来た。
指定された場所で待つ瞬の前に現われたのは、ロールスロイス・ファントムから降り立った若い女性。彼女は早乙女若奈と名乗り、大富豪・浦島龍童の秘書だという。瞬の見立てでは24~5歳くらい。流麗な美女だ。
彼女に導かれるままに浦島の屋敷へ案内される瞬。
運転手だと思っていた人物こそが、当の浦島龍童その人であった。
浦島老人は浦島グループという数々の会社の会長を務める人物。にもかかわらず気さくな飄々とした態度で、瞬を中に招じ入れる。
姿を現したのはコンコルド。
度肝を抜かれる瞬。
浦島老人は、カウンタックLP400を瞬に見せ、瞬の本気を確かめると、250万円という破格値で譲り渡した。
「クンタッシ!」
浦島老人が瞬にそう言った。それはイタリア南部の方言で「素晴らしい!」という意味の感嘆詞。原語表記すれば「Countach」。まさに「カウンタック」のことなのだ。「カウンタック」という発音は日本独自のもの。
浦島老人が瞬にLP400を破格値で譲り渡すことにした理由。それは彼を最も感動させたのが瞬の夢と想いだったからであった。
早乙女のレクチャーのもと、早速カウンタックの試乗に街へ出る瞬。
ハンドルを握った瞬は、持ち前の走り屋気質を取戻し、人が変わったように自信に満ちた姿になる。
カウンタックのオーナーとなったことで、様々な人たちと知り合い、刺激的な日々を送ることになった瞬。
目立つ車を転がすことで、勝負を挑んでくる連中が後を絶たない。
早乙女とはカウンタックを通じて信頼関係を深め、「早乙女ちゃん」と呼ぶようになる。
瞬は挑まれた勝負の度に、非常に高度な運転技術を発揮。どんな局面でも圧倒的な強さを見せる。
物語が進むにつれ、瞬が運転する車はLP400ばかりではなくなっていくが、そこでも瞬は初めての車にもすぐさま順応する高度な柔軟性を見せ、因縁を吹っかけてくる連中を蹴散らし、又、カーレースを通じて仲間を得ていく。
青年誌連載作だけに、当初は瞬の対決相手として登場するも、後に瞬に好意を抱くようになるポールダンスダンサー・立花樹利(たちばなじゅり)と、早乙女ちゃんのセクシーショットが度々登場し、我々男性読者の目を楽しませてくれるが、途中で彼女たちと瞬の恋物語に話がシフトしたりすることなく、あくまでカーレースに主軸を置いたストイックな展開に終始した。
特に早乙女ちゃんは、よきアドバイザーとして瞬とはいい雰囲気になり、互いに好意を抱くが、遂にその思いを告げることのないまま、物語は終わる。
物語終盤、瞬が子供の頃に描いた夢の車が、浦島老人の目に留まる。
浦島老人自身も大変な車好きで、幾多のレースに出ていたが、ある時大事故を起こし、妻に2度とレースをしない約束までした。その妻も亡くなって10年。浦島老人は最後のレースとして「アルティメットラン」への参加を決意する。
その時、乗る車として瞬の子供時代の“夢の車”を本格化し、開発したのが「メビウス」。
浦島老人は「メビウス」でレースに参加するも、ゴール直後にクラッシュ事故を起こし、運転不能に。決勝のレースを瞬に託し、瞬は見事その期待に応える。
「メビウス」は更に進化し、新型電気自動車となる。
その命名は瞬に託され、「ヒエロ」と名付けられた。
「ヒエロ」は世界的に売り出されることとなり、新会社が設立される。
浦島会長は瞬に大きな選択を迫る。
「LP400を手放すことと引き換えに新会社の株式50%を与えられ、アメリカに移住して社長となる」
「今まで通り、LP400と一緒に、一サラリーマンとして暮らす」
そのいずれかだ。
社長かLP400か?
瞬にとって、それは子供の頃に思い描いた2つの夢のいずれかを選べという、非常に悩ましいものとなったが、瞬はLP400との絆を信じ、またいつか再会できる日が来ることを信じて、社長への道を選ぶ。
準備に追われる瞬。早乙女ちゃんとも暫く会えていない。それが少し寂しい。
浦島会長は、瞬に、社長ともなれば色々手伝いが必要だろうと、秘書をつけてくれるという。
そうして新しい秘書として瞬の目の前に現れたのは、早乙女ちゃんその人であった。
**********
カウンタックLP400が、本作のもう一つの主役である。
リアルタイムでスーパーカーブームにどっぷり浸かった身からすれば、当時の一番人気はカウンタック、わけてもカナダの石油王・ウォルター・ウルフがランボルギーニ社に特注した「ウルフカウンタック」が一番人気で、当時「LP500S」と言われていた。
「LP500S」は3種類ある。
最も有名な「赤」。これは1号車。今も日本にある。昨秋偶々日比谷で東京モーターショー記念パレードに遭遇し、思いがけず現車を間近で拝むことができた。




他には「青」の2号車、「濃紺」の3号車がある。
スーパーカーブームのさなか、当時、トミカというミニカーに外国車シリーズというのがあって、既に小学生半ばだった私は、箱も捨てずに取っておき、本体にも傷をつけないよう大切に扱って、今も手元に置いてある。
当時住んでいた鷺宮という町の駅前のおもちゃ屋で、4台セットに入っていた青というより濃紺の「LP500S」のトミカを羨望の眼差しで見つめていたら、店のおじさんがセットと入れ替えて単品で売ってくれた。それが当時の一番の宝物になった。
余談になるが、当時「LP500S」に負けない人気だったのが、黒地に白いラインの「LP500R」。
トミカのカウンタックは「LP400」と「LP500S」の2種類がラインナップされていたが、「LP400」が赤色だった関係上、「LP500S」は当時誰しもが真っ先に思い描いた赤ではなく、「LP500R」を彷彿とさせる黒で、何故か金色のライン、リアスポイラー(当時は“ウィング”とみんな呼んでいた)の形は、「R」ではなく「S」のもの、というのが通常品であった。

(いずれも、後に出た「プレミアム」ではない)
個人的には「LP500S」こそ赤、そして「LP400」は黄色が相応しかったのではないかと思っている。1977年夏のコカコーラの王冠裏のスーパーカーイラストキャンペーンでピンクレディーが両側にぶら下がっていた姿が強烈で、どうしても黄色というイメージが今でもあるのだ。
「ウルフカウンタック」1号車――通称赤の「LP500S」も、本作に登場する。引きこもりのネットトレーダーの青年・神谷聖が、瞬の大家の隣人なわけだが、彼が実はそのオーナーだった。
最初は、運転免許もないまま、ガレージ内に誰の目にも触れることなく飾っておけさえすればよいと思っていたが、瞬と早乙女ちゃんの尽力で、サーキットで走らせることができた。それをきっかけに後に免許を取り、三重の実家へ戻り、カウンタックの運転を楽しむようになった。
子供の頃の私は、スペシャル仕様の「LP500S」や「LP500R」に魅かれていたが、後によりシンプルな造形の「LP400」のほうを美しいと思うようになった。
Wikipediaに詳しいが、当時「LP500S」と呼ばれた「ウルフカウンタック」は、LP400のスペシャルモデルなので、LP400こそがオリジナルだといえる。
後の1982年、市販車種として「LP500S」という型が登場し、323台が生産された。今ではこちらが正真正銘の「LP500S」ということになる。ややこしい。
カウンタック好きにとっては釈迦に説法だが、何故「S」がつくのかといえば、試作モデルとして「LP500」が存在したからである。
この「LP500」こそ、マルチェロ・ガンディーニによるオリジナルデザインで、細かなことは省略するが、後の量産型に比べると随分のっぺりつるんとした印象を受ける。
エンジンが強力すぎて、又ボディーの放熱対策が不十分だったため、オーバーヒートを繰り返した。その対策として途中でエアインテークやダクトが追加され、オリジナルのスマートさは幾分損なわれ、無骨さが増してしまった。
最後はクラッシュテストに供されたため、現存しない。
→参考URL
だが、個人的には、今ではこの「プロトタイプ・カウンタック」こと「LP500」こそが最も美しいと感じる。
一時期、京商から1/18というかなり大ぶりなカウンタックのミニカーが相次いで発売された。
「LP500」から「LP400」へ至る途中で試作されたという緑色のモデル(側窓の形が量産型とは異なる)まで出たので、「次はLP500!」と期待したが、結局出ることはなかった。
実車が現存しないので、資料が十分でなかったのだろう。もしこれが出ていれば、絶対に買ったと思う。
*****
本作は自動車レースがメインなだけに、多くの車が登場するが、主役がカウンタックLP400なだけに、往年のスーパーカーの登場が多い。
早乙女ちゃんの愛車・ポルシェ928GTSを始め、ポルシェ911カレラにターボ、フェラーリだと365GT4BB、246GT。ランチャ・ストラトスにデ・トマソ・パンテーラ、シボレー・C2コルベット スティング・レイ。
ランボルギーニだと、ミウラSに、ミウラSV。
そして極め付けはイオタが出てくることだ。本作中でも正体不明の幻の車として、他とは一線を画す強烈なオーラを放っている。
勿論新しい型の車も多数出てきて、スペックでは明らかにカウンタックLP400を上回るはずなのだが、主人公・瞬が操るのがLP400だけに、そう易々とLP400が負けては話にならない。
性能では上回っても、瞬の類稀なドライブテクニックによって、1970年代のスーパーカーであるLP400が勝利を収める展開が繰り返される。
新しいものほど高スペックなのは、車に限らず、例えばオーディオ機器などでも同じだが、デザインまで含めると、流行り廃りがあるだけに、何でも新しいものが勝っているとは言い切れない。
本作を読むと、とりわけカウンタックの先鋭的なデザインは、古さを感じるどころか、後のバブル期のフェラーリなどよりも遥かに強烈なインパクトを与え、もっといえばカッコいい。
何年か前、ランボルギーニ・ミウラが、往年のデザインをほぼ踏襲して復活するというニュースをインターネットで見たが、あれは一体どうなったのだろう。
多くの方があちこちで書かれていることをなぞることになってしまうが、本作の終盤に出てくる「メビウス」に「ヒエロ」。六角形をモチーフにした未来志向のデザインだが、あまりカッコいいとは思えない。
驚いたことに、この「ヒエロ」が実車として製作され、東京モーターショーにお目見えしたことがあるらしいのである。
リンクを貼っておきます。
六角形ベースの各パーツが、ミツバチの巣みたいに見えるせいなのだろうか…?!
漫画みたいな(~って、元々漫画に出てくる車なわけですが~)現実味に乏しいデザインが却ってダサく感じてしまうのか?!
物語終盤、「カウンタック」だったはずの本作の主軸が、すっかりこの「ヒエロ」にシフトしてしまったのが残念。
個人の好みで勝手なことを書かせてもらえば、タイトルが「カウンタック」なのだから、どうせ作るなら「プロトタイプ・カウンタック」こと「LP500」を、ミウラよろしく最新技術を纏わせてデザインだけ復活させる野望を浦島老人が抱き始めたとでもしたほうが、カウンタックぶりが徹底できたのでは…という気もする。
尤も例え漫画上での出来事とはいえ、オリジナルデザインを手がけたマルチェロ・ガンディーニへの配慮を無視できないといった大人の事情があるのかもしれない。
この「LP500」のボディーは黄色。今日インターネット上でヒットする画像には、さながらフェリーニ映画のヒロインのようなゴージャスひだひだドレスを身に纏ったやけにド派手なお姉ちゃんが、車の傍に決まって侍っている。
つるんとした鋭角的なデザインは、ピニンファリーナが手掛けた「512S」ともどこか相通ずるものを感じる。あちらも黄色。
プロトタイプやコンセプトカーに黄色い車体が多いのは何故なのだろう?
かつてのスーパーカーブームのきっかけとなった『サーキットの狼』には数多くの車が出てくるが、その中にフェラーリ・ディノRSという赤い車があった。当時の安いプラモデルでは「フェラーリ ディノ スペシャルレーシング」という名前だった。
→参考URL
スーパーカーブームのさなかでも、この車だけは全く馴染みがなかったが、漫画では「フェラーリ・ディノ246GT」を徹底改造して作られたことになっている。
デザイン上は、「ピニンファリーナ・ディーノ206・ベルリネッタ・プロトティーポ・ コンペティツィオーネ」という、やけに長い名前のコンセプトカーがベースになっていたことを後で知った。この車も車体は黄色である。
→参考URL
自分は走り屋はおろか車道楽でもない。元々、漫画喫茶で読んで終わりにしようかとさえ思っていた。一回読んだらもういいかな…という気もしないではない。
ただ、どんどん読み進められて面白い作品だし、カウンタックへの愛が感じられる。瞬と早乙女ちゃんが最後までくっついてしまわなかったところもいい。そのほうがピュアでストイックな車好きを思わせる。それで、今のところ手元に残している。
思い切って1/43の「LP500」のミニカーを買ってしまおうか?
こんな文章を綴ると、いよいよそんな気になってくる。
1977年のスーパーカーブームのさなか、小学生だった私にとって、やはりスーパーカーの王者といえばランボルギーニ・カウンタックである。
今でこそ『笑点』の座布団運びのイメージしかない山田隆夫氏だが、東京12チャンネル(当時)の『対決!スーパーカークイズ』という番組で司会をやっていた。
「♪スーパーカー スーパーカー ぼくのあこがれ ぼくの恋人 スーパーカー…」
というオープニングに加え、番組後期からは「スーパーカーなーんちゃって」というおふざけソングも加わり、まさに山田隆夫節全開。
「♪ポッポッポルシェは930 となりのターボがいっていた
お昼のランチャ 何クーペ? パンサーパンサー 値段はエクラ?
5円 10円 シトロエン これじゃーちっとも モーガーンない
トイレはどこだ? BMWで な~んちゃってネ…」
あまりに懐かしすぎる動画というか静止画像&音楽があったので、貼っておこう。
番組終盤は、筑波サーキットでスーパーカー2台のガチンコレースというのがお定まりのパターンで、バックに流れる映画『ロッキー』のテーマ曲がやけにカッコよく思えたものだった。
そんなスーパーカーブームもやがて鎮静化。私は結構しつこくブームにしがみついていた方で、「スーパーカーマジック定規当」も第4弾を友達とお金を出し合って箱買いもしたし、親にねだり倒して童夢零のラジコンを買ってもらったりもした。
個人の経験を少し語ると、スーパーカーブームが過ぎ去ろうとしていた頃が丁度小5に上がる時で、それまで通っていた小学校が2つに分かれ、多くの友達と別れることになってしまった。
新しくできた友達と鉄道趣味で意気投合し、一気にNゲージへ傾倒してゆく。ブルトレブーム、絵入りヘッドマークの国鉄特急ブームが来たのはその後であった。
その後、私はカーマニアにはならなかったし、運転するようになってからも碌に車いじりもしない。
だが、当時のスーパーカー少年だった頃の情熱は少しは残っている。
だからつい最近も「童夢―零のすべて」なんてムック本を見かけると、思わず衝動買いしてしまいそうになる。NEKO MOOKの「カウンタック」は前に買った。探しても見つからなかったが、今も家のどこかにある。
*****
さて本作。
梅澤春人氏が手掛けた作品で、調べてみたら2004~2012年に「週刊ヤングジャンプ」に連載され、既に完結。コミックスは全28巻とかなり長い。
これを買い揃えるのもかさばるからなーと思い、12~3年ぶりに漫画喫茶へ行ってみた。
近年の作品だし、どこにでもあるだろうと思って、新宿地下の店へ適当に入り、3時間コースを選んでいざ探してみたら、全く見つからない。すっかり当てが外れた。このままでは3時間分のカネが無駄になる。
そこで代役として、ひと足先に記事にした『ドカベン・ドリームトーナメント編』を手に取った。
その後、ネットで検索し、今度は本作を置いてある店をきちんと調べた上で、別の漫画喫茶へ行ってみたが、3時間かけても漫画とはいえそう簡単に読み飛ばせるものでもなく、かなりすっ飛ばしても10巻まで読むのが精一杯であった。
本作は青年マンガで、早い話がドリフト走行などでカーレースをする場面が見せ場だから、見開きでダイナミックな画が沢山出てくる。
少女マンガのような細かな字のセリフのオンパレードではない。
それでも全28巻を読み切るには、漫画喫茶にトータルで9時間ほど入り浸らねばならない計算となる。
2度目の漫喫行を果たせぬまま、年の瀬を迎えてしまった。
早く続きを読みたいのに、なかなかその時間が取れない。
コミックス全巻揃いの古本相場は、4,000円代。
ならばいっそのこと買ってしまえ!
そうすれば時間を気にすることなく、好きな時に幾らでも読めるではないか。
結局大人買いしてしまった。
*****
物語の主人公は空山瞬(そらやましゅん)。34歳、独身のサラリーマン。
カネなし、女なし、クルマなし。
3ヶ月かけて口説いた女に振られ、ヤケ酒をあおっていた時、実家から1通の手紙が送られてきた。それは小学生だった瞬が、25年後の自分に宛てたものだった。
当時はスーパーカーブームの真っ最中。
社長になって、ランボルギーニ・カウンタックLP400を買う夢をかなえていると思います、と書かれたハガキと、LP400のスーパーカーカードが入っていた。
瞬は夢を叶えられなかった自分のショボイ人生が情けなくなる。
高卒後上京してフリーター生活。それでもカネをためて24歳の時、トヨタMR2(AW11)を買い、仲間と峠を攻めに行き、ドリフト走行を得意とする走り屋になった。
だが28歳の時、父親が倒れたのを機に、車を手放し、走り屋をやめ、現在の4流会社に就職した。
今からでも遅くはない!
瞬は奮起し、LP400を手に入れる夢を叶えようと決心する。
だが色々調べていく内、それは決して簡単な夢ではないことがわかってきた。
カウンタックLP400は僅か150台しか生産されず、稀少価値がついている。
そんなある日、瞬は、ワンオーナーのカウンタックLP400を譲るというホームページを見つける。その条件は、何故LP400が欲しいのか、理由をメールで送るというものだった。
半信半疑に思いながらも、瞬は自らの夢と想いを送った。
返信がなければ条件が合わなかったと思えと書かれていたが、僅か1時間後に瞬に譲るという返信が来た。
指定された場所で待つ瞬の前に現われたのは、ロールスロイス・ファントムから降り立った若い女性。彼女は早乙女若奈と名乗り、大富豪・浦島龍童の秘書だという。瞬の見立てでは24~5歳くらい。流麗な美女だ。
彼女に導かれるままに浦島の屋敷へ案内される瞬。
運転手だと思っていた人物こそが、当の浦島龍童その人であった。
浦島老人は浦島グループという数々の会社の会長を務める人物。にもかかわらず気さくな飄々とした態度で、瞬を中に招じ入れる。
姿を現したのはコンコルド。
度肝を抜かれる瞬。
浦島老人は、カウンタックLP400を瞬に見せ、瞬の本気を確かめると、250万円という破格値で譲り渡した。
「クンタッシ!」
浦島老人が瞬にそう言った。それはイタリア南部の方言で「素晴らしい!」という意味の感嘆詞。原語表記すれば「Countach」。まさに「カウンタック」のことなのだ。「カウンタック」という発音は日本独自のもの。
浦島老人が瞬にLP400を破格値で譲り渡すことにした理由。それは彼を最も感動させたのが瞬の夢と想いだったからであった。
早乙女のレクチャーのもと、早速カウンタックの試乗に街へ出る瞬。
ハンドルを握った瞬は、持ち前の走り屋気質を取戻し、人が変わったように自信に満ちた姿になる。
カウンタックのオーナーとなったことで、様々な人たちと知り合い、刺激的な日々を送ることになった瞬。
目立つ車を転がすことで、勝負を挑んでくる連中が後を絶たない。
早乙女とはカウンタックを通じて信頼関係を深め、「早乙女ちゃん」と呼ぶようになる。
瞬は挑まれた勝負の度に、非常に高度な運転技術を発揮。どんな局面でも圧倒的な強さを見せる。
物語が進むにつれ、瞬が運転する車はLP400ばかりではなくなっていくが、そこでも瞬は初めての車にもすぐさま順応する高度な柔軟性を見せ、因縁を吹っかけてくる連中を蹴散らし、又、カーレースを通じて仲間を得ていく。
青年誌連載作だけに、当初は瞬の対決相手として登場するも、後に瞬に好意を抱くようになるポールダンスダンサー・立花樹利(たちばなじゅり)と、早乙女ちゃんのセクシーショットが度々登場し、我々男性読者の目を楽しませてくれるが、途中で彼女たちと瞬の恋物語に話がシフトしたりすることなく、あくまでカーレースに主軸を置いたストイックな展開に終始した。
特に早乙女ちゃんは、よきアドバイザーとして瞬とはいい雰囲気になり、互いに好意を抱くが、遂にその思いを告げることのないまま、物語は終わる。
物語終盤、瞬が子供の頃に描いた夢の車が、浦島老人の目に留まる。
浦島老人自身も大変な車好きで、幾多のレースに出ていたが、ある時大事故を起こし、妻に2度とレースをしない約束までした。その妻も亡くなって10年。浦島老人は最後のレースとして「アルティメットラン」への参加を決意する。
その時、乗る車として瞬の子供時代の“夢の車”を本格化し、開発したのが「メビウス」。
浦島老人は「メビウス」でレースに参加するも、ゴール直後にクラッシュ事故を起こし、運転不能に。決勝のレースを瞬に託し、瞬は見事その期待に応える。
「メビウス」は更に進化し、新型電気自動車となる。
その命名は瞬に託され、「ヒエロ」と名付けられた。
「ヒエロ」は世界的に売り出されることとなり、新会社が設立される。
浦島会長は瞬に大きな選択を迫る。
「LP400を手放すことと引き換えに新会社の株式50%を与えられ、アメリカに移住して社長となる」
「今まで通り、LP400と一緒に、一サラリーマンとして暮らす」
そのいずれかだ。
社長かLP400か?
瞬にとって、それは子供の頃に思い描いた2つの夢のいずれかを選べという、非常に悩ましいものとなったが、瞬はLP400との絆を信じ、またいつか再会できる日が来ることを信じて、社長への道を選ぶ。
準備に追われる瞬。早乙女ちゃんとも暫く会えていない。それが少し寂しい。
浦島会長は、瞬に、社長ともなれば色々手伝いが必要だろうと、秘書をつけてくれるという。
そうして新しい秘書として瞬の目の前に現れたのは、早乙女ちゃんその人であった。
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カウンタックLP400が、本作のもう一つの主役である。
リアルタイムでスーパーカーブームにどっぷり浸かった身からすれば、当時の一番人気はカウンタック、わけてもカナダの石油王・ウォルター・ウルフがランボルギーニ社に特注した「ウルフカウンタック」が一番人気で、当時「LP500S」と言われていた。
「LP500S」は3種類ある。
最も有名な「赤」。これは1号車。今も日本にある。昨秋偶々日比谷で東京モーターショー記念パレードに遭遇し、思いがけず現車を間近で拝むことができた。




他には「青」の2号車、「濃紺」の3号車がある。
スーパーカーブームのさなか、当時、トミカというミニカーに外国車シリーズというのがあって、既に小学生半ばだった私は、箱も捨てずに取っておき、本体にも傷をつけないよう大切に扱って、今も手元に置いてある。
当時住んでいた鷺宮という町の駅前のおもちゃ屋で、4台セットに入っていた青というより濃紺の「LP500S」のトミカを羨望の眼差しで見つめていたら、店のおじさんがセットと入れ替えて単品で売ってくれた。それが当時の一番の宝物になった。
余談になるが、当時「LP500S」に負けない人気だったのが、黒地に白いラインの「LP500R」。
トミカのカウンタックは「LP400」と「LP500S」の2種類がラインナップされていたが、「LP400」が赤色だった関係上、「LP500S」は当時誰しもが真っ先に思い描いた赤ではなく、「LP500R」を彷彿とさせる黒で、何故か金色のライン、リアスポイラー(当時は“ウィング”とみんな呼んでいた)の形は、「R」ではなく「S」のもの、というのが通常品であった。

(いずれも、後に出た「プレミアム」ではない)
個人的には「LP500S」こそ赤、そして「LP400」は黄色が相応しかったのではないかと思っている。1977年夏のコカコーラの王冠裏のスーパーカーイラストキャンペーンでピンクレディーが両側にぶら下がっていた姿が強烈で、どうしても黄色というイメージが今でもあるのだ。
「ウルフカウンタック」1号車――通称赤の「LP500S」も、本作に登場する。引きこもりのネットトレーダーの青年・神谷聖が、瞬の大家の隣人なわけだが、彼が実はそのオーナーだった。
最初は、運転免許もないまま、ガレージ内に誰の目にも触れることなく飾っておけさえすればよいと思っていたが、瞬と早乙女ちゃんの尽力で、サーキットで走らせることができた。それをきっかけに後に免許を取り、三重の実家へ戻り、カウンタックの運転を楽しむようになった。
子供の頃の私は、スペシャル仕様の「LP500S」や「LP500R」に魅かれていたが、後によりシンプルな造形の「LP400」のほうを美しいと思うようになった。
Wikipediaに詳しいが、当時「LP500S」と呼ばれた「ウルフカウンタック」は、LP400のスペシャルモデルなので、LP400こそがオリジナルだといえる。
後の1982年、市販車種として「LP500S」という型が登場し、323台が生産された。今ではこちらが正真正銘の「LP500S」ということになる。ややこしい。
カウンタック好きにとっては釈迦に説法だが、何故「S」がつくのかといえば、試作モデルとして「LP500」が存在したからである。
この「LP500」こそ、マルチェロ・ガンディーニによるオリジナルデザインで、細かなことは省略するが、後の量産型に比べると随分のっぺりつるんとした印象を受ける。
エンジンが強力すぎて、又ボディーの放熱対策が不十分だったため、オーバーヒートを繰り返した。その対策として途中でエアインテークやダクトが追加され、オリジナルのスマートさは幾分損なわれ、無骨さが増してしまった。
最後はクラッシュテストに供されたため、現存しない。
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だが、個人的には、今ではこの「プロトタイプ・カウンタック」こと「LP500」こそが最も美しいと感じる。
一時期、京商から1/18というかなり大ぶりなカウンタックのミニカーが相次いで発売された。
「LP500」から「LP400」へ至る途中で試作されたという緑色のモデル(側窓の形が量産型とは異なる)まで出たので、「次はLP500!」と期待したが、結局出ることはなかった。
実車が現存しないので、資料が十分でなかったのだろう。もしこれが出ていれば、絶対に買ったと思う。
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本作は自動車レースがメインなだけに、多くの車が登場するが、主役がカウンタックLP400なだけに、往年のスーパーカーの登場が多い。
早乙女ちゃんの愛車・ポルシェ928GTSを始め、ポルシェ911カレラにターボ、フェラーリだと365GT4BB、246GT。ランチャ・ストラトスにデ・トマソ・パンテーラ、シボレー・C2コルベット スティング・レイ。
ランボルギーニだと、ミウラSに、ミウラSV。
そして極め付けはイオタが出てくることだ。本作中でも正体不明の幻の車として、他とは一線を画す強烈なオーラを放っている。
勿論新しい型の車も多数出てきて、スペックでは明らかにカウンタックLP400を上回るはずなのだが、主人公・瞬が操るのがLP400だけに、そう易々とLP400が負けては話にならない。
性能では上回っても、瞬の類稀なドライブテクニックによって、1970年代のスーパーカーであるLP400が勝利を収める展開が繰り返される。
新しいものほど高スペックなのは、車に限らず、例えばオーディオ機器などでも同じだが、デザインまで含めると、流行り廃りがあるだけに、何でも新しいものが勝っているとは言い切れない。
本作を読むと、とりわけカウンタックの先鋭的なデザインは、古さを感じるどころか、後のバブル期のフェラーリなどよりも遥かに強烈なインパクトを与え、もっといえばカッコいい。
何年か前、ランボルギーニ・ミウラが、往年のデザインをほぼ踏襲して復活するというニュースをインターネットで見たが、あれは一体どうなったのだろう。
多くの方があちこちで書かれていることをなぞることになってしまうが、本作の終盤に出てくる「メビウス」に「ヒエロ」。六角形をモチーフにした未来志向のデザインだが、あまりカッコいいとは思えない。
驚いたことに、この「ヒエロ」が実車として製作され、東京モーターショーにお目見えしたことがあるらしいのである。
リンクを貼っておきます。
六角形ベースの各パーツが、ミツバチの巣みたいに見えるせいなのだろうか…?!
漫画みたいな(~って、元々漫画に出てくる車なわけですが~)現実味に乏しいデザインが却ってダサく感じてしまうのか?!
物語終盤、「カウンタック」だったはずの本作の主軸が、すっかりこの「ヒエロ」にシフトしてしまったのが残念。
個人の好みで勝手なことを書かせてもらえば、タイトルが「カウンタック」なのだから、どうせ作るなら「プロトタイプ・カウンタック」こと「LP500」を、ミウラよろしく最新技術を纏わせてデザインだけ復活させる野望を浦島老人が抱き始めたとでもしたほうが、カウンタックぶりが徹底できたのでは…という気もする。
尤も例え漫画上での出来事とはいえ、オリジナルデザインを手がけたマルチェロ・ガンディーニへの配慮を無視できないといった大人の事情があるのかもしれない。
この「LP500」のボディーは黄色。今日インターネット上でヒットする画像には、さながらフェリーニ映画のヒロインのようなゴージャスひだひだドレスを身に纏ったやけにド派手なお姉ちゃんが、車の傍に決まって侍っている。
つるんとした鋭角的なデザインは、ピニンファリーナが手掛けた「512S」ともどこか相通ずるものを感じる。あちらも黄色。
プロトタイプやコンセプトカーに黄色い車体が多いのは何故なのだろう?
かつてのスーパーカーブームのきっかけとなった『サーキットの狼』には数多くの車が出てくるが、その中にフェラーリ・ディノRSという赤い車があった。当時の安いプラモデルでは「フェラーリ ディノ スペシャルレーシング」という名前だった。
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スーパーカーブームのさなかでも、この車だけは全く馴染みがなかったが、漫画では「フェラーリ・ディノ246GT」を徹底改造して作られたことになっている。
デザイン上は、「ピニンファリーナ・ディーノ206・ベルリネッタ・プロトティーポ・ コンペティツィオーネ」という、やけに長い名前のコンセプトカーがベースになっていたことを後で知った。この車も車体は黄色である。
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自分は走り屋はおろか車道楽でもない。元々、漫画喫茶で読んで終わりにしようかとさえ思っていた。一回読んだらもういいかな…という気もしないではない。
ただ、どんどん読み進められて面白い作品だし、カウンタックへの愛が感じられる。瞬と早乙女ちゃんが最後までくっついてしまわなかったところもいい。そのほうがピュアでストイックな車好きを思わせる。それで、今のところ手元に残している。
思い切って1/43の「LP500」のミニカーを買ってしまおうか?
こんな文章を綴ると、いよいよそんな気になってくる。