12月に12~3年ぶりに漫画喫茶に行ってみた。
その時のお目当ては別の漫画作品で、数年前に単行本が全て出揃ったようだったので、てっきりどこにでもあるものと決め込み、新宿地下の店へ適当に入り、3時間コースを選んでみたら、全く影形もない。3時間も一体どうやって過ごせばいいのか?途方に暮れかけた時、見つけたのが本作。とりあえず10巻ほど抱え、煙たい個室に籠って読み始めた。
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『ドカベン』自体は、確か十条を探訪した記事を3回続けた時、今は廃業してしまった銭湯の帰りに線路際のブックオフで立ち読みした序に少し触れたことがあったと思う。
少年チャンピオンコミックス版を『ドカベン』、『大甲子園』まで全巻持っており、これは山田太郎、岩鬼、里中、殿馬ら明訓四天王たちの高校時代を網羅している。
漫画本の蔵書数もかなりなものになったが、その中でも数少ない「読み始めたら止まらない」状態に陥る作品で、特に甲子園でのライバル・土佐丸高校との死闘が大のお気に入りであった。
1970年代半ば~後半頃は、少年チャンピオンの黄金時代であり、次々とヒット作が連発。『ブラック・ジャック』、『がきデカ』、『マカロニほうれん荘』、『750ライダー』等々々…。
当時小学生だった私は、高学年ともなると床屋へ散髪に行き始めたが、待っている間専ら手にしたのはジャンプでもマガジンでもサンデーでもなく、専ら週刊少年チャンピオンだったのである。
サンデーといえば『まことちゃん』位しか楽しみがなく、マガジンは泥臭い、ジャンプはつまらん、かつてはそんな実感しかなかった。
ジャンプが大躍進を遂げるのはその後、1980年代になってからのことだ。
山田たちが1年夏の犬飼小次郎との準決勝、2年春の犬神初登場の決勝、いずれも大変読み応えのあるエピソードで、特に後者は明訓四天王たちの過去を織り込んだまさに死闘。作者はもしかしたらあの試合を描き切ったら、終わらせてもいいと思って描いたのではないかとさえ思わせる大変な力の入れようだった。
その後、2年夏の甲子園大会。謎に包まれた岩手県・弁慶高校が土佐丸を破り、続く2回戦で早くも明訓と対戦。ここで明訓は初の敗戦を喫する。
この後、『ドカベン』は急速にトーンダウンした印象を受けた。作者の水島新司氏の中には、この頃既にこれまでの高校野球キャラたちを一堂に会して戦わせてみたいという構想が持ち上がっていたのかもしれない。
秋季大会では、山田や里中にとって因縁のライバルである東郷学園・小林真司が米国留学から帰ってくるも、山田たちと対戦することなく敗れている。
神奈川予選でのライバル、東海高校・雲竜が実は山田の旧知の仲、“大ちゃん”こと青山君だったという意外なエピソード位しか見るべきものはなく、土井垣の後を継いで監督となった大平は、息子が投手を務める花巻高校との対戦で、わざと明訓を負かそうとしているかのような不可解な采配を振るい、読んでいてイライラ感ばかりが募った。
山田たちが新3年となる春の選抜はもっとひどい。土佐丸との3度目の対決があったが、それまでの“殺人野球”はすっかり鳴りを潜め、展開は恐ろしく早い。見るべきものは9回表。いきなり殺人野球が牙を剥き、巨漢・犬飼武蔵に本塁上のクロスプレーで吹っ飛ばされた山田だが、その後に続く走者・犬神が本塁突入を狙う。実はそれが彼らの真の狙いだったのだが、山田の冷静なプレイでそれを阻止すると、その裏、あっさりと山田のサヨナラホームランで決着がついた。
準決勝、決勝となると、猛暑、極寒それぞれ極端な異常気象という逆境下での試合だったが、これらも山田のサヨナラホームランであっさり決着。「なーんだ、つまらん」という感想しかない。
そして里中の母親が病に倒れ、3年夏の地区大会を前に里中が明訓を去るところで『ドカベン』は終了となる。
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この調子で書いていくとキリがないので駆け足にするが、満を持して始まった『大甲子園』ではこうしたトーンダウンは見られない。丁寧に描かれた地区予選。結局不知火率いる白新は明訓に一度も勝てなかった。
舞台が甲子園に移ってからは、『男どアホウ甲子園』の藤村甲子園が肩を壊して引退後、グランド整備員として只者ではない姿を披露し、『野球狂の詩』の岩田鉄五郎&五利コンビはスタンドからドラフトで誰を指名すべきか虎視眈々と選手たちを品定めしている。同じく『野球狂―』の後半主役、協約を突破して登場したプロ初の女性投手だった水原勇気は、試合を見つめる観察者として登場。こちらも既に引退後を匂わせる姿であった。
土佐丸・犬飼兄弟には実は末弟がいた。しかも秀才で、室戸学習塾というエリートチームが頭脳プレイで明訓を追い詰める話から甲子園の試合は始まる。りんご園農業との打撃戦の後は、真田一球率いる巨人学園、『ダントツ』の光高校との対戦を経て、準決勝の青田高校戦に至る。
1度では決着がつかず引き分け再試合となり、剛球投手中西球道との鬼気迫る対決が続いたが、連載当時少年チャンピオン誌を立ち読みしていて、1年以上この試合が続き、どうせ明訓が勝つことはわかっているのに、強気な姿勢を崩さぬ中西球道のことを最後は、「往生際が悪い。しつこい。」と思うようになってしまった。ともあれ作者も読者もこの対決で燃え尽きた感があった。
決勝は紫義塾という初登場チームが対戦相手だったが、水島氏の構想が最初からまとまっていたわけではなかったのであろう。一度準決勝の抽選時に1コマだけ出てきた時は「紫高校」を名乗り、「M」という地味な帽子を被った地味な顔の主将が登場する。とても後に「ヌウ」と出てきた“殺人スライダー”の遣い手・近藤と同一人物とは思えない。
新撰組をモチーフとした武道の達人9人衆が両手利きとそれぞれの特技を活かし、明訓を追い詰めるさまはなかなか緊張感があり、楽しめた。
ちょっと皮肉な見方をすれば、元々剣術屋だった連中が急に野球に目覚め、打倒山田を目指して甲子園に出てきたチームだから、中西球道を破った後となっては、かつての弁慶高校のように明訓を敗戦に追い込む必要などないのである。だから安心して見ていられる感があった。
試合は紫義塾の剣術野球が明訓を翻弄。終始リードを奪うという意外な展開が続く。クライマックスは終盤キャッチャー・藤堂が負傷退場。元々9人しかいない紫義塾は試合続行不能に陥り、没収試合で明訓優勝という釈然としない結末を迎えるのか?とギリギリまで引っ張った時、「待てえ」と突如現れた黒眼鏡の男、壬生狂四郎と山田との対決だが、失明した後、視力が回復しない狂四郎の練習投球は160キロを数える剛速球。なのにノーコン。
それも本番になるとあっさり解消。(この辺、安易。)追い詰められた山田。運命の3球目。それまでと違い握りを隠した狂四郎。投じた球は剛速球のフォーク“無念流”。ところがそれを山田は完璧に捉え、場外ホームラン。
…とサヨナラではなかったものの、やはり山田のホームランで決着がついた。3年春のサヨナラ三連発の安直さに比べると、そこに至るまでのドラマが描かれており、不満はない。
最後の試合は、里中がバテることもなく完投勝利を成し遂げたし…。
その後私は地元の古本屋で、ボロいが格安の『男どアホウ甲子園』全巻揃いを手に入れ、藤村甲子園、池畑三四郎、東海の竜、丹波左文字らの活躍を熱心に読んだ。
確か結城という“デコメガネ”とあだ名される鬱陶しい優等生委員長キャラが出てきたと思う。最後は甲子園の相棒であった豆タンこと岩風五郎が甲子園を避けて東大へ入学。甲子園はカンニングによって東大へ入り、豆タンを追いかけ、東大野球部が舞台になった。
本作は水島新司氏は作画のみを手掛けており、原作者は佐々木守氏であった。70年代に数々の荒唐無稽ともいえる内容のTVドラマの脚本を次々と量産した人だ。
『大甲子園』終了後、1990年代半ばに『プロ野球編』の連載が始まった。
今となってはその名を挙げるのに気を使わざるを得なくなってしまったが、この『ドカベン』復活は清原和博氏のリクエストによるところが大きかったという。
私は大体20巻くらいまで単行本を買っては読んでいたが、徐々に他の趣味に力点を移し始め、又高校野球と違って試合に負けても次があるさ的な展開に、どうしても緊張感を感じられなかった。(山田太郎が入団した西武ライオンズは、山田のデビュー戦で負けたはずだ。)
それでそれ以上買うのも読むのもやめてしまった。
2000年を迎えようとする頃、一度漫画本を大量に整理した時、『野球狂の詩』を除く水島野球漫画を全て売り払ってしまった。「読み始めたら止まらない」状態だった『ドカベン』を手放すには少々の未練があったが、あまりに場所を取りすぎた。
数年後、生まれて初めて漫画喫茶に行ってみた。新宿サブナード直結の店だったが、今はない。フリードリンクでメロンソーダのコーラ割という色的にはとても気味の悪い飲み物を調合して持ち込み、最初は以前流行った『美少女戦士セーラームーン』を読もうとしたが、意外にハードな展開で、もっとおちゃらけた話を期待していた私はすぐに読む気を失った。
その時、代りに手にしたのが『ドカベン・スーパースターズ編』。
『―プロ野球編』終盤、“山田世代”の選手たちがFA宣言し、このままでは有力選手たちがメジャー流出してしまうと危機感を抱いた総裁が、新たに「東京スーパースターズ」、「四国アイアンドッグス」という2球団をパ・リーグに創設する決断を下す。
主に元・明訓四天王と土井垣らが前者に、一方明訓のライバルだった犬飼三兄弟、不知火、土門らが後者に入団する。
一方、新キャラも登場。当時一番華々しかったのは「四国アイアンドッグス」にテスト入団した、マドンナこと正岡華子であろう。地元の社長令嬢だった彼女は、元々やっていたバレエの動きを駆使し、女性ならではの身体の柔らかさ、センスの良さを活かし、トップバッターとしての地位を得る。やがて対戦相手の「東京スーパースターズ」の殿馬に恋心を抱き、アタックの末結婚。
この辺りは興味を以て何度か読んだが、長期連載の様相に再び飽き、特に追いかけることもせぬまま2012年に完結。
件の漫画喫茶も、図に乗った私は、かつて好きだった「コーヒーラムネ」というお菓子をイメージして、アイスコーヒーのコーラ割という飲み物を自家調合してみたものの、これが見事に失敗。その時読んだのを最後に、再び『ドカベン』から遠ざかってしまった。
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そこで漸く冒頭の『ドリームトーナメント編』で『ドカベン』との再会に至ったのである。
本作は早い話が『大甲子園』のプロ野球版だといってよい。
冒頭、プロ野球総裁・崖渕壮兵衛が、かつて『スーパースターズ編』でパ・リーグに新球団を2つ創設したように、今度はセ・リーグに2球団を新たに創設し、16球団制とした。
新球団は、1つは岩田鉄五郎を監督とする「新潟ドルフィンズ」。もう1つは微笑三太郎を選手兼監督とする「京都ウォーリアーズ」。
これら16球団が一堂に会し、プロ野球シーズン開始前に、阪神甲子園球場でトーナメントを行うというのが本作のテーマである。
微笑三太郎とは、元々は明訓のライバル・土門がその剛球を捕る捕手として他校からスカウトした選手だったが、山田同様「ドカベン」とあだ名された土門を訪ねる積りが明訓高校の門を敲いてしまい、そのまま明訓に居ついた人物である。以後、山田たちとチームメイト、読売巨人軍へ入団。明訓時代の微笑は登場時以外は正直大した選手には思えなかったが、巨人では確かホームランを年間で50本打ったと書かれ、随分意外に思えたものだ。
その後、ニューヨーク・ヤンキースへの移籍を蹴ってFA宣言の末東京スーパースターズに入団。ところがその後不振に陥り、一度は引退を決意したが広島へトレードで移籍。
京都のチームなだけに、しっかり『大甲子園』最後に出てきた紫義塾高校の元メンバーである、鹿馬牛之介や先斗三十郎が出てくる。
いつの間にやら剣道場は鹿馬道場と名を変えている。高校時代局長を務めた近藤勇二、それに土壇場で失明から回復したはずの壬生狂四郎はどうしたのだろう?
明訓を破った弁慶高校も、エースで3番、八艘飛びで決勝のホームを踏んだ義経光は、その後『スーパースターズ編』で復活を見せ、以後は山田たちのチームメイトとなっている。
一方、弁慶勝利の立役者であった武蔵坊数馬は、弁慶の大往生よろしく額に送球を受けて地響き立てて倒れ込み、その後瀕死の状態となる。山田と岩鬼が武蔵坊のもとを訪ね、それぞれの方法で懸命に励まし、武蔵坊は一命を取り留めた。そこまでは『ドカベン』に出てくる。その後、『プロ野球編』では陶芸家として登場。野球選手としては復活していない。
代りに廃業寸前だった銭湯で劇的再会を果たしたのは中西球道。
中西球道は高校卒業後、渡米していたが、後に千葉ロッテマリーンズへ入団するも、プロ入り後はさほど華々しい活躍ぶりが描かれてきたとは思えない。
そこへ来ての球道復活である。これは『大甲子園』同様、後で山田との対決がしつこいほど描かれるだろうな。そんな想像がつく。
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トーナメントの記念すべき1戦目は、新潟ドルフィンズ対東京スーパースターズ。
岩田鉄五郎率いるドルフィンズの目玉選手は、鉄五郎自らスカウトに訪ねた新田小次郎。『光の小次郎』を読んだことがないので、あまりピンとこないが、元は160キロの速球投手で「光る速球」が武器。ところが本作では肩を壊しており、過去の栄光を捨てて少年野球の監督として登場。断る小次郎を鉄五郎は熱心にかき口説くも、球速はいいとこ145キロ止まりである。それをどう生かそうというのか?
もう一人の目玉選手は『おはようKジロー』の岡本慶司郎。スポーツ万能、極めて高い身体能力を有するも、最初は捕手として登場する。
越後獅子という小兵だがリズム感に富む投手が先発。意外にもスーパースターズを翻弄する。
2番手投手として登板したのは七夕竹之丞だが、彼が主人公を務めた『虹を呼ぶ男』を読んだことがないので、特に感慨はない。向こうっ気の強いキャラで岩鬼と喧嘩する奴か…位なものだ。
試合後半、『野球狂の詩』のキャラが続々登場。何故かレギュラーで初回から出場と優遇されている牛乳瓶底メガネのド汚いオッサン・甚久寿(ジンクス)のみならず、「TO砲」こと唐部と丘、藤娘こと歌舞伎の女形とスラッガーの二足の草鞋をはく国立玉一郎が出てきた時には読み手のこちらもテンションは跳ね上がる。
終盤、イボ痔と付き合いながら健闘する虎谷虎之介が出てくるに至っては、「よくぞ虎谷を忘れずにいてくれた」と思ったが、案外登場シーンは短く、岩鬼とのクロスプレイで本塁を死守するも負傷退場となってしまった。だが、現実のプロ野球の世界では、どうやら今後、捕手が本塁突入を試みる走者の進路に立ち塞がってはならないと決められたようだから、クロスプレイは過去のものになってしまうかもしれない。野球がますますドラマチックでなくなってしまう。
しかし、個人的にはどうしても『野球狂の詩』の登場人物たちが、『ドカベン』の登場人物である山田太郎たちと同じ土俵に立って試合しているということに違和感を禁じ得ない。
山田たちだってもういい年なのではないのか?
その彼らが高校生だった頃に、『野球狂―』の連中は既にプロ選手。山田たちと同年輩とは絶対に思えない。
岩田鉄五郎は『野球狂―』中でも既に年配の大ベテランという位置付けだったせいか、後の作品では70歳超えても監督兼選手という相当無理な設定にしている。
まぁ「ドリーム」だから仕方ないのかもしれない。引退したんだろうな…と思わせる選手たちが、次から次へと奇跡のカムバックを果たしている。
Kジローの登板もあったが、やはり投の主役は新田小次郎。
試合も大詰め、9回裏ツーアウト満塁、バッター山田という場面でワンポイント・リリーフとして登板する。
それまで球速は出ても140キロ台と散々言っていたのは何だったのか?
いざ本番になったら超人的な実力を発揮するパターン。ここでも実に球速165キロ!だったら最初からそう言わんかい!そうツッコミを入れたくなるが、それが水島漫画ではお約束のパターンなのです。失明していた壬生狂四郎だって、甲子園の潮風を受けた途端、急に視力を回復し、山田と対戦したじゃありませんか!
結局、激しい打撃戦の末、延長になって、山田がKジローから逆転3ランを放ち決着。
やっぱり山田のサヨナラで終わるのネ。
『野球狂の詩』は作者にとってすごく思い入れのある作品だった筈で、この最初の試合はかなり長いページが割かれた。
続いてはライバル同士の対戦。
阪神タイガース対四国アイアンドッグス。
『大甲子園』では、阪神入団後3年目に肩を壊し、球団職員となっていた藤村甲子園だが、本作では何だかうやむやの内に剛速球投手として復活を遂げている。無論、相棒の豆タンこと岩風五郎も一緒である。
「いくで、豆タン」、「はいな、あんさん!」
このやりとりがなければ、藤村甲子園らしくない。
その甲子園と投げ合うのが、アイアンドッグスのエース、不知火である。
『ドカベン』シリーズの一連の作品群の流れの中では不知火の活躍ぶりのほうが非常に目立つ。剛速球といい、岩田鉄五郎の「ハエ止まり」を越えたと言われた超遅球といい、完全無欠を絵に描いたような投手である。投手としての実力は里中よりも遥かに上だろう。
この試合、剛球投手同士の投げ合い、投手戦で膠着状態が続く。
結局、阪神打線をノーヒットに抑えた不知火が、エラーで出塁したランナーを犠牲フライで返され、失点。逆に藤村甲子園は、打者・不知火に2塁打を放たれ、ノーヒットノーランを逃すも完封。阪神の勝利となった。
四国アイアンドッグスといえば東京スーパースターズの一番のライバルじゃなかったんかい?!
幾ら藤村甲子園相手とはいえ、1回戦敗けにしてしまうとは…。土門はどうした?犬飼三兄弟はどうした?犬神は?
作者の頭の中では、最早彼らは眼中になく、山田対藤村甲子園、山田対中西球道、それしかないような気がしてならない。何だか勿体ない気がするな…。特に土門の扱いが。
この後の1回戦トーナメントは俄かに描写が粗くなる。
・千葉ロッテマリーンズ対広島東洋カープ 0-1×
・京都ウォーリアーズ対埼玉西武ライオンズ 3-2
・福岡ソフトバンクホークス対東京ヤクルトスワローズ 3-2
・読売ジャイアンツ対横浜DeNAベイスターズ 2-1
・東北楽天ゴールデンイーグルス対北海道日本ハムファイターズ 4-5×
・オリックス・バファローズ対中日ドラゴンズ 5-4
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続いて2回戦。
東京スーパースターズの対戦相手は阪神タイガース。
いよいよ山田対藤村甲子園なだけに、再び作者の力も入る。
スーパースターズのほうも里中オンリーというわけにもいかず、秘密兵器として元・東郷学園の小林真司を招じ入れる。
上でも書いたが、元々は東郷学園にいた里中にとってはアンダースローへの転向を決意させた因縁のライバル、そして山田にとっては鷹丘中学時代、本塁上のクロスプレイで山田のスパイクが小林の目を襲い、そのせいで小林はあわや失明の大怪我を負った。手術の末、小林は失明を免れたが、山田はその責任を感じ、一時野球をやめ、柔道に転向。『ドカベン』は最初は柔道漫画だったのだ。余計な話だが、小林には美人の妹がおり、その妹が山田に恋心を抱いていた。
かつて里中を速球派から諦めさせた小林の速球だったが、すっかり鳴りを潜め、いいところ140キロ台止まり。それを山田の巧みなリードで相手打線をかわしていく。小林の決めダマはアメリカ留学時に身につけたナックルだ。高校時代、山田と戦わずして敗れた時も、最後はピンチの時に一か八かで切り札・ナックルを投じたが、変化に捕手がついていけず後逸。それで東郷学園は敗れた。
今度は小林のナックルを捕るのは山田だ。山田なら捕逸はするまい。だが、ナックルばかりでは面白味がないのか、力道玄馬を始めとする強烈キャラたちに結構打たれる。
『ストッパー』の主人公・三原心平、『新・野球狂の詩』のハンドボール野球の使い手・針忠助なども登場するが、『男どアホウ甲子園』からは東海の竜、小野田信長が登場。『男どアホウ―』はどうしても『ドカベン』より前の世代というイメージがあるから、山田たちより遥かに年上に思えてならない。それが山田たちと同世代であるかのように描かれ、互角に野球の試合をしている。どうしても違和感を禁じ得ない。小野田信長なんて、すっかり忘れてしまっていた。
雪村花虎という選手が出てくるが、『ドカベン』で雲竜率いる東海高校の投手だった。岩鬼から「せっそん」とバカにされていた位しか記憶に残っていないが、デカっ鼻でクンクン匂いを嗅ぎ、その嗅覚で球種を当てる特技を本作では披露。随分出世したものだ。
同じく南海権左。『ドカベン』では吉良高校の中心人物として登場。神奈川予選で対戦校が次々と謎の事故により出場停止となり、不戦勝により勝ち上がって明訓と対戦。権左の呪いによるものとされたが結局よくわからない。ヤクザの手下みたいな選手の寄せ集めチームで、野球の実力が全くないのにフロックで勝ち上がってきたキワモノチームか?!と思っていただけに、何の思い入れもなかったが、どうやら『野球狂の詩 平成編』では大阪ガメッツの主砲として登場。後に阪神に代打の切り札として移籍したらしい。それで本作にも登場したのだろうが、岩鬼と喧嘩ばかりしている選手という印象しか持てなかった。
この2回戦の阪神タイガースの目玉選手は、やはり「北の狼 南の虎」こと、火浦健、王島大介の『野球狂の詩』コンビであろう。
特に火浦は、『新・野球狂の詩』、『野球狂の詩 平成編』では東京メッツを去っており、ライバルチームの大阪ガメッツの選手兼監督として登場。
どちらかといえと投手としてはピークを過ぎた印象があった。それが本作ではいつの間にか若返り、山田太郎と互角に対戦している。彼らの時間軸だけ逆戻りしたかのような印象を受ける。実に不思議だ。
その火浦は疲れが出てきた藤村甲子園に代り、8回に登板してきた。鉄砲肩・藤村をして疲労の極みに至らしめたのは、山田との対決における全力投球だったわけで、山田のすごさが否応なく強調される。
火浦が登板してきた時、その目付きの鋭さと只ならぬ雰囲気に、岩鬼は弁慶高校時代の武蔵坊を思い出す。私の感覚では、火浦健のほうが遥かに山田、岩鬼、武蔵坊らよりも年上に思えるが、既に野球から遠ざかり、陶芸家としての道を歩んでいる武蔵坊を回想以外で無理矢理選手復帰とはさせられなかったのであろう。
もし武蔵坊を無理に野球選手として担ぎ出したならば、今は山田たちとチームメイトとなっている義経とも対戦させることとなり、ものすごい違和感が出ていたはずだ。
結局、この試合も山田が火浦からサヨナラホームランを放ち、4-3で勝利。やっぱり山田のホームラン頼みというワンパターンで決着がついた。
それにしても、岩鬼や里中はともかく、殿馬があまり目立った活躍をしていないのが寂しい。ドリームに出てくるような剛球投手の前には、殿馬の秘打は通用しないのか?
その他の試合はまたしても簡易な描写に留まった。
・福岡ソフトバンクホークス対読売ジャイアンツ 2-1
・京都ウォーリアーズ対オリックス・バファローズ 4-2
・北海道日本ハムファイターズ対広島東洋カープ 2-3×
恐らく東京スーパースターズのトーナメント決勝相手であろう京都ウォーリアーズにしても、この試合の描写は随分簡単なもので、「おっ、先斗三十郎も選手だったのネ!」、「中西球道がリリーフで最後は締めたのネ!」位な印象しかない。
Wikipediaを見ると、堀田三吉(『一球さん』)、才蔵旭、大池英治(いずれも『球道くん』)、沖田総士(『大甲子園』~紫義塾出身)の名が出ているが、いずれも全くと言っていいほど印象に残っていないのである。
いずれも『大甲子園』に出ている筈なのだが。
特に堀田といえば、泥酔していたのを何とか明訓戦出場まで持っていった1番打者である。
この時、真田一球の作戦で各選手たちに明訓ナインの真似をさせていたのが、どうしても岩鬼の影武者だけが見つからないと言っていたところ、天然でならず者みたいな振舞いをし、頻りに悪態をつく堀田を、あのままで岩鬼の影武者が務まっていると一球が言っていた人物だ。
この時、堀田の大振りしたバットが山田の足を直撃。それで次の光高校戦、山田は先発出場できず、顔がそっくりな里中と荒木(光高校エース)の兄弟疑惑まででっち上げられそうになり、荒木にばかりツキが来て、明訓大苦戦なるも、最後は代打で登場した山田の一振りで明訓辛勝。その原因を作ったのが堀田だったのに、この影の薄さは何なのだろう?
対戦相手のオリックスに至っては、不吉霊三郎だけが得点に絡むという体たらくであった。
確か10巻で、広島東洋カープの試合に剛球仮面が登場した。
漫画喫茶で最初に読んだ時、3時間かけたものの、10冊を読みこむには時間が足りず、剛球仮面がこれから登場というところで帰らざるを得なくなった。
剛球仮面といえば、『男どアホウ甲子園』で藤村甲子園のライバルだった池畑三四郎である。
元は「七色の変化球」を擁する下手投げの軟投派投手だったのが、3年春のセンバツで敗れ、対戦相手だった東城大武蔵に転校すると、仮面投手として正体不明のまま、剛球投手として現れる。高くジャンプした空中で全身を激しく回転させ、その遠心力の力で剛速球を投げおろすという「大回転投法」を切り札とし、主砲・土方玄と共に中心選手として一躍注目を集めた。
3年夏の決勝で藤村甲子園の南波高校と対戦。延長18回を戦うも決着がつかず、翌日再試合。それも再び延長18回の死闘となった。途中で足に怪我を負うと、足に大きな負担のかかる大回転投法を使えなくなってしまった。意を決した剛球仮面は、自ら仮面を外す。
下から現れたのは、池畑三四郎であった。三四郎に戻った後、再び七色の変化球を武器に甲子園たちに挑むも、敗戦。
その剛球仮面が登場する。私は心の中で非常な興奮を覚えた。
是非続きが読みたい。ずっとそう思っていたが、なかなか漫画喫茶に行けない。
遂にしびれを切らし、遂に本作を全部買い揃えてしまった。実に10数年ぶりの『ドカベン』である。
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意外にも字数制限に引っ掛かってしまった。
一旦終了とする。以下、次回に続く。

