8月10日(月)


長堀橋―(淡路)―南方/西中島南方-新大阪


―西中島南方/南方―(梅田)―高速神戸


新開地―御影 御影―(阪神)神戸三宮


(阪急)神戸三宮―御影 


御影―(梅田)―南方/西中島南方-新大阪―東京


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前回の続き。


JR神戸駅前から高速神戸駅へ向かう。湊川神社を望む。

途中、雑居ビル2Fにちょっと気になる喫茶店を見つけるが、今回はここもパス。

尚もしばらく歩くと、角に見つけたのは菊水總本店。神戸名物、瓦せんべいの店だ。

店内に人だかりが。近寄ってみて納得。喫茶室で氷を出してくれるらしい。東京だと追分だんごのようなイメージか?!

これを見つけた時、「ここへ入ろう。この旅の氷行脚の締めはここでやろう。」そう心に決めた。

大阪の角屋や喫茶店へ向かうのは、そろそろ時間的に厳しいと思い始めていた。それに折角神戸に来たのだ。老舗を目の前に、逃す手はない。


大分待たされた末、漸く中へ通された。

落ち着いた色調の和風喫茶である。


限定メニューの「グラノーラミルク」が食べたかったが、売り切れとのこと。宿題となった。「完熟マンゴーミルク」にする。

マンゴー果肉の乗った大ぶりの氷が運ばれてきた。マンゴーソースとミルクの壺が別に用意されている。嬉しい配慮だ。氷はふわふわ。甘いマンゴーソースとトロリとしたマンゴー果肉も相俟って、軽やかな食感。

底のほうまでたっぷりとシロップが味わえ、マンゴー果肉が転がっている。満足の一品。これがこの旅で実に44杯めのかき氷となった。


次々とお客が詰めかけ、冷房の効いた狭いエントランスは待ち客でいっぱいであった。


すぐ脇の神戸高速の駅への階段を下りる。巨大な瓦せんべいのサンプルを見つけた。かなりの年代物。


これから阪神電車で御影へ向かう。

青銅車でもレアな電機子チョッパ車・5311が来たが、見送る。

向かい側の阪急も見送る。

直通ではない阪神特急が来た。これに乗る。阪神三宮に近づく時の、「次は三宮、三宮。お出口は左側です。三宮から御影まで停まりません」…乗換案内など一切ないかつての素っ気ないアナウンスが好きであった。今はもっと懇切丁寧、親切である。


三宮を出ると地下線を進む。狭小ホームの春日野道を通過。半地下の岩屋を通過し、一気に高架線へ駆け上がる。今は随分と静かになったが、往年の阪神電車はガタガタと2段窓を揺らしながら、荒々しくポイントを通過した。上品に滑るように高速で走る阪急電車とは対照的な、悍馬のような阪神電車の走りもまた好きであった。

大石を通過する時、駅がまたぐ川の向こうに六甲山が見える。それを眺めると懐かしい気持ちになる。


今回、これまで歩き詰めの疲れが出たのか、居眠りこけてしまった。気づけば石屋川を通過する時だった。不覚。

御影で降りる。先ほどの「5311」普通が待っている。


乗ってきた特急車を見送る。

後から来た近鉄車が長い車体を窮屈そうにくねらせてそろそろと通過するのを見送る。ほどなくして青銅車も出て行った。こんな間近でこの電車が見られるのは貴重だ。

下り線をゆっくりと通過する近鉄車には華やかなラッピングが施されていた。


ホームから見下ろす六甲山へ向かう市バス乗り場も昔と全く変わらない。アーチが連なる緑テントの待合所を見ると、神戸へ来たという実感が湧く。

阪神の御影駅北口を降りてすぐ、高架下に細長い商店街が伸びている。御影旨水館という。

その入口を入ってすぐ右手側に安政堂菓舗・御影店がある。


私にとってこの店といえば、この巨大な和風ロールケーキだ。

否、気持ち的には「ロールカステラ」と呼びたい。

分厚いカステラを伊達巻よろしくぐるっとひと巻き。みかんジャムがたっぷり。中でも強烈なインパクトを放つのが、ジャムがたっぷりと塗られた端っこだろう。見た目はちょっと毒々しいが、ここが一番美味い。


元々は阪急御影のダニエルという洋菓子店が贔屓で、ここでケーキを買って緩やかな下り坂の並木道をてれてれと歩き、阪神電車の御影まで行くのがお決まりの散策コースであった。

ある時、旨水館の中を通り抜けようとしたら、偶々このお店を発見。

私の子供の頃は、髪の毛みたいな焼模様のあるロールカステラはあちこちの店で売られていたが、今ではめっきりその姿を見かけなくなってしまった。

ショーケースに飾られた巨大なロールを見つけた時、「これは絶対に買わねばならぬ。」そんな天啓のようなものを感じた。

以来、この枕みたいなロールケーキのファンである。

これで1,000円というのは絶対に安い。

カステラは今どきのふわふわ食感とは真逆の、密度の濃いどっしりとした味わい。一切れだけでも相当のボリュームだ。

常温で食べても美味いが、冷して食べても、また美味い。牛乳を一緒に流し込めば、尚美味い。

御影店は岡本にあるお店の支店である。支店とはいえ50年以上の歴史があるという。

ご主人は話好きの気さくな方で、いつもこの髪の毛みたいな焼模様がとても懐かしいですと言うと、相当な年代物のガスオーブンで焼きますと教えてくれる。

確か玉子の黄身を先に塗って模様を出すのだと仰っていた。


御影店のもう一つの名物が沢の井餅だ。うぐいすときな粉の2種類ある。粉のまぶったと柔らかな餅である。かなり大ぶりな餅を頬張ると、きな粉の香りと共にふわふわ食感が口中に広がる。甘党至福の時だ。


訪れたのが平日午後3時過ぎだったせいか、ロールケーキは1本しか残っていなかった。

これから東京へ持って帰ります。神戸へ来る度にお邪魔してるんですよと言うと、申し訳ないほど色々と饅頭をおまけしてくれた。


実はこの日、知人への土産にもう1本買って帰りたいと思って来た。一度知人に食べさせたい。だが、自分の分がなくなってしまうのは嫌であった。


御影店のご主人に丁重に礼を述べた後、私はある決断を下した。


このまま東京へは帰れない。岡本の本店に行こう!!」


御影の緩い坂道を北へ向かいかけたが、阪急御影まで時間がかかる。

疲れもピークに達しようとしていた。

そこで阪神の駅まで戻り、三宮まで行き、そこから阪急に乗り換えることに決めた。


岡本で降りた。安政堂菓舗を知るまでは、全く降りたことのなかった駅だ。

駅前にはドイツ菓子のケーニヒスクローネがあったりして、こじんまりとしていながらも洒落た佇まいの街である。



その前を右に曲がり、駅のホームに沿って少し歩く。

そこに安政堂の本店がある。

他に誰も客のいない静かな店に足を踏み入れる。

こちらは年配の女性がご店主である。

ロールケーキは…と。あった!山のように置いてある。

喜んで1本買う。好きなのを選ばせてくれる。


御影店へつい今しがた行ってきました。これから東京へ帰るのですが、お土産に2本欲しいと思ったら1本しか残っていなかったので、思い切ってここまで来ました。来た甲斐がありました。もう1本買えて本当に嬉しい。


そう告げた。老婦人の店主は大層喜んで下さり、御影のほうに言っときますと仰ると、またしても栗まんじゅうをおまけにくれた。

帰りがけに店を記念撮影しようとしたら、ご店主が見送りに出て来られた。

「写真撮らせて頂きます」というと、

「わても入れてもらお」

そう言って、カメラに収まってくれた。これがその写真である。


後に10月の吉本ツアーの時にも、無理矢理訪ねたが、この時は最初岡本へ行ったら閉まっていて、阪急御影から歩いて阪神の御影へ向かった。御影店のほうは開いていた。

御影店のご主人が、この夏に訪ねた私を覚えていて下さって、姉弟でそれぞれ店をやっていると教えてくれた。その時、店内にはお父上もおられ、初めてお目に掛かった。


この夏の探訪の時、後でお姉さんの岡本店主が電話で、私が御影から岡本まで回ってきたことを教えてくれましたと仰っていた。


お菓子の味に留まらず、それぞれのお店のご主人の暖かいお人柄を感じる。私はこの店が大好きだ。これからも贔屓にさせて頂きたい。


このお店の、髪の毛みたいな焼模様のあるロールカステラは、いつしか欠かせぬ神戸土産となった。


結局、栗まんじゅうを両店で合わせて6個も頂いてしまった。

1個は早々と帰りの新幹線で、残りは東京に持ち帰り、翌日の日比谷での宝塚観劇の幕間の食事や朝食に有難く頂きました。白餡に栗が一粒。美味しゅう御座いました。


阪急電車で梅田へ出る。8連の電車の鼻づらが揃うこの何ともいえないスケール感が好きだ。


行き交う電車を暫し撮影する内、逆に電車がなるべく揃わない瞬間に写真が撮れないものかと考えた。それがこの写真。9線あるうち、2本しか列車が停まっていない。


これで思いは十分果たされた。そろそろ帰ろうか。京都線ホームへ向かう。

普通電車で淀川を渡る。京都線は宝塚線、神戸線よりも一段高い場所を走っている。



南方に着いた。これで阪急電車ともお別れ。

そろそろ陽が傾きかけてきた。御堂筋線に乗る。

地下鉄だが、この辺りは高架線を走るので、見晴らしがいい。

新大阪に着く。新幹線の開通と共に発展した街だけに、今となっては昭和レトロ感漂いながらも当時の未来志向のセンスを感じさせる意匠があちこちに残っている。

ロッカーから荷物を出し、敢えて在来線の改札から中に入った。

最後の望みに、確か駅構内の本屋が奥にある売店の吉本グッズ売り場を探す。

だがこの1年ですっかり改装されてしまい、吉本グッズ売り場はなくなってしまっていた。

結局、「すち子のねぶり飴」金色バージョンは諦めざるを得なかった。


うかうかしている内に、赤福餅を買うのに長い列に並ぶ時間がなくなってしまった。ホームの売店で買うさ。そう思ったら、売店の赤福は売切れてしまっていた。

指定席を買っておいた「のぞみ」に間に合わなくなってしまう。

関西を訪ねながら、初めて赤福を土産に買いそびれてしまった。


新幹線に乗り込むと、すぐ弁当を広げてしまう。

新大阪で駅弁というと、やはりこの「八角弁当」である。これだけはコンコースの売店で買っておいた。関西の和食弁当らしく、薄めの味付けが嬉しい。玉子焼も砂糖が入っていない、自分好みの味。

弁当は京都に着く前にあっという間に食べ切ってしまった。

途中、阪急の線路と並走する時、一瞬阪急電車と出くわした。マルーンの電車ともこれで暫くお別れだ。

京都を出て少しすると、心地良い睡魔に襲われた。名古屋に着いた時、ちょっと目が覚めたが、またしても眠りこける。


「…只今列車は定刻通り小田原駅を通過しました」

トーンを落とした車掌のアナウンスで目が覚めた。

新横浜、品川と停まり、新橋、東京宝塚劇場、皇居を車窓に眺めつつ、列車は東京駅に着いた。


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今回買った土産物の数々。













西利の漬物は、近年すっかり気に入っている。

かつては漬物など見向きもしなかった自分が、京都の漬物に目がないようになるとは夢にも思わなかった。今回買った中では特に「長いもわさび」と「うり山椒」がお気に入りだ。

又、この時買った「ゆずの香り」に魅せられ、安物だが今も地元のスーパーで「ゆず大根」を買ってきては、絹ごし豆腐に乗っけて食べている。


この後、とうとう西利・旬の会に入り、通販でまたしても漬物を買ってしまった。

何度か買ったことのある玉ねぎの漬物は美味い。

変わり種では、大根の漬物だが、黒ごまきな粉味とカレー味というのを試してみた。

結構いけるじゃないか!

私はそう思ったが、母には不評であった。

漬物屋も結構工夫しているんだなぁ…そんなことを思わす斬新な味である。


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約4か月間に亘り、連載し続けてきた昨夏の旅日記、これを以て完結である。

ここまでお付き合い頂き、有難うございました。


次回は全く別のテーマにする予定。