新年明けましておめでとうございます。
この正月は眠りが深すぎて、初夢を見なかったので、ここのところ恒例となっている初夢話はナシ。唯一覚えているのは元日未明、寝ぼけ眼で聞いた猫の喧嘩の声だけだ。
そんなわけで旅日記の続き。
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8月7日(金)
日本橋―恵美須町/津守―西天下茶屋
岸里―西梅田/阪神梅田―福島
福島―阪神梅田/梅田―本町
本町―天王寺/恵美須町―日本橋
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朝から通天閣のお膝元へ行く。
中国人と思しき観光客ばかりだ。
やはりここはよそ者にとっては「THE 大阪」というべき場所。
ちょっと脇に逸れ、商店街を通ってみたら、さすがにまだ10時過ぎと早いので、店は軒並み閉じていて、テリーマンだけがお出迎えしてくれる。
通天閣の股の下の喫茶店。「冷コー」、「レスカ」の字が躍る。いいねぇ~。寄りたい。でも寄らない。まだ早い。
この風呂屋もいつか寄りたい。 「ラジウム温泉」。ストレートな名前がええわ。
しばらく辺りをウロウロする。ビリケンさんがよおけいてはる。
再び「冷コー」&「レスカ」の喫茶店へ。色とりどりの食品サンプルがそそられる。
前歩いてたおっちゃんがフラッと入っていったサ店。ホットケーキに引きずり込まれそうになるが、ここはガマン。
再びビリケンさん写す。
最初に行こうと思っていた「百円食堂」はどうやら休みのようなので、諦める。
炎天下を歩き回ったせいで、早くも汗だく。誘惑に負け、ジャンジャン横丁入口脇のサ店に入る。お客は他に誰もいない。喫茶タマイチといった。
雪ボタン(650円)というミルクフラッペに、ミルクセーキ(480円)をオーダーする。何だかミルクだらけだな…。
練乳がたっぷりとかかったちょっと粗挽きの氷の中にフルーツがたっぷり。なかなか汗が引かない。あっという間に完食。
出がけに若い奥さんから、「お気をつけて」と声を掛けられる。朝も早よから氷とミルクセーキをかっ喰らう汗かき男はどう思われたのだろう?
ジャンジャン横丁へ入っていく。碁や将棋をさせる所(囲碁センターでよいのか…?)を横目で見ながら振り返ると、こっちは「真実の口」のまんまパクリやん!
向かいにはもろ昭和な雰囲気の串カツ屋が軒を連ね、かと思えばこんな欧風レトロな喫茶店があったりして、不思議な通りだ。
出口手前に鍋屋があって、すっぽんがひしめきあっていた。平安神宮の裏庭の池で優雅に泳ぐ奴らと違って、こいつらは明日をも知れぬ命なんだなーと思うと、ちょっとかわいそうになってくるが、人間というものは他の命を奪って日々の糧にしているのだよ。
ガード下をくぐり抜け、大通りを渡る。
ここから動物園前一番街に入る。
ここへ入るのは少々勇気が要った。
デンジャラス・ゾーンといわれているからだ。
だが今は昼前。お天道様が煌々と照っている。
思い切って行っちゃえ!!
何だか結界を越える気分である。
途中、フェンス越に見える細道は、30年以上昔この辺を走っていた南海天王寺支線の廃線跡だろうか。
ド派手な黄色い看板の「スーパー玉出」を横目に、尚進む。
屋根越しに淡い陽光が薄ぼんやりと光るアーケード街は、思っていたよりも下町風情の普通の商店街に思えたが、人通りがまばらで、おばちゃんたちに混じって時折元気なさそうなおっちゃんや爺さんがズーコズーコと歩いている。
その内、商店街が終わり、アーケードも尽きた。右に曲がってみると、風呂屋があった。屋号は何?そう思ったが、「ふろやさんわ」とオール平仮名。頃は11時。早くも開いている様子。ならばとっとと朝風呂だ!!
広い下足場には油絵がギャラリーよろしく所狭しと飾られ、暫し見とれる。
番台を通り、中に入ってみると、意外なほどに客がいる。おっちゃんばっかりだ。みんな仕事、何してるんやろ?
浴室は近代的な作りで広々としている。
熱め、ぬるめ、水風呂、電気風呂、ジャグジーと一しきり揃っている。身体も頭も洗って、朝からかいた汗流す。
脱衣所は冷房が効いていて気持ちよい。高校野球をやっていた。
外へ出た。真昼間の陽射しが眩しい。
元来た商店街のアーケードを横目に東へ進んでみた。「飛田新地何ちゃらかんちゃら」という看板があった。そうか…ここはそういう場所か…。昼間なら通ってみても大丈夫かも…。そう思い、尚進む。
右に曲がってみた。すると何やら和風の四角い看板に筆文字の屋号がかかった家が並んでいる。これが“料亭”か。ずんずん南へ進む。
やがて家並みが途絶え、駐車場の先に、「鯛よし百番」の建物が見えた。スカパー!の番組で紹介されているのを見たことがある。この界隈で数少ない特殊サービスではない料亭だというが、予約なしでは入れないときく。
通り抜けてきた“料亭”は写真撮影はご法度だとはきいていたが、ここならどうにか平気かな…?!
それでも用心して辺りを見回し、記念に1枚。ついでにその先も1枚。これはもしかしたら、ヤバイ写真なのかも…。夜なら完全にアウトでしょうな。
元へ引き返す。昼間は“料亭”は休みなのかと思いきや、時折開いている店があり、そこだけ異様にピンクの照明が煌々と辺りを照らしている。遣り手婆に声掛けられるが、顔を向けずに素通りだ。
再開発エリアとの境目を道なりに歩くと、東西に走るアーケード街に出た。適当なところを北へ抜ける。ごちゃごちゃとした細道を進むと、再び風呂屋さんを見つけた。日之出温泉という。
銭湯を見つけると入ってみたくなる私。
ここも番台方式。脱衣所は昭和レトロな雰囲気で、休憩コーナーには確か絨毯が敷いてあったような。
浴室は結構近代的な作り。薄いグレーのカッチリしたタイル貼りで、ホテルの大浴場のような雰囲気。浴槽が並ぶ奥に、伊香保温泉の湯の花入りの茶色い湯もある。ここがぬるめで一番気持ちいい。更には露天風呂もあった。壁に囲まれた狭い湯だが、バスクリンの緑色したぬるめの湯が気持ちいい。
浴室には他に客は誰もおらず、貸切状態。まったりできた。
上がるとそれなりにおっちゃんの客がいた。
外へ出る。まだ12時にもなっていない。
暫く山王一帯を歩いて回る。その先に和光浴場があった。下調べでここへは入りたいと思っていた風呂屋だが、予定外の入湯2回で既に身体はのぼせ気味。ここはパスし、一旦大通りへ出る。
だがこれで表へ出てしまったのではつまらない。再びごちゃごちゃっとした小路へ入っていく。
アーケード街にぶつかった。趣きある“めし屋”。おばちゃんが入っていったが、ついていくのはやめにし、商店街を西へ進む。今が平成の世だということを忘れてしまいそうだ。
更に裏道に入ってみる。昼日中なので恐れ知らずになっている。
オーエス劇場という大衆演劇の芝居小屋を発見。安い!
尚、商店街を進む。やがてアーケードが尽き、露天へ出た。再び南海電車の廃線跡を横切る。フェンスがものものしい。
そのまま尚、西へ進む。
線路をくぐるやけに古そうなレンガ造りのガードに来た。
疲れた顔したおっちゃんたちがぐでーっと佇んでいる姿が目に付くようになる。
思い切って先へ行ってみた。この先があいりん地区なのだろう。
街の雰囲気が一変した。
自販機の飲み物がやけに安い。50円なんてのが平気である。簡易宿泊所が目立つようになる。広そうな道を選んで尚、西へと進む。
通りの向こう側でおっちゃんたちが酒盛りしている。
「兄ちゃ~ん、元気か~?頑張りやー」
おっちゃんから声を掛けられる。
被っていたパナマ帽を上に掲げ、 「ありがとうございまーす」と返事した。
着てきたグレーのTシャツは既に大汗でぐっしょり濡れ、それを風呂屋の脱衣所の洗面台で水洗いし、そのまま着ていると、暑熱ですぐ乾く。宿からかっぱらってきた白タオルも、ぐっしょりと濡れている。少しでも暑さをしのごうと、首にそいつをかけていた。
草臥れた紺色のダブダブしたズボンに、裸足に靴をひっかけている。名古屋の氷屋&銭湯巡りでかかとに大きな靴擦れができ、痛むので、早足で歩けない。足をひきずって歩くようになる。
もしかしたら仲間だと思われたのかもしれない。
変に気取った格好をしてこなくてよかった。
街に溶け込むことが一番だ。
そのまま南海電車の高架をくぐり、中学校の脇を北へ向かう。新今宮駅がすぐ近いはずだ。
中学の塀が尽きた先の三角州みたいな所へ出た。
この日最初の目的地がこの辺のはずなのだが…。
そう思って周辺を歩く。
「喫茶ひまわり」というスーパー玉出直営の激安喫茶店があるはずだったが、どうやら不動産屋に化けていた。
仕方ないので諦め、退散。
暫く歩くと南海電車の駅の脇に、労働福祉センターと職安があった。1階はオープンになっているが、中にはおっちゃんたちが屯したり寝そべったりしている姿が見える。目立たぬようにカメラを向けた。素人が下手なことするとヤバい。
再び脇に入り、簡易宿泊所の立ち並ぶエリアを進む。
途中で、ものすごくレトロなホルモンうどん屋を見つける。
尚、東へ進む。フェンスの向こうに線路が見えた。鬱蒼と立木で覆われている。辺りはしょんべん臭い。首タオルの虚ろな目をしたおっちゃんが時折うろーっと佇んでいる。
商店街へ出た。そこを左折。大通りへ出る。角にスーパー玉出があったので、中に入ってみたが、それほど激安には思えなかったので何も買わずに外へ出て、通りを渡る。
折角西成ど真ん中にいるのだ。三角公園をこの目で見てみたいと思った。
スマートフォンを取り出して、検索してみたが、どうもハッキリしない。時折、脇を通るおっちゃんが一瞥をくれる。
スマホ頼みは諦めた。当てずっぽうで歩いてみる。何だかすさんだ雰囲気の公園がパッと目の前に現れた。ブルーシートで覆われた掘立小屋みたいな建物が公園内の至る所に立っている。
ここが四角公園か…。
ピンときた。写真はこれが精一杯。炎天下の真昼間だったので人がいなかったから撮れた写真だ。アドベンチャーである。
三角公園は又の機会に残しておくことにした。
萩之茶屋本通商店街を西へ進む。
安酒場やめし屋が居並ぶ。
その終点の店屋でアイスを買った。
すぐ食べると言ったら、店の婆さんがアイスの袋を剥いでくれた。この一帯、夜はかなり危ないエリアだというが、昼間は生活感漂い、人情味ある大阪の下町である。
南海電車の高架脇をしばらく北上。途中、何やら怪しげなバッタものかな?と思しき機械を売る店などがある。ほどなく萩ノ茶屋駅に来た。
朽ちかけたアーチ型のコンクリートが実にいい味を出している。滅多にないことだから、ここから南海電車に乗ってもよかったが、折角の西成探訪。これで中断してしまうのは惜しい。
南海高架下にこんな甘味処を発見。「甘党ハマヤ」。「甘味処」でなく「甘党」という屋号がいい。入ってやろうじゃないか。
中は狭い。爺さん&兄ちゃんの2人連れやおばちゃん1人客やらがいる。
氷があったので、ミルク金時とミックスジュースをオーダー。それぞれ380円に310円。ジュースの割したら、氷は安い。
これで人心地がついた。昼メシ代りにもなった。
お勘定の時、ふと足元を見ると、看板インコが静かに佇んでいた。クリッとした目がかわいい。
交番脇の商店街を尚西へ進む。
暫くすると大通りへ出た。この下には地下鉄が通っているはずだ。大通りを南に折れてもよかったが、何の変哲もない車通りを歩いてもちっとも面白くない。
かぎの字に曲がればその先に別の商店街があるようなので、委細構わず西へと進むことにした。今度はアーケードに屋根のある人で賑わう商店街だ。
暫く進むと、千成温泉に行き着いた。
水色のパネルに浮かぶ金文字の屋号と、赤い温泉マークが実に印象的だ。早くも自転車で乗りつける客が引きも切らぬ様子。
広い下足場ではビリケンさんと信楽焼狸がお出迎え。
ここも番台式。下町風情な脱衣所に親しみを覚える。
浴室は一転、厳かな雰囲気さえ漂う石造りの浴槽。床も石造り。長方形のパネルの隙間に小さなタイルがびっしりと埋め込まれ、中央に深浅2槽からなる浴槽がデンと構える。
ここも浴室内には他に誰も客はおらず、どうやら自転車の主は皆女湯の客たちのようだった。
いいお湯だった。再び商店街へ出て、尚先へ進む。
途中、こんなレトロな産婦人科を発見。男の自分には縁のない場所だが、中だけでも見学させてもらいたい。
賑わう商店街も、さすがに人通りが少なくなり始めるが、適度な草臥れ加減が実に良い。ここにも囲碁将棋が指せるセンターがあった。需要があるということだろう。
商店街、尽きる先には何がある?
そんな気持ちで先に進むと、実にいい感じのレトロ洋菓子店を発見。こういう店のケーキは懐かしい味わいがあって美味いと思うが、持って帰れそうにないので諦めざるを得なかった。
アーケードが尽きた先を尚進む。辺りは地味な街並みだ。視界がパッと開けると、南海電車の駅に出た。津守という駅である。本当は高野線の一部だが、岸里玉出から南海線と一緒に難波へ向かうのがメインストリートになっているので、汐見橋へ向かうこの区間はすっかり取り残された感のある都会のローカル線である。
構内踏切を渡ってみるも、全く電車の来る気配なし。
「スタンド・バイミー」よろしくこのまま線路伝いに歩いてみたい気にさえなってくる。
電車は30分おきにしか来ず、あと20分は待たねばならない。さっきの店でケーキを買ってきてもよかったなと思った。
漸く電車が来た。冷房がキンキンに冷えている。2両編成の先頭車には他に誰も乗客がいない。
1駅先の西天下茶屋で降りた。ここも随分とレトロな佇まいだ。
踏切を渡り、狭い細道を南へ進む。
ほどなく東西に走るアーケードの商店街へぶつかった。思ったよりも小ぶりであった。
すぐに目的地が姿を現した。
コーヒーショップ マル屋である。
店先の佇まいの草臥れ加減が半端ではない。看板にぶら下がった短冊状のメニューがしわしわすぎて判読不能だが、驚くほどの安さである。
下調べの段階では、もっとディープな商店街のまん真ん中にあるのかと惧れをなしていたのだが、こうして来てみると案外明るく開放的な場所にあり、拍子抜けしてしまった。
いざ中へ。何組か先客がいる中、かなりご高齢そうなマスターが折り目正しい格好でお一人でやられているご様子。
メニューを見せてもらう。かなり年季が入っている。どれも驚くほど安い。まさかかき氷があるとは思わなかったが、幾つか種類がある。こうなると氷は外せない。
紀州しぐれ:200円
アイスコーヒー:160円
フルーツジュース:160円
あまりの激安ぶりに、思わず飲み物ダブルで頼んでしまったよ。
注文を確認した老マスターの「冷コー」という言葉に、大阪の下町を肌で感じる。
紀州しぐれは、決して大ぶりな氷ではなかったが、蜜柑メインにバナナまで入り、サッパリと涼やかな甘みが舌に心地良い。飲み物2種類も、ペットボトル並みの安さというのが驚きだ。冷コーはともかく、フルーツジュースはちゃんとジューサーの音がしていた。
外へ出た。ショーケースには食パンしかない。ざるそばやカレーうどんやホットケーキも頼めば出てくるのであろうか。レパートリーは随分多い。
折角だから、店の角を曲がった先に続く商店街を南へ進んでみた。
アーケードが尽きて炎天下へ出る。東西の割と広い道へ行き着いた。ここを右に折れ、西進する。途中、りくろーおじさんの店の店舗ではなさそうだったが、事務所かな?と思しき建物があった。何でこんな所に?とその時は思ってスルーしたが、どうやら本社はここらしい。
途中の道を北へ折れ、暫く進む。辺りは古そうな診療所に、今どき見かけないような文化住宅。ほどなく次なる目的地・福寿湯があった。
店構えは近代的だ。左斜め奥へ入ると驚くほど下足場が広い。ここも番台式。脱衣所も広々。
まだ15時半過ぎと早いからか、随分と空いている。
浴室は一転、美しい石畳の床だ。隙間には白いタイルが敷き詰められ、先ほどの千成温泉とは微妙に趣を異にする。
中央からやや右寄りにオフセットされた島状の浴槽は深浅2槽の小判状で、縁の黒光りする石が美しい。奥には岩風呂。こちらはジェット。更に薬湯も。
ここも実にいいお湯だった。
元来た道を引き返す。先ほどの文化(住宅)とは別の建物が目を引いた。今どき珍しい共同玄関のアパート。一刻館か学生寮のようではないか。
東西の道を今度は東方面へ進むことにした。所々店屋がある賑わった通りで、自転車が行き交っている。主な乗り手は女性だが、老若問わず傘ホルダーに日傘を装着して、傘をハンズフリー状態にして乗っている人ばかり。これがここでの流行りなのか。初めて見た。
アーケード街の入口を横目に尚進むと銭湯廃墟らしき建物が。後で調べてみたら、3年ほど前に廃業した建物がそのまま残っているらしい。
やがて南海電車の築堤をガードでくぐり抜けた。
くぐり抜けた先には、それまでとは打って変わり、高層マンションが聳え立ち、綺麗な広い道路が広がっていた。
どうやらここも下町と再開発エリアを隔てる結界らしい。
この日、これまで幾度“結界”を越えてきたことか。
「兄ちゃ~ん、元気か~?頑張りやー」
おっちゃんから掛けられた言葉を思い出した。
まだ夕方の4時。
さてもうひと頑張りしましょっか。
綺麗な通りを進んだ先には地下鉄の駅がある。
そこから更に別のエリアへと向かうのだ。
まだまだアドベンチャーは尽きない。
次回へ続く。































































