9月1日(月)
阪神梅田―芦屋―大阪難波―天王寺
天王寺―千林大宮―大阪
阪神梅田―武庫川 武庫川―阪神梅田
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この旅で初めての平日は、朝から雨だった。
芝居を観る予定はない。
朝はゆっくりできるようになったので、夜は銭湯梯子を敢行、少し寝坊して起き抜けに連続TV小説を見、宿の大浴場で朝風呂と洒落こむ。
遅めの朝食は、串揚げ5種類、スクランブルエッグ、焼き魚等々…普段食べる量の優に3倍は胃袋に収め、朝っぱらから不健康この上ない。
漸く9時半過ぎに宿を出た。
真っ直ぐ阪神梅田へ向かう。
今や稀少な存在となってきた赤胴車の特急が停まっていたので、これに乗りたい誘惑に駆られ、一度は最後尾の席に腰を下ろしたが、早く目的地に着きすぎるのは困るので、すぐさま降りてしまった。
2つ先のホームに丁度青銅車で、しかもレアな電機子チョッパ車の5131形の「普通」がいたので、こちらの一番後ろに乗り込み、優等列車に抜きまくられながら神戸を目指すことにする。
最初の目的地は芦屋の「アンリ・シャルパンティエ」本店。久しぶりにここの「クレープ・シュゼット」を頂きたくなった。
地元マダムたちが集うであろう休日や昼下りは、何となく気恥ずかしいから、最も空いている平日朝をいつも狙う。
先ほどのドカ食いが祟り、とてもすぐに食べ物を受け付けられそうにない。
少し時間をつぶし、腹を減らす腹である。
ジェットカーの急加減速を味わいつつ、漸く芦屋に着いたが、まだ腹がこなれてこないので、このまま先まで乗り越すことにした。
結局、三宮も元町も通り過ぎ、高速神戸まで来てしまった。
梅田方からトンネル内を臨む。
右が阪急から来る下り線、左が阪神方面への上り線。
駅構内では水平に揃っているが、出た途端に急勾配で上下に進み、トンネル1本分の高低差が稼げるようになると、両者が立体交差する。
コンコースでこんなものを見つけた。神戸高速の歴史も結構長い。
再び阪神方面への特急に乗る。
これも赤胴車だった。よほど旧色の「引き」が良いみたいだ。
芦屋で降りたのは久しぶりのことである。
見覚えのあるレトロな交番が角にある通りを目指し、狭い道を歩く。
だが店構えはご覧の通り。
一瞬、閉店か?と思ったが、どうやら改装中の様子。
朝から「クレープ・シュゼット」にありつきそびれてしまったが、食べ過ぎるなよという神様のおぼし召しだったのかもしれない。
手持無沙汰になったので、少し北に向かって歩いてみるが、雨なので足元が悪いだけで、少しも嬉しくない。
教会の脇を通り抜け、川沿いに出て、駅へ戻ることにする。
白ワンピースのセーラー服の女子高生たちの集団と一緒になる。雨で白装束が汚れないか心配になる。
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次は天王寺へと向かう。直通特急を見送って、次に来た奈良行快速急行に乗る。
中高年のおっちゃんおばちゃんグループが車両の端に集っている。傘を吊革にぶら下げている。
「そりゃないで、おっさん」そう思いながら眺めていたが、いつしか舟を漕いでいた。
大阪難波に着いた。降りたホームの目の前にビスタEXがいたので、カメラを向ける。
高校の修学旅行で、名古屋から近鉄特急に乗ったことがあるが、その前の方にリニューアル前のこの形式がつながっていたので、鉄道趣味でも何でもない友人をそそのかして、一緒に座りに行ったことがあった。ハイデッカーの2階席よりも、サロン個室風の階下席の方が、非日常感溢れて何だかわくわくする。
大阪の地下鉄の駅は、凝った意匠が多い。吹き抜けで開放感がある。ここの照明は、よく見ると傘を畳んだような形に蛍光灯が光っている。確か、十三の寿湯という銭湯にも、似たような照明があったと思う。
…すっかり鉄道ブログぽくなってしまった。
鉄分過剰。満ち足りた。
そろそろ、脱皮!
地上に出ると丁度昼時。小腹が空いた。
天王寺は全くといってよいほど土地勘がない。
阿部野橋と同じなので、あべのハルカスも目の前だ。
阪堺電車に乗るのに、地下通路から駅へ出たことがある位で、動物園さえ行ったことがあるかどうか。
阪堺電車が走る大通り沿いのアーケードを少し進むと、次なる目的地が見えてきた。
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純喫茶 スワン
大阪市阿倍野区阿倍野筋1-3-19
8:00~23:00 無休
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やはりというか何というか、(煙草を)「吸わん」と、“スワン”を掛けているのだ。
2階席へ行ってみた。煙草は吸わんが、禁煙席へは行かず、開放的な場所を求めて煙草席へ敢えて行く。
店先のサンプルを見て、かき氷を食べる気まんまんになっている。
今となっては懐かしくも珍しい、フラッペが沢山あるので、ここから選ぶことにする。
プリン好きの氷好きだから、これは「スノープリン」しかないでしょう。
いきなり甘味も何だから、ナポリタンとホットコーヒーのセットを最初に頼むことにした。
座った席のすぐ脇で、衝立越しにじゅううじゅうとコックのおっちゃんがフライパンを振っている。やがて香ばしい油とケチャップの匂いが漂ってきた。
量はそんなに多くはないが、昔ながらの喫茶店の炒めスパゲティだ。決してパスタとは呼べない。
暫く後、お待ちかねの「スノープリン」。
薄く削いだバニラアイス。型から出したばかりなのがわかる、微妙に側面がボコボコとしたプリン。匙を入れるのが勿体ない。
暗記ペンのマーカー隠しみたいな濃い緑色のゼリー、飾りナイフが入ったメロンが如何にも昭和ぽい。
ベースの氷には練乳がたっぷりと掛かり、しゅわしゅわっとした食感がフラッペの証。
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あべのハルカスは、展望台と美術館とレストランがメインのようだが、今回は先を急ぐのでパス。
今度は地下鉄谷町線に乗る。腹が膨れたので、また寝る。かなり乗って、漸く千林大宮という駅に着いた。
ここで降りるのは初めてだ。
思っていたのとは違い、立派なアーケード街の中に出た。
商店街を暫く進み、ちょっとクランク状になったところを曲がったまま直進。アーケードを出た先に、次なる目的地が姿を現した。
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角屋
大阪市旭区森小路2-8-22
13:40~22:00 火休
(と「食べログ」には書いてあるが、閉店はもう少し早いようだ)
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蒼井優さんの「今日もかき氷」という本があって、ここに載っている壁一面のメニュー札、それがどうにも気になって、かねてより訪ねてみたいと思っていたが、漸く念願が叶った。
夏場のかき氷シーズンは長蛇の列という評判だったが、雨で平日、おまけに寒く、朝から鬱陶しい雨…と思っていたのが、却って恵みの雨となったのか、誰も並んでいない。
恐る恐る厨房の通路を突っ切ると、思ったよりも広い食べるスペースが広がる。
パイプの丸椅子、簡素なテーブル。
甘味処というと、民芸調か和モダンの、洒落た渋い空間を連想するが、この店にはそんな飾りっ気は一切なし。一昔前の大衆食堂の趣である。
そして奥の壁一面に、夥しい数のメニュー札が。
まさしく甘党垂涎。何を選んだらよいのか見当もつかず、しばし見とれるばかり。
この店は、脇に置いてある紙に注文を書いて、店員さんに渡すというシステムらしい。
そういえば三宮の「うを勢」も、テーブル席だと同じ方式だった気が。
注文ミス、聞き間違い、作り間違いを避ける合理的なやり方だ。
迷った末、選んだのは「氷ミルクプリンソフト」(420円)、「ショコラフルーツカステラソフト」(420円)の2つ。
一見、何てことないミルク氷に見えようが、掘り進めていくと、中からソフトクリームがこんにちは。
続いてプリンもこんにちは。
量は十分。白いおまけが2つも入ってる。
甘党の夢を存分に叶えてくれる氷。過剰なまでのサービス精神、てんこ盛りにクラクラする。
氷を食べ進めている途中で)「ショコラフルーツカステラソフト」がやってきた。
すぐ前の席にいた2人連れの女の子が、「わー、あんなんもあるんやー」とこっちを羨望の眼差しで見ている。
「そうやでー。こんなんもあんねんでー。仰山ある中から、よぉ見て、自分好みのオンリーワン、しっかり選び出しや、美少女!」
そんなことを思っている。(最後はちょっとおまけです)
さてお味。
ブルーベリーにキウィにバナナ。ピンクグレープフルーツと、バラエティーに富むフルーツ群の甘酸っぱさ。ココアパウダーがまぶったカステラのチョコレート味の苦甘さ。中心に幹をなす、うにょにょにょーんとたっぷり絞り出されたソフトクリームの冷やっこい甘さ。
これらが混然一体となって、口腔中で混ざり合う。
やがてソフトクリームが溶け出すと、ココアにショコラにフルーツが、更にドロドロに混ざり合う。途轍もなくカオスだ。
…こうして夢のような甘党至福の時は瞬く間に過ぎた。
楽屋裏みたいな厨房脇を通されようが、店のお姉さんが忙しそうであまり愛想よくなかろうが、飾らぬ下町の甘味処、否、甘味屋さんの価格破壊の甘いもの軍団。
近場に住んでいないにもかかわらず、メニュー全制覇したいなーと、思わず胸に野心湧く。
角屋デフレ万歳!
こう書くと、デ・ジャ・ヴに襲われる方もおられましょうが、気にせんといて下さい。
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少し空いた腹は再びぎゅうぎゅうに満たされた。食後の運動がてら、折角なのでアーケード街へ再び分け入り、右に曲がって京阪電車の千林駅を目指すことにする。
まっ黄っ黄のド派手な店の中に入っていくと、「いらっしゃい。いらっしゃい。何でも安い、スーパー玉出。スーパー玉出」…そんなおっちゃんのアナウンスが延々と繰り返される。
「何や買わな損や」ついついその気にさせられる。
缶の「ひやしあめ」でも買おか、そう思って入ったが、ありまへん。
代わりに「三ツ矢サイダー」のアイスバーを見つけたが、ついさっき、しこたま冷や甘いものを食べてきたばかりで、さすがにアイスはもういらん。
安いお茶だけ買って店を出て、商店街を逆戻り。
途中、婦人服屋の店先を何気なく通り過ぎようとして、一瞬ギョッとしてしもうたよ。
やけにリアルなおばはん…いえいえ、ミドルエイジのマダムのマネキンさんでございます。
体型までがふくよかに、おまけにマスクで顔まで隠して不美人アピールでっかいな?
おまけに三角ポールに囲まれて、身動き一つできんやないですか!
しばらく見入ってしもうたよ。
天井から、千林商店街PRご当地ソングが何度も何度も聞こえてくる。
ダークダックスばりの素敵な男声合唱団。
歌詞は忘れてしまったが、「かに道楽」のCMの、
「♪とーれとーれピチピチかにりょーり…」
あんな感じを思い浮かべて下されば、当たらずとも遠からず。
ああディープな庶民派タウンの底知れぬパワーに、わいの頭はクラクラや。
「♪歩いてみてみい せ・ん・ば・や・し
角屋があるのも せ・ん・ば・や・し」
こんな商店街が家の近所にあったら、さぞかし楽しくてラクやろなー。
けど、確実にメシ作らんようになるやろけどね。
渋くも爽快な男声合唱に敬意を示しつつ、以下次回に続く。


